被爆から75年 アメリカ人約7割「核兵器は必要ない」

被爆から75年 アメリカ人約7割「核兵器は必要ない」
被爆から75年となることし、NHKが日米の若い世代を対象にアンケート調査を行った結果、アメリカ人のおよそ7割が「核兵器は必要ない」と答えました。
専門家は「アメリカでは若い世代を中心に、『原爆投下によって戦争を終えることができた』という認識が変わってきている」と指摘しています。
NHK広島放送局は被爆から75年となることし、「平和に関する意識調査」として広島県、広島県以外の全国、それに、アメリカの18歳から34歳を対象に、インターネットでアンケート調査を行いました。

回答は3つのグループでそれぞれおよそ1000人、合わせて3000人余りから寄せられ、その意識や考え方の違いを比較しました。

この中で、核弾頭の総数が世界でおよそ1万3400個と推計されている「核兵器」の必要性について、二者択一で聞いたところ、広島県と広島県以外の全国で同じ傾向となり、日本人のおよそ85%が「必要ない」と答えました。

さらに、核兵器を保有するアメリカでも70%余りが「必要ない」と答えました。

その理由としては、「多くの人が死傷する」という意見が最も多く、次いで「破壊的過ぎる」とか「ほかにも問題を解決する方法がある」といった、核兵器の威力の深刻さを懸念する考えが多く見られました。

また、75年前にアメリカが原爆を投下したことについてアメリカ人に聞いたところ、「許されない」と答えた人は41.6%で、「必要な判断だった」と答えた31.3%を上回りました。

調査方法が異なるため単純な比較はできませんが、5年前、戦後70年に合わせてアメリカの世論調査機関、「ピュー・リサーチセンター」が行った調査では、広島と長崎への原爆投下について、18歳から29歳のアメリカの若者の47%が「正当だった」と答えていました。

国際政治が専門で核軍縮について詳しい、明治学院大学の高原孝生教授は「アメリカでは『原爆投下によって戦争を終えることができた』という神話が長く続き、今でも受け入れられているが、教育の効果などによって、この10年ほどで若い世代を中心に、認識が大きく変わってきている」と話しています。

アメリカ人の8割以上「原爆についてもっと知りたい」

そして、戦後、被爆者が中心となって原爆被害の悲惨さを広島から国内外に訴え続けてきたことに関連して「原爆についてもっと知りたいと思うか」聞きました。

その結果、広島県で76.5%、広島県以外の全国で68.7%が「知りたい」と答えましたが、アメリカ人は80.5%で、日本人より高い割合となりました。

また、「被爆者から被爆体験を聞いたことがあるか」という質問に対し、「聞いたことがある」と答えたのは、広島県で75.3%、広島県以外の全国で47%、アメリカで34.8%でした。

その方法についてアメリカ人の半分以上が「インターネットで閲覧した」と答えていて、動画投稿サイトやオンライン会議ツールなどインターネットが大きな役割を担っていることが挙げられています。

一方、「聞いたことがない」と答えた人のうち、アメリカでは6割以上が「被爆体験を聞きたい」と答え、原爆について、日本よりアメリカの若い世代で高い関心が示されています。

専門家「若い世代の間で関心高まっている」

国際政治が専門で核軍縮について詳しい、明治学院大学の高原孝生教授は「キノコ雲の下で何が起きたか、ことばでは言い尽くせない地獄を経験させられたことを知ったうえで、『これはだめだろう』という人間としての感情がアンケートの数字に反映されている。原爆投下によって戦争を終えることができたという神話がアメリカで長く続き、今でも受け入れられているが、この10年ほどで認識が大きく変わってきている。これはアメリカでの教育の効果で、この問題が大事だと思ったときに、もっと本当のことが知りたいという精神が根付いている人が多い」と述べ75年前、自分たちの国が原爆を投下した結果、何が起きたのか、若い世代の間で関心が高まっていると指摘しました。

そして、トランプ政権が核兵器の近代化を進めていることも影響しているとしたうえで「『核兵器はなくなったほうがいい』というのがアメリカの若者の間で多数で、その理由が、『もはや戦争自体がよくない』ということだった。戦争を前提にした国家体制が国際的には存続しているが、これを新しいものに変えていくことが課題で、若い人たちは、まだことばにはできていないが、実感として感じ取っているのではないか」と話していました。

英語で証言活動する女性

8歳のときに被爆し、長年、英語で証言活動を続けている広島市の小倉桂子(82)さんは、アメリカの若い世代の意識について「広島に投下された原爆が、今はさらに大きな影響力を持っていることを想像したとき、『それが使われたらどうなるんだろうか』と彼らの想像力で広島が感じた恐怖を増幅させ自分のものとして考えている。もっと勉強しなければという気持ちが強くなっているんだと思う」と話しています。

そのうえで、オンラインでの被爆証言について「インターネットを通じて、限定された、一部分であったものが広く拡散して、みんなが自分のこととして考えられるようになった。新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカの人たちも今は行き来が難しいが、たくさんメールが来るし、『なんとかあなたの話を聞きたい』と言われる。広島から、もっともっと、日本語でもいいから発信して映像に英語の字幕をつければかなり効果があると思う」と話していました。

被爆者サーローさん「若い世代に期待」

カナダ在住の広島の被爆者で、世界各国で核廃絶を訴え続け、3年前のノーベル平和賞授賞式で演説した、サーロー節子さんは(88)自身の活動の中でも、アメリカの若い世代の原爆投下や核兵器に対する意識の変化を感じているといいます。

アンケートの結果について、サーローさんは「アメリカの若者たちの中に、オープンに原爆投下を正当化している態度が正しいのか、考え直そうという態度が出てきている。核兵器の問題は広島・長崎だけの問題ではない、全世界的な問題で自分にも関係がある身近なことだと捉えてくれていると、集会を行うたびに感じる」と話しています。

サーローさんは新型コロナウイルスの影響を受け証言活動も各国に出向く形ではなく、オンラインで行っていますが「新型コロナウイルスの影響で人間社会の無力さというか、将来とか自分の命とか家族の幸せとか、そういう大切な問題を身近に感じるようになってきているのではないかと思う。体力を消耗しないで1日のうちに何度も、さまざまな国の人たちと会話できるのはすばらしい。被爆者の数は減っていくが、生き残っている私たちが新しい技術を活用してできるかぎり、がんばっていけるようにしたい」と話しています。

また、世界各国で広がりを見せている、地球温暖化の問題や貧困の問題などに対する活動も、若い世代が中心になっているとしたうえで「どの活動も、一人ひとりの命、人間の尊厳を大切にすることで社会全体がよりよく、安全になるという確信に基づいている。いま、国際政治はますます厳しい状態になり、目の前には暗闇があるが絶望はしていない。若い人たちを見て、希望が持てる時代がやってきたと感じている」と述べ、若い世代に対する期待を示しました。