「内水氾濫」発生いち早く捉え安全な避難へ 実証実験始まる

「内水氾濫」発生いち早く捉え安全な避難へ 実証実験始まる
住宅街の複数の場所に観測機器を設置して用水路などがあふれる、「内水氾濫」の発生をいち早く捉え、安全な避難につなげようという実証実験が、今月から群馬県の2つの町で始まりました。
この実証実験は群馬県内に拠点を置く電子部品メーカー「太陽誘電」が、群馬大学や去年の台風19号で浸水の被害が起きた、大泉町と千代田町の2つの町とともに今月から始めました。

「内水氾濫」の発生を捉えるため住宅街にある用水路の脇など、2つの町の合わせて6か所に、水位を測定する「水位計」と道路の冠水を察知する「冠水センサー」、それに「監視カメラ」の3つの機器を新たに設置しています。

これらの機器で捉えた雨が降った際の水位の変化や、道路が冠水するタイミングなどのデータを分析し、避難や通行止めの判断に役立てることにしています。

今回の機器は、多くの場所に設置できるように小型化したうえで、機器の代金と設置にかかるコストも、従来の3分の1以下におさえたということで、会社では来年3月まで実験を行って、将来的には水位などのデータをインターネットで公開する予定です。

会社によりますと、内水氾濫の発生を察知するために、複数の場所に3つの機器を設置して監視する実験は全国で初めてです。

太陽誘電・新事業推進室の高木亨統括室長は「地域を『面』で監視することで、どの道路が通れないかなどがわかり、具体的な避難方法を検討できる。効果が確認されればデータを公開するので、いち早く、より安全に避難してほしい」と話しています。

大泉町の浸水被害は

「内水氾濫」は短時間に降った大雨を用水路や下水道で排水できず、地表に水があふれる都市型の水害です。

大雨の増加によって各地で頻発するようになっていて、ことし7月の九州の豪雨災害でも起きています。

去年10月の台風19号では関東の各地で発生し、このうち群馬県大泉町では住宅116棟が浸水し、このうち54棟が利根川近くにある寄木戸地区でした。

利根川の支流があふれて、海抜が低いこの地区に水が集まりましたが、用水路で排水できなくなり内水氾濫が起きたとみられています。

地区にある高齢者のグループホーム「マゼンタ」でも、去年10月12日の午後11時すぎに建物の中に水が入りこみ、翌朝の午前6時ごろには1メートルほど浸水しました。

施設には2階がなく、入居者およそ30人は万が一のことを考えて、12日の夕方に町内の別の施設に避難させていたため無事でしたが、入居者の服や写真などは水没しました。

須貝仁志ホーム長は「ハザードマップなどで浸水の危険性は指摘されていたが、あそこまで水が来るとは考えてもいなかった。台風のときに水位を確認しに行くのは怖いので、ネット上で確認できれば危険がなくスムーズに避難できると思う」と話していました。

大泉町が実験に参加決めた動機

大泉町がこの実験に参加したのは、台風19号のとき、内水氾濫の発生をリアルタイムで把握することが難しかったためです。

当時、町の用水路に水位計などは設置されておらず、町の職員が定期的に地区に出向いて、目視で確認を続けていました。

しかし、複数の場所を回っていた町の職員は、内水氾濫の発生を確認できず、発生を把握したのは、消防や住民からの通報がきっかけでした。

通報を受けて町は、防災メールで「寄木戸南地区に冠水が発生しています」と注意を促す情報を出しましたが、実際は、この数時間前には冠水が起きていたとみられています。

町は注意を促す情報を出す前に、町を流れる利根川の氾濫のおそれがあるとして、すでに避難指示を出していましたが、用水路があふれる内水氾濫の発生をいち早く捉える必要性も感じ、実験への参加を決めたということです。