新型コロナ治療薬 回復した人の抗体もとに開発へ 福島県立医大

新型コロナ治療薬 回復した人の抗体もとに開発へ 福島県立医大
新型コロナウイルスから回復した人が持つ「抗体」をもとにした薬を開発する計画について、福島県立医科大学が記者会見し、薬に適した抗体を得るため、感染を経験した人に対して血液の提供を呼びかけました。
新型コロナウイルスの治療薬は、現在、ほかの病気の治療薬で効果が確認されたものなどが使われていますが、回復した人の血液中にあるウイルスの増殖を抑える働きのある「中和抗体」と呼ばれるたんぱく質をもとに薬を作れば、効果が高いのではないかと期待されています。

福島県立医科大学の高木基樹教授らの研究グループは7日記者会見し、「中和抗体」をもとに薬を開発する計画などについて説明しました。

研究グループは微量の血液などのサンプルから多くの抗体を一度に検出できる「免疫モニターチップ」という技術を開発していて、これまでにおよそ40人から血液の提供を受けて分析しているとしています。

今後、100人分の血液を分析して薬に適した中和抗体を得ることを目標にしているということで、回復した人たちに対し協力を呼びかけました。

研究グループでは、中和抗体が得られれば、複製して大量生産することを目指していて、ワクチンが効かない人にも効果が期待できるとしています。

高木教授は「ワクチンや既存の薬ですべての感染者を治療することは難しいので、新しい治療方法として抗体医薬品を提供していきたい」と話していました。

新型コロナの治療薬開発の現状は

新型コロナウイルスの患者の治療に現在使われている薬は、もともと別の病気の治療用に開発された既存の薬で、新型コロナウイルスにも効果があるか調べる「ドラッグ・リポジショニング」と呼ばれる研究の結果、使われるようになりました。

例えば、「レムデシビル」はエボラ出血熱の治療薬として開発されてきた薬、また「デキサメタゾン」は重度の肺炎の治療に使われるステロイド剤ですが、欧米での臨床試験の結果、新型コロナウイルス患者にも効果を示すことがわかりました。

既存の薬は、どのような副作用が出るかなど、安全性や使用上の注意点がある程度わかっているため、最初から治療薬を開発するより、使えるようになるまでの時間が短縮できるのが大きな利点です。

一方で、最初から新型コロナウイルスを狙って増殖を抑える薬の開発も各国で進められています。

薬の開発の手法は複数あり、1つは薬の候補となる化合物のリストの中から、新型コロナウイルスへの効果が見込まれるものを選び、安全性や有効性を確認する方法です。

塩野義製薬と北海道大学のグループは、薬の候補となる化合物をこれまでに複数選定し、細胞を使った実験などを進めていて、来年3月までに実際に人に投与する臨床試験を目指すとしています。

また鹿児島大学のグループは、製薬ベンチャー企業とともに、C型肝炎の治療薬開発のために集められたおよそ2000種類の化合物の中から薬の候補となる物質を選び、動物実験などを通じて安全性や有効性を確かめるプロジェクトを進めています。

一方で、注目が高まっているのが「抗体医薬」で、新型コロナウイルスの働きを抑えるたんぱく質、「中和抗体」を特定して人工的に作り、治療薬として投与しようとしています。

抗体がウイルスだけを狙い撃ちにするため、効果が高いのではないかと期待されていて、国内では、7日研究発表が行われた福島県立医科大学のほか、東京大学医科学研究所や京都大学などの研究グループが中和抗体を使った治療薬の開発を目指して、細胞での実験など研究を進めています。

一方、アメリカでは、すでに複数の会社が人に投与する臨床試験を進めています。

このうち大手製薬会社「イーライリリー」は、新型コロナウイルスに感染して回復した患者から抽出した抗体をもとに作った抗体医薬の候補を、カナダの製薬会社と共同で開発していて、先月からは感染すると重症化のリスクのある高齢者施設の入所者などを対象に、最終段階の試験を始めています。

抗体医薬とは

抗体医薬は、体の中で作られ異物を排除するたんぱく質、「抗体」を人工的に作って投与することで、ウイルスやがん細胞など、病気の原因となる物質を攻撃して治療する薬です。

抗体が、特定のウイルスやがん細胞などに現れている目印に結合することでその増殖を防ぐ仕組みで、1990年代以降、さまざまな種類のがんのほか、リウマチなど免疫が関わる病気の治療薬が開発され、日本国内でも数十種類が承認されています。

新型コロナウイルスの治療を目指した抗体医薬の開発研究も進められ、アメリカなどでは実際に人に投与して安全性や有効性を検証する臨床試験が始まっています。

抗体医薬は、ウイルスなどを狙い撃ちにするため、副作用が少なく、高い効果が期待できるとされるほか、ウイルスの増殖を抑えることがわかっている抗体をもとに開発するため、実用化までにかかる期間も従来の新薬開発より短縮できるとされています。

その一方で、人工的に抗体を作るのに多くのコストがかかり、治療薬の価格が高くなる傾向があるほか、抗体が細胞にウイルスが感染する際のかけ橋となってしまい、かえって症状を悪化させてしまう現象が起きるおそれも指摘されています。

専門家「安全性検証 時間かけて入念に」

新型コロナウイルスの抗体医薬について、感染症の治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、「新型コロナウイルスの治療薬開発の中で、抗体医薬は、従来の薬よりも開発に時間がかからず、すでに別の感染症にも抗体医薬が開発されて使われていることもあり、アメリカや中国など各国で主流になってきている。ただ、別の感染症では、抗体によってかえって症状が悪化したケースもあったと指摘されていて、安全性を検証するための臨床試験などのプロセスはほかの薬と同様、一定程度時間をかけて入念に行われるべきだ」と話しています。