モーリシャス沖で貨物船座礁 重油1000トン超流出か 会社が会見

モーリシャス沖で貨物船座礁 重油1000トン超流出か 会社が会見
海運大手の商船三井が運航する貨物船が、インド洋の島国モーリシャスの沖合で座礁し、周辺に大量の油が流れ出た事故で、会社側が会見し、1000トン以上の重油が流出したとみられ、回収を進めていることを明らかにしました。
今回の事故について、商船三井と船を所有する長鋪汽船が9日、都内で記者会見しました。

それによりますと、先月26日に商船三井が運航する貨物船「WAKASHIO」がモーリシャスの沖合で座礁し、今月6日に船尾にある燃料タンクの一つが損傷して重油が流出したということです。

これまでに1000トン以上の重油が流れ出たと見られ、周辺にはさんご礁が広がり、水鳥をはじめ貴重な生物が生息していることから、オイルフェンスを設置して、油のさらなる広がりを食い止めるとともに、回収を進めているとしています。

モーリシャスでは、豊かな自然を売りにした観光が主要産業の一つとなっていて、モーリシャス政府は国連に対して緊急の支援を求めています。
商船三井の小野晃彦副社長は「モーリシャスをはじめ、関係の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます。影響を最小限に食い止めるよう、解決まで誠意を持って対応したい」と述べました。
長鋪汽船の長鋪慶明社長は「現時点ではどのくらいの期間で回収ができるか見通しが立っていない。まずは油の拡散を防ぐことに全力で努めていきたい」と話していました。

海洋汚染防止へ日本政府が国際緊急援助隊派遣へ

この問題で、政府は、モーリシャス政府からの要請を受け、10日、国際緊急援助隊の専門家チームを現地に派遣することを決めました。

専門家チームは、海上保安庁と外務省、それにJICA=国際協力機構の職員合わせて6人で構成され、現地では油を取り除く作業などの支援活動を行う予定です。

政府は、今回の問題がモーリシャスの環境や、観光業に大きな影響を与えかねないとして、専門家チームの派遣で海洋汚染の防止に貢献したいとしています。

専門家 さんごの多様性が世界で最も高い地域

ビッグデータ解析を使って生物多様性の研究を行っている琉球大学の久保田康裕教授らのグループはことし3月、モーリシャスを含むインド洋西部の海域は、さんごの種の多様性が世界で最も高いとみられるとする研究を報告しています。

世界の暖かい海には、イシサンゴとよばれるさんごの仲間が生息していますが、まだ見つかっていない種も多数いると考えられています。

久保田教授のグループは、現在見つかっている697種の分布について、世界の10万か所余りで記録されたデータを解析して、世界のどこの海のサンゴの多様性が最も高いかを推定しました。

その結果、モーリシャスを含むインド洋西部の海域は、東南アジアやオーストラリアなどと比べて、調査が進んでいないわりに見つかっている種が多く、計算の結果、世界で最もさんごの種数が多い海域とみられることが分かったということです。

久保田教授は「モーリシャス周辺は潜在的にさんごの多様性が高いホットスポットだが調査が十分にされていない。今回の事故で知られる前に絶滅する種がいないか懸念される。事故の影響調査とともに、この海域のサンゴの多様性についても調査を尽くす必要がある」と指摘しています。

専門家 「壊滅的な被害につながるおそれも」

貨物船が座礁したモーリシャスの沖合は世界でも有数の多様なさんご礁が広がる海域で、流出した油などによって生態系が大きな影響を受けることが懸念されます。

有害物質が生態系に与える影響に詳しい神戸大学の岡村秀雄教授によりますと、さんご礁に重油が流出した場合、さんごや海草などの生物に油が覆い被さることで、呼吸できず窒息するおそれがあるほか、さんごを形づくる「褐虫藻」と呼ばれる生物が栄養を補給できなくなり、壊滅的な被害につながるおそれがあると言うことです。

また、重油そのものに含まれる有害物質や、船の底に貝などが付かないように塗られている塗料に含まれる有害物質の溶出も生態系に影響を及ぼすおそれがあるということです。

岡村教授は、さんご礁での事故処理の場合、薬剤による重油の処理や、物理的に重油を取り除く作業自体がさんごの生態に影響を与えるおそれがあるとして、油の流出がこれ以上広がらないようにすることが最優先だとしたうえで、「さんご礁に広がった重油の回収はかなり難しい作業になると思われる。場合によっては自然の力で浄化するのを待たざるをえない可能性もあり、影響の長期化を覚悟して慎重に対策を探っていく必要がある」と指摘しています。