帰国かとどまるか コロナ禍で難しい選択迫られる日本人駐在員

帰国かとどまるか コロナ禍で難しい選択迫られる日本人駐在員
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世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、外国に赴任している日本人駐在員の間では現地の医療体制への不安などから駐在を中断して一時的に日本に退避する動きが進んでいます。しかし、一部の国では、外国人がいったん出国すると再び入国することが事実上制限されていることから現地で業務を続けるためとどまる人も多く、日本人駐在員たちは難しい選択を迫られています。
世界では新型コロナウイルスの水際対策として外国人の入国を拒否している国が多く、感染者数の上位5か国に限ってもインドとロシア、それに南アフリカでは出国した外国人の再入国が事実上制限されるなど難しくなっています。

これらの国々は近年、新興国として注目され、日本企業が進出し、多くの日本人が駐在していますが再入国の制限があるため、いったん出国すると戻ってくることができなくなります。

実際に日本に退避した駐在員からは時差がある中、現地スタッフとの意思疎通がうまくいかなかったり、技術職の日本人が現地にいなくなることで生産に支障をきたしかねないという声が出ています。

このため、多くの駐在員たちは現地での業務を継続させるため、感染の不安を抱えながらもとどまり続けているのが実情です。

世界で新型コロナウイルスの感染が広がり続ける中、再入国が事実上制限されている国の日本人駐在員は感染への不安と業務継続とのはざまで難しい選択を迫られています。

インドでは

累計の感染者数が160万人を超え、アメリカ、ブラジルに次いで世界で3番目に多いインドでは、1日に5万人をこえる感染が新たに確認されています。

現地の日本大使館によりますと、首都ニューデリーでは、外国人がよく利用する設備が比較的整った3つの病院でICUなどが足りない状況だということです。

日本との定期旅客便は今もすべてストップしていますが、医療への不安から企業の駐在員の90%近くが臨時便などですでに日本に退避しました。

その一方で業務に支障を来すなどとしておよそ1500人が今もインドにとどまっているとみられるということです。

大阪に本社がある物流企業の現地会社の社長、豊田康彦さんもそのひとりです。

自分が帰国し、再びインドに戻ることができない事態となれば日本とインドの間の物流が滞ることを心配し、帰国をためらっていいます。

豊田さんは「インド人スタッフや家族が感染し、かなり近づいてきたという感じはするし、気をつけなければならないが、スタッフの士気を下げたくないし、物流会社として現場に残っていないと最新情報を取ることができないのでとどまっています」と話しています。

ロシアでは

累計の感染者数が83万人のロシアでは、ことし5月に感染拡大のピークは越えたものの、今も毎日5000人以上の感染が新たに確認されています。

ロシアではことし3月下旬、感染防止の水際対策として空路と陸路の国境が相次いで閉鎖されたことから、首都モスクワやその周辺にいたおよそ600人の日本人駐在員の多くは現地にとどまることを余儀なくされました。

このうちショベルカーを生産している現地法人の社長の村上勝彦さんは(62)駐在員の半数にあたる8人を臨時便で日本に退避させ、残りの7人は現地にとどまる判断をしました。

村上さんは「事業を継続するために、前線に残らなければならないという判断があった。日本人がとどまって事業を継続することは、ロシア経済を支えるためにも非常に大きな意味がある」と話していました。

ロシアでは今月に入り、政府が外国人の再入国を認める方針を打ち出し、日本人駐在員も8月再入国できる見通しとなっています。

この対応について村上さんは、一定の評価はしているものの、再入国できるかどうかまだ安心できる状況ではないとして、今後のロシアでの感染状況を見たうえでみずからを含め駐在員を帰国させるかどうか検討することにしています。

村上さんは20年にわたって中南米・アジア・ヨーロッパで駐在員としてビジネスの最前線に立ってきたということで、「海外に出ることに足踏みしていては、日本という小さな島国を支えることはできない。これからも外から日本を支えたい」と話していました。

南アフリカでは

南アフリカの新型コロナウイルスの感染者数は48万人を超え、世界で5番目に多くなっています。

JETRO=日本貿易振興機構によりますと、およそ650人の日本人駐在員や家族の間では感染拡大を受けてチャーター機などで日本に退避する動きが進みましたが、今でも200人ほどがとどまっています。

その大きな理由となっているのが外国人の再入国を事実上制限している措置で、いったん日本に退避すると南アフリカに戻ることができなくなるからです。

ただ、南アフリカでは、8月から9月にかけて感染がピークを迎えると予測され、駐在員が利用するような私立病院でも病床が足りなくなるおそれが指摘されていて、駐在員たちは難しい判断を迫られています。

こうした状況を受けて、JETROは日本企業とともに、南アフリカ政府に対し、再入国制限の緩和を働きかけることにしています。

JETROヨハネスブルク事務所の石原圭昭所長は「これから人口が増えるアフリカでビジネスを咲かせたいという思いや、アフリカの社会課題に役立ちたいという使命感を持っている企業の駐在員も多い。南アフリカ政府から再入国の許可を得るべく、日本企業が一枚岩になって情報収集して、働きかけていきたい」と話しています。