ミサイル防衛体制の在り方 首相 国家安全保障会議開き協議

ミサイル防衛体制の在り方 首相 国家安全保障会議開き協議
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ミサイル防衛体制の在り方をめぐり、自民党の政調審議会は、抑止力を向上させるため、相手の領域内でも攻撃を阻止するなどとした検討チームの提言を了承しました。

自民党の提言を受けて、安倍総理大臣は、4日夕方、NSC=国家安全保障会議を開催し、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替案を含む、ミサイル防衛体制の在り方をめぐり協議しました。

安倍総理大臣は「安全保障の議論を深めていく」と述べ、安全保障戦略の在り方について、NSC=国家安全保障会議で議論していく考えを強調しました。
新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口・秋田両県への配備断念を受けて、自民党の小野寺安全保障調査会長らは、4日、党内で取りまとめたミサイル防衛体制の在り方に関する提言を安倍総理大臣に手渡しました。

提言では、抑止力を向上させるための取り組みとして、憲法の範囲内で専守防衛の考えのもと、相手領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含め、早急に検討して結論を出すよう求めているほか、攻撃的な兵器を保有しないといった、これまでの政府方針は維持すべきだとしています。

これを受けて、安倍総理大臣は、午後4時すぎからおよそ30分間、麻生副総理兼財務大臣や菅官房長官、河野防衛大臣ら関係閣僚も出席して、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開き、「イージス・アショア」の代替案を含む、ミサイル防衛体制の在り方をめぐり協議しました。
安倍総理大臣は「国の使命は、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくことだ。提言を踏まえ、政府としても、しっかり議論を深めていきたい」と述べたうえで、「イージス・アショア」に代わる防衛力の整備を含め、安全保障戦略の在り方について、NSC=国家安全保障会議で議論していく考えを強調しました。
安倍総理大臣は4日午後6時半ごろ、総理大臣官邸を出る際、記者団に対し「憲法の範囲内で国際法を順守し、専守防衛の考え方のもと、日米の基本的な役割分担を維持しつつ、抑止力を向上するための新たな取り組みが必要だという提言を受け取った」と述べました。

そのうえで「政府の役割は、国民の生命と平和な暮らしを守り抜いていくことだ。政府においても、国家安全保障会議で徹底的に議論を行っている。提言を受け止めて、しっかりと新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく考えだ」と述べました。

自民党提言の経緯と意義

今回の提言は、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口、秋田両県への配備断念を受けて、ことし6月、安倍総理大臣が、NSC=国家安全保障会議で、日本の安全保障戦略の在り方を議論し、新たな方向性を打ち出すと表明したことを受け、自民党内で議論が始まりました。

自民党では、3年前に政府に提出した提言で、自衛隊が敵の基地を攻撃する能力として、巡航ミサイルなどの「敵基地反撃能力」の保有の実現に向けた検討を始めるよう求めていました。

一方、今回の提言をめぐっては、取りまとめに向けた議論で「相手の国を攻撃する能力を持てば、地域の緊張を高めることになる」といった慎重な意見や、北朝鮮の弾道ミサイルの発射が、移動式発射台から行われるようになり、目標の把握が困難になっているといった指摘が出されました。

このため「敵基地反撃能力」という表現を見直し「相手の領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」と記しています。

また、今の憲法のもと、専守防衛の考え方の範囲内で検討することを明確にするため、政府がこうした能力の保有を検討する際は、攻撃的兵器を保有しないなど、自衛のために必要最小限度のものに限る、という従来からの政府方針を維持するよう求めています。

小野寺元防衛相「積極的に政府を後押し」

自民党の安全保障調査会長を務める小野寺元防衛大臣は、記者団に対し「今まで、政府は一貫して相手領土内での打撃力について、踏み込んだ考え方を示してこなかった。ミサイル技術が向上する中、わが国を守るために万(ばん)やむをえない場合には、このような能力を持ち、ミサイルを阻止することが必要であり、積極的に政府を後押ししていきたい」と述べました。

政府 9月末めどに一定の方向性示す方針

政府は、自民党が提言を提出したことを受け、NSC=国家安全保障会議で行っている、安全保障戦略の在り方についての議論を加速化させ、9月末をめどに一定の方向性を示す方針です。

政府内では、この中で検討する「イージス・アショア」の代替案について、山口、秋田両県への配備が、技術的な問題で断念されたことを踏まえ、「同じことが繰り返されないよう、十分な検討が必要だ」といった意見が出ています。

一方、公明党も、ミサイル防衛体制の在り方について議論を進めていますが、「これまでの概念を大きく変える必要はないのではないか」といった慎重な意見が根強く、当面は政府の議論を見極めたいとしています。

元海将「自衛隊の組織・文化を大きく変える内容」

今回の提言について、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは「発足以来70年間、自衛隊が全く手をつけてこなかった分野で、自衛隊の組織・文化を大きく変える内容だ。相手の領域内にある弾道ミサイルを阻止するとなると、どこに、どのような部隊がいて、どういう装備を持っているかなどを瞬時に分析する必要があり、今の自衛隊にその能力はない。かなりの覚悟がないと実現は難しく、イージス・アショアに代わるミサイル防衛の在り方として優先順位が高い選択肢だとは思えない」と話しています。

そのうえで「イージス・アショアの配備が断念されたことを受けて唐突にクローズアップされ、専守防衛の理念を踏まえた防衛力の在り方などが十分に議論されていない印象がある。アメリカとの『盾』と『矛』の役割分担や憲法論議など、包括的な議論が必要ではないか」と指摘しています。

「敵基地攻撃」議論の歴史

提言をまとめるにあたって議論になった、相手の基地を攻撃する能力について、政府はこれまでミサイルなどによる攻撃を防ぐのに、ほかに手段がないと認められる時に限り、法理論上、憲法が認める自衛の範囲に含まれ、専守防衛の考えから逸脱せず、可能だとする考え方を示してきました。

昭和31年には、当時の鳩山総理大臣が国会で「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとは考えられない」と答弁しています。

ただ、日米安全保障体制のもとでは、一貫してアメリカが「矛」、日本が「盾」の役割を担い、日本として、相手の基地の攻撃を目的とした装備を持つことは考えていないと説明してきました。

安倍総理大臣も去年5月の衆議院本会議で「いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中でアメリカの打撃力に依存しており、今後とも、わが国の政策判断として、こうした日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません」と答弁し、相手の基地の攻撃を目的とした装備を持つことは考えていないと説明しています。

3年前、防衛省が、能力上は北朝鮮や中国の沿岸にも届く射程の長い「長距離巡航ミサイル」の導入を発表した際も、国会で、相手の基地の攻撃能力との関係が議論されましたが、このとき政府は、相手の脅威の圏外から対処できるようにするもので、基地の攻撃を目的としていないと説明していました。