東京都 新型コロナの感染状況 最も深刻な表現を維持

東京都 新型コロナの感染状況 最も深刻な表現を維持
東京都は新型コロナウイルスの感染状況などを分析する会議を開き、「感染状況」は4段階あるレベルのうち、最も深刻な表現を維持しました。一方、「医療提供体制」も上から2番目の表現を維持しましたが、専門家は「入院患者の増加に伴い、医療機関への負担が強まっている」と指摘し、宿泊療養施設の積極的な活用を求める意見が出されました。
東京都は13日午後、都内の感染状況と医療提供体制を分析・評価する「モニタリング会議」を開きました。

このうち「感染状況」については、新たな感染の確認が3日間で1000人を超えるペースで推移し、前の週と比べてほぼ横ばいで、感染経路が分からない人は12日までの1週間の平均で201人で、依然として高い水準だと報告されました。

専門家は「都の全域、すべての世代に感染が広がっている」などと指摘して、「感染が拡大していると思われる」と評価し、4段階あるレベルのうち、最も深刻な表現を5週連続で維持しました。

また、「医療提供体制」について、専門家は「入院患者の増加に伴い、医療機関への負担が強まっている」と指摘し、無症状や軽症の人たちを対象に、宿泊療養施設の積極的な活用を求める意見が出されました。

そして、「通常の医療を維持できるよう配慮しながら、さらに病床確保を進める必要がある」などとして、「体制強化が必要であると思われる」と評価し、6週連続で4段階あるレベルのうち、上から2番目の表現としました。

小池知事「状況は依然として厳しい」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は「状況は依然として厳しい。感染拡大特別警報の状況だと認識している。いま夏休みの真っ最中だが、都民には引き続き、旅行、帰省などを控えていただきたい」と述べました。

そのうえで、高齢者は施設内感染が多いものの友人とのカラオケや旅行で感染するケースがあるため外出の際には3密を避けてマスク着用や手洗い、消毒の徹底を呼びかけました。

また、40代、50代の中高年層については家庭内での感染が多く報告されているため職場や会食での感染に注意して帰宅後はすぐに手を洗うなどの対策を求めました。

さらに、若年層にはバーベキューや旅行など夏休みならではの感染事例が多く報告されているとして、開放的になりやすい夏休みは大声での会話や長時間の飲酒につながりやすいので気をつけてほしいと呼びかけました。

感染状況

都内の感染状況を分析した専門家は、感染経路が多岐にわたっていて、特に症状のない人が無意識のうちに、感染を広げている可能性があると指摘しています。

都内での新たな感染の確認は、今月10日までの1週間で人口10万人当たり16.9人となっていて、国が示した4つのステージでは感染が急増している「ステージ3」の指標である15人を超えていると説明されました。

今月10日までの1週間で新たに感染が確認された人のうち
▽20代が38.3%
▽30代が24.8%で合わせておよそ6割を占める一方で
▽40代が13.2%
▽50代が8.6%となり、すべての世代に感染が拡大していると説明しました。
特に、40歳以上が57人増えているとして今後の推移に注意する必要があるとしています。

また、感染経路については
▽家庭内での感染が29.1%と最も多く
▽会食による感染が16.7%
▽職場が16%
▽夜間営業する接待を伴う飲食店が9.4%などとなっています。

感染経路が多岐にわたっている背景について、専門家は、特に症状のない人が無意識のうちに、感染を広げている可能性があると指摘しました。

また、今月10日までの1週間で
▽20代と30代は会食による感染が20.4%と最も多い一方で
▽40代と50代で最も多いのは家庭内での感染で33.7%だと報告されました。

家庭内での感染は
▽60代でも56.8%
▽70代以上でも43.3%といずれも最も多く、年齢が高くなるほど目立っていると説明されました。

このほか、80代以上では先月から、これまでに3分の2が施設内で感染しているとして、介護施設などでは無症状や症状の乏しい職員を発端とした感染が確認されていて、感染防止対策と検査体制の拡充が必要だとしています。

さらに、この1週間の特徴としてシェアハウスや大学などの寮での感染が相次いでいるとして、集団生活の場では対策の徹底が重要だと指摘しています。

さらに、グループで旅行に行き、同行した人などに陽性の人が含まれていて、感染が広がる事例が先月後半から増える傾向にあり、車の中で感染する事例も報告されているとしています。

また、感染経路が分からない人の割合は11日の時点で、国の示したステージでは感染が爆発的に拡大している「ステージ4」の指標である50%を超え、62.2%となったことが報告されました。

医療提供体制

都内の医療提供体制について専門家は「無症状や軽症の患者の入院で病院がかなりひっ迫してきている」などとして、ホテルでの療養と自宅療養で統一した基準を定めて、患者を効率よく隔離する必要があると指摘しています。

医療提供体制を分析する項目のうち、「陽性率」は12日までの1週間の平均が6.6%で、前の週と比べて横ばいで推移しています。

一方、入院患者は12日の時点で1659人で、1週間前と比べておよそ12%増え、収束の兆しが見えない中、医療機関の負担が強まっていると指摘しました。

さらに、感染防御対策や検査、消毒など通常の患者よりも多くの人手や、時間が必要な新型コロナウイルスの患者の入院と退院が、短期間で繰り返されていることも、負担の要因となっているとしています。

また、今月11日までの1週間で感染が確認された人のうち無症状の人が16.6%いると報告しました。

そのうえで「無症状や軽症の患者の入院で、病院がかなりひっ迫してきている」などとして、ホテルでの療養と自宅療養で統一した基準を定めて、患者を効率よく隔離し、健康観察をする体制を作り上げる時期に来ていると指摘しました。

このほか、緊急性を要する中等症や重症患者を入院させるための依頼も増え、入院調整が難航して時間を要する事例も多く発生していると報告されました。

さらに、12日の重症患者の数は1週間前と同じで21人で、国が示した4つのステージのうち感染が急増している、「ステージ3」の指標よりも低くなっていると説明しました。

重症患者は新たな感染確認が増えたあと、およそ2週間遅れて増え始めることを踏まえ、集中治療室などの病床を重症患者が占有する期間が長くなることを念頭に置き、救急救命やがん医療など通常の医療との両立を保ちながら、重症患者の病床を確保する必要があるとしています。

専門家「熱中症と区別が難しくなる」

モニタリング会議の中で、専門家は熱中症の患者の増加と新型コロナウイルスに対する、医療提供体制の関係について「熱中症は発熱し体温が高くなったことで体の不調をきたしてくるので、新型コロナウイルスでの感染は、熱中症と区別にすることが非常に難しくなる。熱中症の患者が増えると救急医療を圧迫して入院の体制が追いつかない事態も出てくる」と述べました。

一方で、救急隊が複数の医療機関に患者の受け入れを要請したものの、搬送先が見つからない場合、地域の中核病院などが代わりに探す、「東京ルール」が適用された件数は、11日までの1週間の平均で63.6件でした。

これは、前の週のおよそ1.5倍に増えていますが専門家は「熱中症の患者の搬送でルールが適用された件数がそれほど多くない。件数の増加は新型コロナウイルスの感染の広がりを反映している可能性がある」と述べました。