ラグビー 歴史的勝利から1年 あの熱気をどうつなげるか

ラグビー 歴史的勝利から1年 あの熱気をどうつなげるか
去年のラグビーワールドカップ日本大会で、日本が1次リーグの第2戦で強豪のアイルランドから歴史的な勝利をあげてから、28日で1年です。ラグビー人気はこの時、一気に高まりましたが、その状況は新型コロナウイルスによって一変しました。感染防止が最優先となる中、あの熱気をどのように今後につなげるのか模索が始まっています。
去年11月。東京都内のラグビースクールには小さな子どもたちが殺到していました。ワールドカップを受けてラグビー人気は一気に盛り上がりました。
しかし今月、同じスクールを訪ねると、そこに小さな子どもの姿はありませんでした。
100人近くいた幼児向けのクラスは、人数が多く感染防止対策が難しいとして2月を最後に行われていませんでした。現在、このスクールでは小中学生が日本ラグビー協会の指針に沿って練習を再開しています。
練習中には、こまめに消毒。コーチは飛まつが拡散しないように拡声機と、電子ホイッスルで指導。選手が荷物を置く際は2メートル間隔にするなど、さまざまな対策が必要になりました。
(世田谷区ラグビースクール 山田良和コーチ)
「試合前になると、みんなが集まって、小さくなって声を掛け合ってというところがあるんですが、そういうのができない。新たな対応が今、求められている」

影響はラグビー界全体に

新型コロナウイルスの影響は、ラグビー界全体に広がっています。日本代表の年内の活動は休止。中学生の全国大会も中止になりました。
元日本代表のキャプテン、廣瀬俊朗さんは、去年のラグビー人気を将来につなげるには、今こそ、競技に触れる機会を工夫する必要があると考えています。
(元日本代表主将 廣瀬俊朗さん)
「ラグビーに対する思いは火が完全に消えたわけじゃないなと思っていて、もう1度ラグビーに関心を持ってもらえるかとか、スポーツに関心を持ってもらえるみたいな所を作るのが大事」

ラグビーと触れる機会を

こうした中、ラグビーと触れる機会を確保するために草の根の活動も始まっています。今月、関東にある4つの強豪チームが合同で交流試合が行われました。全国大会が無くなった中学生のためにコーチたちが呼びかけて実現しました。
感染防止対策として入場できる家族は1人に限定。会場に入れなかった人のために試合はインターネットの動画投稿サイトを使って中継されました。
出場した選手たちは手作りの交流試合に、懸命なプレーで応えました。
(世田谷区ラグビースクール 高木涼平主将)
「いい緊張がある試合は、やっぱりいいなと改めて思いました」

“可能性、チャンスはある”

元日本代表の廣瀬俊朗さんは、こうした草の根の動きが広がればラグビーへの熱気を維持することにつながると期待しています。
(元日本代表主将 廣瀬俊朗さん)
「ラグビーももちろんコンタクトはありますけれども、それ以前のルールとか仕組みでずいぶん(感染を)防げることがあるんじゃないか、まだまだ可能性はある、チャンスはあるなって気がしています」

”熱気”をつなぐのは”熱意”

今回、取材した中学生の交流試合で特に印象的だったのは、試合の開催にまでこぎつけた関係者たちの”熱意”です。
チームメートといつか一緒にプレーできると信じて自宅や公園で黙々と練習を続けてきた選手たち。その姿に応えようと、コーチは試合会場を確保するため早朝から抽せんの列に並び、感染予防対策も試行錯誤しました。
保護者は送迎や食事の用意などで選手たちを支え、試合会場でグラウンドを駆け回るその姿に涙を浮かべながら声援を送りました。

こうした関係者の”熱意”に加えて、練習を再開した選手に地域の人たちからは「頑張れ」などと温かい声を掛けられることもあったといいます。

新型コロナウイルスの影響で、1年前のワールドカップの”熱気”を維持するような大々的な大会や催しは難しいのが現実です。だからこそ、今回のように規模は小さくても「スポーツをしたい」「させてあげたい」という関係者の”熱意”と周囲の理解に支えられた取り組みにこそ、スポーツを私たちの身近な場所に取り戻し、”熱気”を未来へとつなぐ可能性があると肌で感じました。

スポーツに対する草の根の”熱意‘’がどれだけ広がるのか。それは来年の東京オリンピック・パラリンピックの成否を占う試金石にもなり得ると思います。
(スポーツニュース部 記者 橋本剛)