戦争資料館 入館者90%以上減 戦争体験の継承に懸念の声

戦争資料館 入館者90%以上減 戦争体験の継承に懸念の声
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終戦から75年のことし、戦争の記憶を伝える各地の主な資料館などでは、新型コロナウイルスの影響で、団体予約のキャンセルや延期が4月以降、少なくとも合わせて700件以上に上り、多くの施設で、入館者が去年と比べて90%以上減ったことが、NHKの調査で分かりました。施設からは、戦争体験を継承する機会が失われることなどを懸念する声があがっています。

休館 団体予約のキャンセルや延期 740件に

戦争に関する展示を行う資料館などの入館状況に新型コロナウイルスがどのような影響を及ぼしているか調べるため、NHKは先月から今月にかけて、入館者の多い全国の主な10の施設を対象に、アンケート調査を行いました。
その結果、施設の休館や、来館の見合わせなどのために、団体予約のキャンセルや延期は、緊急事態宣言が出された4月から先月末までに740件に上りました。
また、この期間の入館者は、データのある9つの施設で、いずれも去年の同じ時期と比べて90%以上減り、このうち広島の原爆資料館と国立広島原爆死没者追悼平和祈念館、それに長崎原爆資料館は、95%余りの減少となりました。
それぞれの施設からは、入館料などの収入が減ることによる運営面での影響に加えて、学校の課外学習などを通じて戦争体験を継承する機会が失われることを懸念する声があがっています。

さまざまな方法で伝える取り組みも

それぞれの施設は、入館者が大幅に減る厳しい状況の中で、感染防止の対策をとりながら、さまざまな方法で戦争の記憶を伝えています。

このうち、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館では、感染防止のため中止していた、ボランティアによる被爆体験記の朗読を、広い部屋にアクリル板を設けて、13日から再開しました。

また、東京大空襲・戦災資料センターでは、空襲体験者の語り部の活動や、リニューアルした展示の内容をインターネットで配信する取り組みを始めるなど、オンラインでの発信を導入するところも出てきています。

沖縄にある、ひめゆり平和祈念資料館でも、オンラインによる講話を検討しているとしていますが、「入館者に直接伝えることを大事にしてきただけに、感染防止のために、それができなくなっているのは非常に残念だ」としています。

また、東京・千代田区にあるしょうけい館は「戦傷病者の個人の情報を扱うため、オンライン発信には制約も多い」と課題を指摘しています。

一方、入館者の減少に伴う運営面への影響を懸念する声もあり、このうち、ひめゆり平和祈念資料館は「公的資金に頼らず入館料収入で運営しているため、大きな痛手となっている」としています。