大相撲 阿炎 3場所出場停止と減給の懲戒処分 現役は続行へ

大相撲 阿炎 3場所出場停止と減給の懲戒処分 現役は続行へ
新型コロナウイルスの感染が広がる中、大相撲の力士が接待を伴う飲食店に出入りした問題で、日本相撲協会は平幕の阿炎を3場所の出場停止と50%の減給5か月の懲戒処分としました。相撲協会は引退届を受理せず、阿炎は、懲戒処分を受けたうえで現役を続けることになりました。
前頭5枚目の阿炎は、日本相撲協会が7月場所の開催にあたってのガイドラインで不要不急の外出をしないよう求める中、接待を伴う飲食店に複数回出入りしていたとして、7月場所7日目から休場させられていました。

相撲協会は、6日午後から東京 両国の国技館で開かれた定例の理事会で阿炎の処分について協議しました。

その結果、協会員が外出を自粛し、観客に対しても感染防止の協力を求めているなか、無自覚で軽薄な行為であることや聞き取り調査に対して阿炎が店に行った回数についてうそをつき、一緒に行った力士に口裏合わせを働きかけて、反省の情が見られないなどとして相撲協会は阿炎に対し3場所の出場停止と50%の減給5か月の懲戒処分としました。

阿炎は引退届を提出していましたが相撲協会はこれを受理せず、今後、相撲協会に迷惑をかける行為をした場合は、引退することなどを条件に現役を続けることになりました。

今場所の途中休場と3場所の出場停止で、阿炎は幕下以下に番付を下げることになり再び関取を目指して一から出直すことになりました。

また、一緒に飲食店に行った元十両で幕下の極芯道に対しては、2場所の出場停止としました。

阿炎の師匠の錣山親方は指導監督に重大な不足があったとして20%の減給6か月、極芯道の師匠の錦戸親方はけん責のそれぞれ懲戒処分としました。

一方、飲食店で酒を飲んで寝ているとみられる写真がネット上に掲載された、田子ノ浦親方についても師匠の立場にありながら不要不急の外出をしたことは不問にできず、猛省を促す必要があるなどとしてけん責の懲戒処分としました。

相撲協会は、7月場所後の2週間の協会員の行動について、師匠の許可を得たり行動を記録したりしたうえで、力士などの外出を認める一方、引き続き、接待を伴う飲食店での飲食を禁止しています。

阿炎のこれまでの昇進と2回の厳重注意

錣山部屋の平幕の阿炎は埼玉県出身の26歳。

高校卒業後、平成25年夏場所で初土俵を踏みました。

力強い突き押し相撲で順調に番付をあげ、おととしの初場所で新入幕を果たすと、去年の名古屋場所で小結に昇進しました。

明るい性格で人気を集める一方で去年11月には、別の力士とともに手足と口が粘着テープなどで縛られたお互いの様子を撮影した動画を自身のSNSに投稿したとして、日本相撲協会から厳重注意を受けました。

さらにこの問題を受けて、ことし2月に開かれたSNSの危険性などについて学ぶ研修会に参加しましたが、報道陣の取材に対し「爆睡していた。寝ていて聞いていない」などと発言しました。

こうした言動を受けて相撲協会は阿炎に対して2回目の厳重注意をしました。

その後、3月の春場所では負け越し7月場所は前頭5枚目で臨みましたが、接待を伴う飲食店に出入りしていた問題で7日目から休場していました。

日本相撲協会の7つの懲戒処分

日本相撲協会では、平成26年の公益財団法人化に伴って賞罰規程を設け、力士や親方、それに行司などすべての協会員を対象に7つの懲戒処分を定めています。

処分は軽い順に将来を戒めることを意味する「けん責」、減給にあたる「報酬減額」、本場所などへの出場を停止する「出場停止」、相撲協会の事業への従事を停止する「業務停止」、現役力士の番付や、親方の階級を下げる「降格」、引退を勧告する「引退勧告」、「懲戒解雇」の7つです。

「引退勧告」と「懲戒解雇」の懲戒処分を受けた場合は、再び相撲協会に所属することはできないと定めています。

芝田山広報部長「きちっとした大人に」

日本相撲協会の芝田山広報部長によりますと、阿炎は理事などを前にして「土俵に戻りたい気持ちはある。自分のやったことに責任を感じている」と話していたということです。

これまで問題となっていた阿炎の言動について、芝田山広報部長は「阿炎は大人になりきれない、子どもなのだと思う」と厳しく指摘しました。

阿炎は、ことし6月に結婚したばかりですが、当面、錣山部屋で師匠の管理のもと暮らすことになり、芝田山広報部長は「結婚したからこそ、しっかりしてもらわないといけない。今のままでは本当にとんでもないことになってしまう。相撲界に残りたいという気持ちがあるのなら、師匠の管理下できちっとした大人になれるよう頑張ってもらいたい」と話していました。

錣山親方「寛大な処分に感謝」

阿炎の師匠の錣山親方は、日本相撲協会が引退届を受理せず、3場所出場停止などの懲戒処分としたことについて「寛大な処分に感謝しています。本当にありがたい」と話したうえで「私の監督責任の問題です。悪い人間ではないが、お子様でただ明るいだけだから、はめを外してしまう。周囲にどれだけ迷惑をかけたか、よく考えて反省してほしい」と、より一層、厳しい指導を誓っていました。

阿炎には、現役を続けるように知人から多くのメッセージが寄せられているということで「本人も奮い立つしかないんじゃないですか。相撲協会にも、お客さんにもお返しをしなくてはならない」と、今後、土俵で恩返しをするよう求めました。