「家賃払えない」給付金申請が90倍に 新型コロナ影響

「家賃払えない」給付金申請が90倍に 新型コロナ影響
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新型コロナウイルスの影響が長期化し、家賃の支払いに苦しむ人が急増しています。NHKが全国36の自治体にアンケート調査したところ、仕事を失った人などに家賃を支給する「住居確保給付金」の申請件数がことし7月までの4か月間で5万件近くとなり、前の年の同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分かりました。
「住居確保給付金」は、仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度です。

NHKは、感染者数が多い上位10の都道府県のうち、人口の多い東京23区や政令指定都市など合わせて36の区や市にアンケート調査を行い、「住居確保給付金」の申請件数を独自に集計しました。

その結果、ことし4月から7月までの給付金の申請件数は合わせて4万9266件で、前の年の同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分かりました。

支給期間は原則3か月間で、それまでに収入が回復していない場合は最長9か月まで支給期間を延長することができますが、最初の3か月では生活を立て直せず、8月分から支給期間を延長した人が全体の56%に上っていることも分かりました。

生活困窮者の支援にあたっている立教大学の稲葉剛客員教授は、「経済危機の長期化で家賃の支払いに困っている人が増えているが、9か月の給付金の支給期間が年末年始で切れ、路頭に迷う人が大量に出てしまうことも懸念される。感染収束の見通しが立たない中、国は支給期間を延長するなど、制度の見直しを検討するべきだ」と話しています。

窓口に申請殺到

「住居確保給付金」の申請を受け付ける都内の区役所の窓口には収入が途絶え家賃の支払いに苦しむ人たちが殺到しています。

このうちホテルで働く50代の男性は、外国人観光客が激減して勤務のシフトに入ることができなくなり、感染拡大の前には月に20万円近くあった収入が7月と8月はゼロになりました。

貯蓄を取り崩しながら生活していますが、ホテル側の経営悪化で、休業手当は支払われておらず、収入が回復する見通しも立っていないということです。

このため男性は6月から給付金を受けていますがさらに3か月、支給を延長してもらうために申請に訪れていました。

男性は「給付金の支給期間は最長でも9か月ですが、それまでに収入が回復するのか、不安しかありません。感染が拡大した4月ごろより今のほうが経済状況は悪化していて貯蓄ももうすぐ底をついてしまいます。受給期間をもう少し長くしてほしいです」と話していました。

飲食店で働く40代の女性は、4月と5月はゼロだった収入が6月に10万円程度まで一時、回復しましたが、7月に入り感染が再拡大したことでシフトにほとんど入れなくなりました。

このため7月の収入は再び6万円ほどに落ち込み、給付金の延長を申請したということです。

女性は「5月に給付金を申請したときは、『3か月たてば収入が安定して前の生活に戻れるかな』と考えていましたが、このままでは貯蓄もなくなり本当に生活が厳しいです。給付金が受け取れなくなくなれば家賃が払えなくなるのでどうすればいいのか焦っています」と話していました。

働き盛り世代に影響大

今回のアンケートでは、ことし7月までの4か月間に住居確保給付金の支給が決まった人の年代や世帯数、申請の理由についても調査しました。

年代の内訳を見ますと
▽30代が27%と最も多く、
▽30代未満と40代がそれぞれ23%、
▽50代が17%、
▽60代が8%、
▽70代が2%となっていて、
働き盛りの世代を中心に幅広い年代の人たちが家賃の支払いに苦しんでいる実態がうかがえます。

また、世帯数の内訳をみますと、
▽単身世帯が68%と大半を占めていますが、
▽2人世帯と3人以上の世帯もそれぞれ16%に上っていて、
ファミリー層にも影響が広がっていることが分かります。

厚生労働省は、ことし4月20日から、「離職や廃業で仕事を失った人」だけでなく、「休業などで収入が減少した人」も支給の対象にしていますが、申請理由の内訳は休業などによる減収が74%離職や廃業が26%でした。