戦後75年 “慰霊の場”の維持管理が限界に「担い手がいない」

戦後75年 “慰霊の場”の維持管理が限界に「担い手がいない」
15日で終戦から75年を迎えますが、戦没者を弔うために建てられた慰霊碑など「慰霊の場」の維持管理について、NHKが全国の都道府県の遺族会に取材したところ、全体の66%の遺族会が「次の世代の担い手がいない」と回答し、遺族を中心とした維持管理が限界に近づいている現状が浮き彫りになりました。
NHKが先月から今月上旬にかけて全国47の都道府県の遺族会に取材したところ、戦没者を弔うために遺族や地域の人などが建てた慰霊碑など「慰霊の場」の今後の維持管理について、「課題がある」と回答したのは44の道府県に上りました。

課題の内容について複数回答でたずねたところ、
▽「遺族会の高齢化などで次の世代の担い手がいない」と回答したのは全体の66%にあたる31道府県、
▽「戦没者の孫やひ孫にあたる世代は遺族会にいるものの仕事などで活動できていないため託すことは難しい」との回答は29の府県に上りました。

このうち、北海道では179の市町村ごとにあった遺族会のうち、およそ20の会が解散し、慰霊碑の管理ができず放置されているケースもあるということです。

このほか、大分県や鹿児島県などは遺族の減少に伴って老朽化した慰霊碑の修繕費を賄うのが難しいと答えるなど、各地の遺族会が遺族を中心とした維持・管理の限界を指摘しています。

また、こうした課題の解決に向けた動きについてたずねたところ、24道県の遺族会が
「地元の市町村など行政に託すことを考えている」
「すでに行政に要請している」と回答し、
慰霊の場の維持・管理をめぐって各地で行政との協議などが進んでいることが分かりました。

撤去や移設 全国各地で相次ぐ

全国各地で遺族や地域の人たちなどが維持管理できなくなった慰霊碑などの撤去や移設が相次いでいます。

石川県小松市でも、3年前に慰霊碑が撤去されました。市営墓地の一角に立っていた慰霊碑は、日清戦争以降の戦没者を弔うために遺族など地域の人たちが建てたものでしたが、老朽化で傾き、倒壊のおそれがあるとして市が地元の人と協議のうえで撤去したのです。

墓参りで墓地を訪れた地元の人たちは「昔からその辺にずっとあると思っていたが、慰霊碑がなくなったのには気が付かなかった」とか、「おそらく誰も守る人がいなくなって無縁仏みたいになってきたんだと思います」と話していました。

厚生労働省によりますと、管理者が高齢化し管理できなくなった慰霊碑などを移設、撤去する際には国が自治体に対して50万円を上限に補助を行う制度が設けられていて、平成28年度以降、去年までの4年間に、この制度を利用して全国各地で撤去や移設された慰霊碑や慰霊塔などは8か所あるということです。

存続か撤去か 葛藤する遺族たち

高齢化で「慰霊の場」を守る担い手が減りゆく中、各地の遺族たちが葛藤しています。

福井市にある「福井忠霊場」は、戦死した1500人余りの兵士を弔うため戦時中に設けられた墓園で、地元の遺族たちが管理してきました。当初は夫を亡くした戦没者の妻が中心でしたが、今は子どもの世代でも70代後半や80代を迎えています。

遺族会の副会長を務める熊谷嘉代子さん(78)も戦没者の子の世代の1人で、父の嘉之雄さんは海軍兵として南方に出征し、33歳で命を落としました。忠霊場には母と一緒に中学生のころから何度も通ってきましたが、最近はひざを悪くするなど、通うのが難しくなってきました。

福井忠霊場を今後どうしていくのか、遺族会ではことし本格的な話し合いを始め、6月に行われた遺族5人での話し合いでは、存続か撤去か、踏み込んだ議論になりました。

遺族からは、「忠霊場の拝殿や位はい堂、鐘楼の管理は難しく、最終的には壊すしかない」といった意見が出たほか、「その際の費用はどう賄うのか」など具体的な課題について協議しましたが結論は出ず、一方で、思いが詰まった「慰霊の場」が失われることへの苦渋の声も挙がりました。

話し合いのあと、遺族会副会長の熊谷さんは「出征したときはみんな家族を犠牲にして行ったのに、今はあれはできない、これはできない、という話になってくると、本当に心がつらいです」と話していました。

会では話し合いを重ね、遺族会を近く解散したうえで、維持や管理を行政に託すことで、「慰霊の場」の維持を図ることを決断しました。その後、委託について福井市と協議を重ねていますが、結論はまだ出ていません。

福井忠霊場の遺族の1人、岩崎一晃さん(79)は「国のために亡くなっていった人のお墓だから守っていかないといけないが、われわれはもう守り切れない。ここに戦争で亡くなった人のお墓があるんだということだけでも知ってほしい。そのための場所にしたい」と話しています。

日本遺族会「国や自治体が中心になり管理を」

日本遺族会は、平成29年度から毎年、慰霊碑の維持や管理などを自治体など行政が行うよう国に要請しています。

日本遺族会は「慰霊碑の管理についてはこれまで遺族会が担ってきたが、高齢化する遺族がこれまでどおり維持することは難しいため、戦争の悲惨さ、平和の尊さを後世へ伝えるためにも今後は国や自治体が中心となって管理してもらいたい」とコメントしています。