歌舞伎座が5か月ぶり公演再開 掛け声はなし 新型コロナ

歌舞伎座が5か月ぶり公演再開 掛け声はなし 新型コロナ
新型コロナウイルスの影響で、ことし3月から公演を中止していた東京の歌舞伎座が、感染予防のため上演方法などを変えたうえで1日、5か月ぶりに公演を再開し、再開を待ち望んだファンが劇場に足を運びました。
東京の歌舞伎座は新型コロナウイルスの感染拡大によって、ことし3月から5か月にわたって休演していましたが、劇場への休業要請が解除されたあと、専門家による助言を受けたガイドラインに基づく感染予防策を施したうえで、1日から公演を再開しました。

歌舞伎座には午前11時からの公演を前に、再開を待ち望んだファンが訪れ、ソーシャルディスタンスを保ち、サーモグラフィーによる検温を受けながら劇場に入っていきました。

第1部の「連獅子」に出演する片岡愛之助さんが「一日も早い事態の収束を願い、全身全霊で舞台を務めます」などとあいさつした音声が開演前に流され、幕が開きました。

公演再開にあたって、歌舞伎座は座席を半分以下に減らしたほか、「4部制」を初めて採り、客も出演者も1時間ほどの演目ごとに入れ替えることにしています。

夫婦で訪れた60代の男性は「毎月、歌舞伎を見にきていたので、公演がない期間は配信の映像を見ながら再開を待ち望んでいました。毎日、多くの感染者が報告されているので少し心配もありましたが、しっかり対策していると聞き、安心して楽しみたいと思います」と話していました。

この「八月花形歌舞伎」は、今月26日まで公演が続く予定です。
公演の再開にあたって歌舞伎座は、高齢者も多く訪れることもあって、感染予防策を徹底したとしています。

具体的には、▽入り口にはサーモグラフィーが設置され、37.5度以上の客は入場させない。▽座席は前後左右を空け、役者が通る花道の近くや桟敷席には客を入れない。▽換気を十分に行うために開演中も客席の扉を開けたままにする、といった対策を取ったということです。

歌舞伎座の客席には全部で1808席ありますが、使用するのは半分以下の823席で、4部制にしたことで、1時間ほどで全員が入れ代わります。また、歌舞伎のだいご味でもある掛け声などはしないよう呼びかけています。

さらに舞台上でも▽長唄や鳴物は、黒い特注のマスクをしたり、▽観客との距離を空けるため、俳優も舞台の奥で踊るようにするなどの対応をしているということです。

こうした対策は公演前日の31日、報道陣に公開され、劇場のスタッフが、サーモグラフィーによる検温を促したり、チケットを自分でちぎってもらったりする作業を確認していました。

松竹の安孫子正副社長は「この時期に再開してもいいのか葛藤はありましたが、感染症の専門家から助言をもらい、徹底した対策を尽くして再開にこぎ着けることができました。歌舞伎座には高齢の方が多く訪れるため、3密をどう避けるかに神経を集中して対応し、お客様にも協力してもらいながら続けていきたい」と話していました。

松本幸四郎「本当の再開へのスタートライン」

第4部に出演する松本幸四郎さんは、初日前日に取材に応じ「まずは、お芝居を演じられる場を考え抜いていただいたことのうれしさがあります」と歌舞伎座での公演再開の喜びを語りました。

また、公演が中止になっていた期間について「初めのひとつきぐらいは、何もできないことについてすごく無力感を感じ、どうしたらいいのだろうと考える体力も精神力もない状態でした」と振り返ったうえで、自身の発案でオンライン歌舞伎を配信し多くの反響を得たことについて「本当にありがたいという以外ありません。大きく分けて、劇場で見ていただく歌舞伎と家で見る歌舞伎の2つの選択肢ができたらいいなと思っています」と話していました。

そのうえで「今は制限がある中での再開ですが、すべて再開するのが本当の『再開』だと思っています。8月の公演は、そのためのスタートラインだと思っていますので、ぜひとも12か月、歌舞伎の公演が開くために前進するひとつきにしたいと思います」と意気込んでいました。