NFL開幕 選手が人種差別撤廃への連帯を示す

NFL開幕 選手が人種差別撤廃への連帯を示す
NFL=アメリカプロフットボールリーグが10日、開幕しました。アメリカで人種差別への抗議活動が広がる中、試合前には両チームの選手が腕を組んで差別撤廃への連帯を示すなど、国内で最も人気の高いプロスポーツも差別を認めない姿勢を強く打ち出しました。
NFLは10日、アメリカ中西部のミズーリ州で、昨シーズンのスーパーボウルを制した地元チーフスとテキサンズの開幕戦が行われました。

アメリカではことし5月、黒人の男性が白人の警察官に首を押さえられて死亡したことなどをきっかけに人種差別への抗議活動が広がっていて、フィールドにはこの日、「人種差別を終わらせよう」とか「みんなでやらなければ」といったスローガンが書かれました。

試合前には、「黒人の国歌」として知られる歌が演奏され、続く国歌斉唱では片ひざをついて抗議する選手もいました。

さらに、両チームの選手たちが腕を組み1列に並んで差別撤廃への連帯を示し、選手たちのヘルメットには「黒人の命も大切だ」などというメッセージが入れられました。

また、この日は新型コロナウイルスの感染対策として、スタジアムの収容人員の2割余りに当たるおよそ1万7000人が入場しましたが、観客はチーフスがモチーフとしている先住民を連想させる装飾品の着用や顔のペイントが禁止され、リーグ全体として人種差別を認めない姿勢を強く打ち出しました。

試合は34対20でチーフスが勝ちました。

人種差別 抗議をめぐる動き

NFLでは近年、人種差別に対する選手たちの抗議活動が広く行われ、その是非をめぐってアメリカ全体で議論となってきました。

きっかけは2016年、フォーティーナイナーズのスター選手だったコリン・キャパニック選手が、当時、警察官による黒人への暴行事件が相次いでいたことを受け、アメリカ国歌で歌われる「自由の国」には程遠いとして、試合前の国歌斉唱で起立せずにひざをついたことでした。

その後、多くの選手が賛同し、同じように国歌斉唱の際にひざをつく抗議活動を行いましたが、これに対してトランプ大統領が「国に対する侮辱行為だ」と非難するなど、国を二分する議論となりました。

こうした中、NFLは2018年、国歌斉唱の際に起立したくない選手はロッカールームにとどまれるとした一方、グラウンドにいて起立しなかった場合はチームに罰金を科すとした方針を示しましたが、選手たちは反発していました。

そして、ことし、黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに抗議の声が再び高まり、NFLは6月にこれまでの立場を一変させ、「選手たちの声に耳を傾けなかったのは過ちだった」として今後は選手たちの抗議活動を認める考えを示しました。

また、7月にはチーム名が先住民の肌の色を差別的に表現しているとして批判を受けていた「レッドスキンズ」が名前を変えることを決め、今シーズンは「ワシントン・フットボールチーム」とするなど、リーグ全体として差別撤廃に向けた動きが加速しています。

新型コロナ対策でも新ルール

NFLは今シーズン、新型コロナウイルスの感染対策でも新たなルールを設けました。

1つは、選手が出場を辞退できる「オプトアウト」という権利で、選手はプレーしない代わりに来シーズンの年俸から日本円でおよそ1600万円を前払いで受け取れます。

ぜんそくなどの疾患があり、健康上、リスクがある選手はプレーしなくても最低保障年俸に加え、およそ3700万円を受け取れる仕組みで、これまでに67人が権利の行使を表明しました。

また、選手たちが試合後に行ってきたユニフォームの交換は、フィールド上では禁止され、代わりに洗濯されたあと郵送で届けられることになりました。

一方、アメリカのほかのプロスポーツが無観客で行われている中、NFLは各地の保健当局などが認めた場合、感染対策を徹底したうえで観客を制限して入れることにしていますが、専門家からは「集団感染につながるおそれがある」などと懸念する声も上がっています。

ただ今シーズン、すべての試合を無観客で行った場合、損失はリーグ全体でおよそ6000億円に上るという試算もあり、4大プロスポーツで最も高い人気を誇るNFLにとって今後、感染対策と興行をいかに両立させるかが大きな課題となります。