台湾 李登輝元総統死去 蔡総統が弔意と賛辞

台湾 李登輝元総統死去 蔡総統が弔意と賛辞
台湾で初めての直接投票による総統選挙を実現させるなど民主化に尽力し、親日家として知られる李登輝元総統が、30日、台北市内の病院で亡くなりました。蔡英文総統は哀悼の意を示すとともに、台湾の民主化を進めた李元総統の功績をたたえました。
台湾の李登輝元総統は日本時間の30日夜8時20分すぎ、入院先の台北市内の病院で多臓器不全などのため亡くなりました。97歳でした。

1988年、台湾出身者として初めて総統に就任した李元総統は、議会制度の改革など台湾の民主化を推し進め、1996年には直接投票による初めての総統選挙を実現させました。

日本の統治下にあった台湾で生まれた李元総統は日本語が流ちょうで、2000年に総統を退任後、文化交流などで日本をたびたび訪問するなど親日家として知られています。

李元総統の死去を受けて、蔡英文総統は深い哀悼の意を表明したうえで「李元総統の台湾の民主主義への貢献はかけがえのないもので、亡くなったことはとてつもなく大きな損失だ」として、李元総統の死を悼むとともに、その功績をたたえました。

そのうえで蔡総統は、関係部門に対して、葬儀など遺族の支援に全力であたるよう指示しました。

地元のテレビ各局は特別番組で李元総統の功績や足跡を大きく伝えていて、台湾では追悼ムードに包まれています。

安倍首相「日台関係の礎を築かれた方」

安倍総理大臣は31日午前、総理大臣官邸に入る際、記者団に対し「李登輝元総統のご逝去の報に接し、誠に痛惜の念に堪えない」と述べました。

そのうえで、「李登輝元総統は、日本と台湾の親善関係や友好増進のために多大な貢献をされた方だ。同時に、常に日本に対し、特別な思いで接してこられた方でもあり、台湾に自由と民主主義、人権、そして普遍的な価値を、また日台関係の礎を築かれた方として、多くの日本国民は格別の親しみを持っている」と述べました。

そして「李登輝元総統のご逝去は、誠に残念だが、改めて心からご冥福をお祈りしたい」と述べました。

米長官“台湾との関係を強化”

台湾の李登輝元総統が亡くなったことをうけて、アメリカのポンペイオ国務長官は30日、声明を発表し「アメリカ国民を代表して心からお悔やみ申し上げる」と述べました。

また、李元総統の功績について、ポンペイオ長官は「李元総統は大胆な改革で台湾を今日のような民主主義の道しるべに変える決定的な役割を果たし、アメリカと台湾の深い友情を築いた」とたたえました。

そのうえで、ポンペイオ長官は「われわれは李元総統の功績を守り、今後も台湾とのきずなを強めていく」として、台湾との関係を強化していく考えを強調しました。

中国との対立が深まる中で今後の台湾との関係強化に言及することで中国を強くけん制するねらいもあるものとみられます。

交流協会会長「台湾の経済発展を切り拓いた」

化学メーカー昭和電工の元経営トップで、日本の台湾との窓口機関「日本台湾交流協会」の大橋光夫会長は「国際社会でも随一の知日派リーダーとして、情熱を傾けて日台関係の発展のために心を砕き、多大なる尽力をしてこられました。また、台湾の民主化と経済発展を切り拓き、今日の多様性を包括する成熟した社会となるまでの長く険しい道のりを導いてこられました。御功績に改めて深く敬意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします」というコメントを発表しました。

専門家「一時代の終わり」

李登輝元総統の死去について、台湾の政治に詳しい東京大学の松田康博教授は「台湾と東アジアにおける1つの大きな時代を象徴する政治家が亡くなり、時代を画した感がある」と話しています。

李元総統の功績について、松田教授は「台湾の民主化は李元総統の存在なくしては考えにくく、アメリカでの留学経験や日本語での研究活動、それに台湾の暗く苦しい時代を経た彼ならではの判断があったのだと思う。また、香港やマカオが万が一、中国に直接統治される状況になれば台湾はどう対応すべきか、考えていたことをすべて法律や施策として残すなど先見性にもすぐれていた。中国にとっては非常に手ごわい好敵手で、一つの時代が終わったと考えられているだろう」と評価しています。

また、李元総統と面会したときの印象について、「すべて日本語で応対し、高い理想や、実現に向けて実際にどうすべきかを熱く語るなど、今までの政治家のイメージと全く違うタイプだった」と振り返りました。

そのうえで松田教授は「日本でも人脈が広く、日本人の考えもよく理解していた。李元総統の死去は日本と台湾の関係においても一時代の終わりと言える。今まで日本人は台湾に対する理解が浅く、日本をよく知る李元総統の世代に甘えてきた部分が大きい。今後はお互い対等な関係として、日本人も台湾のことを学んでいかなければならない」と話していました。

官房長官「多くの日本国民に深い印象を与えた」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「台湾の民主主義、そして緊密な日台関係の礎を築かれた李元総統は、多くの日本国民に深い印象を与えた。私も、自民党が野党時代に私的に台湾を訪問した際にお会いしたが、90歳近いご年齢でも気力に満ちあふれており、台湾、日本への思いを熱く語っていただいたのが、非常に印象に残っている。元総統のご冥福を心からお祈り申し上げ、ご遺族に衷心より哀悼の意を表したい」と述べました。

また、記者団が葬儀に特使を派遣する考えはあるのか、質問したのに対し「葬儀への政府関係者の派遣は予定していない」と述べました。