旅行や働き方の新スタイル「ワーケーション」って何?

旅行や働き方の新スタイル「ワーケーション」って何?
「ワーケーション」がSNSで議論になっています。
きっかけは今月27日の政府の会議で「ワーケーション」の普及に取り組む考えが示されたことでした。聞き慣れないことばですが、これは新しい造語なのか?そもそもどんなものなのか?
調べてみました。

「#ワーケーション」SNSで話題に

政府が普及に取り組もうとする「ワーケーション」。
仕事を表す「ワーク」と休暇を意味する「バケーション」を組み合わせたことばだそうです。
SNSの議論では、「いつかやってみたい」といった意見がある一方で、「Go Toトラベル」の開始に合わせた批判的な意見が目立ちます。


「何がワーケーションや。そんなん出来るの上級国民だけやろ。現場仕事の人がワーケーション出来るわけない」

「ワーケーションってさ、バケーション中も仕事しろって風に思えてなんかやだ」

「感染拡大に繋がる気もします」

ワーケーションっていったい何?

この「ワーケーション」。そもそも、どんなものなのでしょうか?
JTBなどの大手旅行代理店に聞いてみると、いつ始まったかは定かではないものの、旅行や働き方の新しいスタイルとして、何年も前から使われているそうです。
例えば、こんな働き方。

長期休暇で旅行に行きたいが、その間に1日だけ参加しないといけない会議がある。
旅行先からテレワークで会議に参加して、旅行をキャンセルせず、長期休暇もとれる。

WEBサイト「日本の人事部」がことし行った国内463社へのアンケートでは、すでに導入していると答えた企業は、大企業を中心に約15%ありました。
「働き方改革」を進めたい一部の企業の間で、少しずつ導入が始まっている制度だったんです。

2年前に導入 日本航空は?

2年前から「ワーケーション」を制度として導入している企業に取材しました。
日本航空です。

ーーどうして「ワーケーション」を導入したのでしょうか?
「社員の働き方改革の一環です。改革を進める中で、働き方の選択肢を増やしたいと導入しました」

日本航空の制度では、対象は本社などでオフィスワークをしている社員です。
社員が「ワーケーション」をとるには、事前に旅行の場所や期間を申請して、上司の許可を得ます。もちろん旅行に行っている間は、基本的には休暇扱い。ただ、仕事をした時間については、しっかり給料が支払われます。
休暇であることを前提とするため、渡航費や滞在費などは全額、自己負担です。

利用した社員は…

日本航空で「ワーケーション」を利用した社員は、延べ400人以上。中には、20回近くとった社員もいるそうで、話を聞かせてもらいました。

人事部門で働く東原祥匡さん(37)です。旅行先は、国内では北海道や沖縄、海外ではシンガポールやニューヨーク、そしてハワイまで!
国内外の合わせて11か所で、バカンスを楽しみながら仕事の時間も作り、電話会議や書類の作成を行ってきたと言います。
東原さんにとって、「ワーケーション」のメリットは、休暇の予定を立てやすくなることだけではないのだそうです。

(東原祥匡さん)
「今までは仕事の都合で長期の休暇は難しかったのですが、休暇中でも仕事をできるようになり、1週間以上の旅行もできるようになりました。また、いつもとは違う環境で仕事をすることで、頭の回転も早くなるような気がします」

誘致自治体 コロナで利用者激減

地域振興につながるとして、誘致に力を入れている自治体もありました。
和歌山県では、平成29年から県内の観光地を「ワーケーション」の旅行先として、企業を誘致する活動を行ってきました。
リゾート地の白浜は、東京から飛行機で1時間余り。首都圏の企業を中心に売り込みを行ってきました。その結果、平成29年度から3年間で、延べ104社の910人が「ワーケーション」を目的に来県しました。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大後、利用者が激減しています。
和歌山県の情報政策課の担当者は「政府は、ワーケーションを推進すると言っているようだが、今は、県としては大々的に来てくれとは言えない。最近、企業にテレワークが広がっており、感染拡大が落ち着いたときが、ワーケーションの需要が増えるチャンスだと期待している」と話していました。

専門家に聞く ワーケーションの課題

取材していくと、新型コロナが落ち着いたら「ワーケーション」をとってみたいと思う一方、普及にはまだまだ壁がありそうだと感じました。

そこで、観光業に詳しいJTB総合研究所の高橋伸佳主席研究員に、課題を聞きました。

ーー「ワーケーション」の普及は進むのでしょうか?
「ワーケーションを普及させていくには、まだまだ課題も多くあります。特に大きいのが、テレワークができる一部の職種に限られることです。また、仕事と休暇の境界があいまいになり、企業が交通費や宿泊費などのコストをどこまで負担するのかや、旅先で事故にあった場合は労災となるのかなど労務管理の課題も多くあります」

ーー今後についてはどう見ているのでしょうか。
「今は、ワーケーションを進めるにあたっては、感染状況などに応じて慎重に判断していくことが必要だと思います。また、ワーケーションは、ことばだけは有名になりましたが、実はその定義もはっきり定まっていません。うまく活用されれば、働き手、企業、旅行の受け入れ先の3者にメリットが生まれると思いますので、新たな働き方の1つとして、今の課題を解決していく必要があると思います」