医師法違反の罪問われたタトゥー彫り師 無罪確定へ

医師法違反の罪問われたタトゥー彫り師 無罪確定へ
入れ墨のタトゥーの彫り師をしている男性が医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判で、最高裁判所は検察の上告を退ける決定をし、無罪が確定することになりました。タトゥーを入れるのに医師の免許は必要ないとする判決が確定します。
無罪が確定するのは、大阪 吹田市の彫り師の増田太輝さん(32)です。

平成27年までに4回、医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われました。

1審の大阪地方裁判所はタトゥーを入れる行為が医療行為に当たると判断して罰金の有罪判決とした一方、2審の大阪高等裁判所は医療行為ではないとして1審を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。

検察が上告していたのに対し、最高裁判所第2小法廷の草野耕一裁判長は、17日までに退ける決定をし、無罪が確定することになりました。

決定では「タトゥーを入れる行為は、美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められ、医療行為とは考えられてこなかった。医学とは質の異なる美術に関する知識や技能が必要な行為で、長年にわたって彫り師が行ってきた実情があり、医師が独占して行う事態は想定できない」と指摘し、医療行為にはあたらないという判断を示しました。

これにより、タトゥーの彫り師に医師の免許は必要ないとする司法の判断が確定することになります。

裁判長が「補足意見」

今回の決定では、タトゥーを入れる行為が医療行為に当たるか判断する前提として、「行為の方法や作用だけでなく、目的や状況、実情、それに社会における受け止めを考慮し、社会通念に照らして判断すべきだ」という考え方を示しています。

さらに、草野耕一裁判長が補足意見を述べ、この考え方に沿って、詳しく解説しています。

草野裁判長は、タトゥーの施術をめぐる実情について「医師免許を取得する過程では、タトゥーの施術に必要な知識や技能の習得は予定されておらず、タトゥーの施術を職業にしようという医師が近い将来、出てくるとも考えにくい。タトゥーの施術が医療行為だと解釈した場合、日本でタトゥーの施術を職業にする人が消失する可能性が高い」と指摘しています。

また、タトゥーの文化について、「タトゥーは古来から日本の習俗として行われてきた。一部の反社会的勢力がみずからの存在を誇示する手段として利用してきたことも事実だ。しかし、最近では海外のスポーツ選手などの中にタトゥーを好む人もいて、それに影響を受けてタトゥーを入れる人も少なくない。公共の場でタトゥーを露出していいかどうかは議論を深める余地はあるが、タトゥーを入れたいという需要は否定すべきでない」と述べています。

そのうえで「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」と述べ、既存の医師法で規制すべきではないという考えを示しました。

厚労省見解と異なる判断

今回、最高裁が示した「タトゥーを入れるのに医師の免許は必要ない」とする判断は、医師法を所管する厚生労働省がこれまで示してきた見解とは異なります。

厚生労働省は、平成13年に各都道府県に出した通達で、医師免許がないと医師法違反となる行為の1つに入れ墨を挙げています。

そのうえで、行政の指導にも従わず、悪質だと判断した場合は、刑事告発を念頭に警察と連携を図るよう自治体にも周知していました。

また、裁判での検察の主張によりますと、タトゥーを入れた被告が医師法違反に問われ、有罪とされたケースが大阪や神戸などの簡易裁判所で複数あったということです。

今回の最高裁判所の判断は、これまでの厚生労働省や捜査機関の見解とは異なる判断となり、影響が出そうです。

また、最高裁の決定で、草野耕一裁判長は補足意見の中で「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」と述べ、医師法で規制せずに、必要に応じて立法措置を図るべきだとしています。