雇用調整助成金の特例措置 12月末まで延長決定 厚生労働省

雇用調整助成金の特例措置 12月末まで延長決定 厚生労働省
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた雇用調整助成金の上限額の引き上げなどの特例措置について、厚生労働省は来月末となっている期限を12月末まで延長することを決めました。
「雇用調整助成金」は、売り上げが減少しても企業が従業員を休業させるなどして雇用を維持した場合に、国が休業手当などの一部を助成する制度です。

厚生労働省はことし2月以降、新型コロナウイルスの影響を受けた企業を対象に、支給要件の緩和や、1日当たりの上限額を1万5000円に引き上げるなど、特例措置を行っています。

この特例措置の期限は来月末までとなっていますが、厚生労働省は12月末まで延長すること決めました。

そのうえで、来年1月以降は、失業者が急増するなど雇用情勢が大きく悪化しないかぎり、特例措置を段階的に縮小していきたいとしています。

また、新型コロナウイルスの影響で休業したにもかかわらず、休業手当が支払われていない人を支援する「休業支援金」の制度についても、12月末まで延長することにしています。

全国77万件 9900億円余を支給

特例措置では、1人1日当たり8330円の助成金の上限額を1万5000円に、従業員に支払った休業手当などの助成率は大企業は75%に、中小企業は100%に引き上げています。

厚生労働省によりますと、雇用調整助成金の申請はことし2月から今月21日までに合わせて88万4863件あり、このうち、支給が決定したのは77万7633件、金額にして9941億円余りに上っています。

今回のような特例措置はありませんでしたが、リーマンショック後の平成21年度からの2年間に支給されたのは合わせて9785億円で、およそ6か月間でそれを上回ったことになります。

厚生労働省は、業績が悪化した企業などに対して助成金を活用して雇用を維持するよう呼びかけるとともに、特例措置については「雇用情勢が大きく悪化しないかぎりは、来年1月以降、特例措置は段階的に縮小していきたい」としています。

雇用確保 必要な財源確保が課題

厚生労働省によりますと、雇用調整助成金の主な財源は、企業が負担する雇用保険の保険料で、「雇用安定資金」として労働保険の特別会計で運用されています。

政府は「雇用安定資金」と雇用保険の失業給付の財源となる積立金などから今年度、補正予算を組んで1兆5663億円を確保しています。

このため、「雇用安定資金」は平成30年度末には1兆4400億円ありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大などで助成金の利用が大幅に増えたため急激に減少していて、今年度末には1256億円になると見込まれています。

また積立金は、今年度末には2兆6440億円となる見込みで、当面は、特例によってこの積立金から「雇用安定資金」に借り入れることができるほか、一般会計から繰り入れる方法もあるということです。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響が続くとみられる中、どのようにして必要な財源を確保し雇用を守るための制度を維持していくのかが今後の課題となっています。

中小企業からは特例措置継続を求める声が

雇用調整助成金を利用する中小企業からは、特例措置の継続を求める声が出ていました。

東京・新宿区にある従業員13人の旅行会社では、新型コロナウイルスの感染拡大で、ことし3月以降、売り上げのおよそ70%を占めていた海外旅行がほとんどキャンセルとなりました。

また、国内旅行も学校の修学旅行など団体旅行の中止や延期が相次いでいるほか、東京から旅行については、現地のホテルなどから受け入れを断られるケースもあります。

このため、東京都内の日帰りツアーや旅行の魅力を学ぶオンライン学習会など、新たな商品を企画していますが、それでも会社の売り上げは去年と比べて9割以上減少する見込みです。

全国に緊急事態宣言が出されていたことし5月は、会社の営業をやめていましたが、解除されたあとの6月以降は従業員の出社は週1日で、残りの4日は休業を余儀なくされています。

会社では雇用調整助成金を活用して、週4日休んだ分は平均賃金の6割を休業手当として払っていて、今は特例措置でその全額が助成されています。

海外旅行がいつ再開できるのか見通しが立たない中で、雇用調整助成金の特例措置が無くなると、状況はさらに厳しくなると懸念しています。

「富士国際旅行社」の柳下早苗総務部長は「もし雇用調整助成金の特例措置がなかったら、事業縮小や雇用継続できるかという判断を迫られていたと思うので、延長されることで雇用維持のめどが立ちます。お客様から『大丈夫か』というお声掛けをたくさんいただいていて、うちの商品へのニーズがあることを改めて感じているので、どんな形でも会社を残す努力をすることで、雇用も守っていきたい」と話していました。