新型コロナの影響で “看護実習不十分” が半数以上 宮城

新型コロナの影響で “看護実習不十分” が半数以上 宮城
新型コロナウイルスの影響で、宮城県では病院で患者の手当てを学ぶ、看護実習を十分に行えない専門学校や大学が半数以上に上り、医療を支える人材の育成をどう進めていくかが課題になっています。
NHKは7月中旬の時点での新型コロナウイルスの影響について、宮城県内で看護師や准看護師を養成している、18の専門学校や大学に取材しました。

病院で患者の手当てを通して学ぶ看護実習については、7校が「ほとんど始められていない」と回答したほか、3校が「全く始められていない」と答え、半数以上が十分に行えていないことが分かりました。

受け入れ先の病院から感染防止を理由に断られていることが主な理由で、例年どおり看護実習を始める見通しが立っていない学校も12校に上りました。

教員からは「学生の自信喪失や、就職の前後で理想と現実の差に悩む、リアリティショックにつながりかねない」などという意見が寄せられました。

厚生労働省は教員などを患者役にして学校の中で行う「学内実習」が看護実習の代わりになるとしていますが、学校側からは「患者のことばや表情を直接見たり触れたりしないと分からない部分も多く、学内実習では限界がある」という意見もありました。

看護師の養成に詳しい宮城大学の高橋和子教授は「このままでは経験不足の看護師が医療の現場に出ることになる。学生を受け入れられる病院を行政が把握して学校側に伝えるなど、対策に乗り出してほしい」と話しています。

看護学校の学生や教師 不安募らす

看護学校の学生や教師たちは、今月から再び感染が拡大していることにさらに不安を募らせています。

仙台市にある仙台市医師会看護専門学校は例年、5月から12月までの7か月間、看護実習のため県内20余りの病院に学生を受け入れてもらっていますが、ことしは4月に感染が拡大したことなどから「受け入れられない」という病院が相次ぎ、5月は中止せざるをえませんでした。

先月になると、その後、感染が収まってきたことで、7つの病院が受け入れに応じ、看護実習が始まりました。

しかし、今月になって仙台市内で再びクラスターが発生したため、1つの病院ですでに始まっていた看護実習が中止になったほか、もう1つの病院で始まる予定だった実習もいったん取りやめになりました。

学校内では教員が患者役になったり子どもの人形を使ったりして、実習を補おうとしていますが、実際の患者に触れられないことによる経験不足が今後に影響するのではないかと、学生や教員が不安を募らせています。

今月29日は学生たちが今年度の看護実習に関するレポートを作成する予定でしたが、実習が十分にできていないため、昨年度の実習を振り返る内容に変更しました。

学生の1人、松浦瑠久さんは「就職してからしっかりと働けるのか、不安が大きいです。コロナ禍の中で即戦力の医療従事者が求められていると思いますが、その期待に応えられるだろうかという気持ちです」と話していました。
峯明美副学校長は「看護学生にとって第1の教育者は患者だと思っています。看護実習に行けないことで患者にどのような看護を行うことが最適なのかを考える幅が狭くなってしまうのではと思っている」と話しています。

このままでは来年の春には看護実習の経験が少ない学生たちが就職し、新人の看護師として医療の現場に行くことになります。

峯副学校長は「病院は、実習に行っていない学生が多いということを前提に新人教育のプログラムを考えてほしい」と話しています。