コロナ禍の伝統芸能 演者ら「アピールしないと あすはない」

コロナ禍の伝統芸能 演者ら「アピールしないと あすはない」
新型コロナウイルスによって、公演の相次ぐ中止など、深刻な影響が出ている伝統芸能をテーマにしたシンポジウムが東京で開かれ、演者らが「もっとアピールしていかないと、あすはない」などと厳しい現状を報告しました。
このシンポジウムは、東京文化財研究所が開き、伝統芸能の演者や邦楽器の演奏家、それに裏方として公演を支える関係者が、それぞれの現場の現状を報告しました。

このうち、能の主役にあたるシテ方を務める、能楽師の観世銕之丞さんは「公演ができない期間が続き、見てくれる人がいないと舞台が成り立たないことに改めて気付かされた。ファンを増やすためにも、もっとアピールしていかないと、能楽のあすはないと感じています」と訴えました。
また、箏曲の演奏家の奥田雅楽之一さんは、動画配信などの新たな取り組みについて触れ「動画配信は収益化が難しく、芸能の安売りになる可能性を懸念している。一方、オンラインによって、時間や場所を問わずに楽器のレッスンなどができると分かったので、これからは、邦楽の海外発信に力を入れていきたい」と話していました。

研究所によりますと、新型コロナウイルスの影響で、歌舞伎や能楽などの伝統芸能の公演が中止や延期となった件数は、これまでに3000件以上に上っているということです。

東京文化財研究所の前原恵美無形文化財研究室長は「公演ができなくなったことで、伝統芸能全体が存続の危機にあると思う。これからも残していくために、今、苦しい状況にあることを声をあげて発信していくことが必要だと思います」と話していました。