米GDP 午後9時半に発表 新型コロナの影響で記録的悪化か

米GDP 午後9時半に発表 新型コロナの影響で記録的悪化か
アメリカの4月から6月までのGDP=国内総生産がまもなく発表されます。この3か月間は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて店舗の休業や工場の停止など経済活動が一斉にストップしたことから、記録的な悪化が見込まれています。
アメリカの4月から6月までのGDPの速報値は、日本時間の午後9時半に発表されます。

市場の予想では、GDPの伸び率は、年率に換算した実質で、前の3か月と比べてマイナス35%と、四半期の統計を取り始めた1947年以来、最悪の水準になることが見込まれています。

2008年のリーマンショックのときの最悪の3か月間のマイナス8%台と比べても、新型ウイルスの感染拡大が経済に与えた打撃の大きさがうかがえます。

この間、全米の各州で外出が規制され、飲食店が休業したことから、大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドがマイナス68%の大幅な減益となったほか、休業した中小のレストランのうち、6割が閉店に追い込まれました。

また、航空やホテルも利用客が激減したほか、自動車などの製造業でも工場の生産が大きく落ち込むなど、経済活動が一斉にほぼストップする事態となりました。

このため店舗や企業の間では、従業員の解雇に踏み切る動きも相次ぎ、失業率が10%以上で高止まりするなど国民生活の基盤も揺らぎました。

世界最大のアメリカ経済の動向は、日本をはじめ世界全体に影響を与えることから、GDPの内容に関心が集まっています。

アメリカ向け輸出は大幅減少

新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞の影響で日本からアメリカへの輸出は、大幅に減少し、日本企業に大きな影響を与えています。

財務省の貿易統計によりますと、日本からアメリカへの去年1年間の輸出額は15兆2000億円余りにのぼり、アメリカは輸出全体の5分の1を占める(19.8%)最大の輸出相手国です。

しかし、アメリカへの輸出額は、去年8月以降、11か月連続で減少が続き、特に、新型コロナウイルスの感染が拡大した4月以降は経済活動の停滞の影響で大きく落ち込んでいます。

去年の同じ月と比べて4月は37.8%、5月は50.6%、6月は46.6%、それぞれ大幅に減少しました。

6月の輸出額を品目別に見ますと、「自動車」が1378億円で去年の同じ月と比べて63.3%の減少、航空機向けのエンジン部品などを含む「原動機」が358億円で56%の減少、「自動車部品」が291億円で58.3%の減少となりました。

また、スマートフォンやパソコンなどの製造に欠かせない「半導体などの製造装置」も317億円で41.4%減少しました。

このほか、「建設用・鉱山用機械」が239億円で44.1%、「金属製品」が101億円で53.8%それぞれ減っていて「医薬品」を除くすべての品目で減少しています。

日系メーカーにも大きな影響

アメリカは世界第2の自動車市場で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の落ち込みによって日系メーカーの生産にも大きな影響が出ています。

現地で車を生産しているトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、SUBARUの4社はことし3月下旬以降、工場の稼働を一時停止せざるを得なくなりました。

その結果、アメリカでの4月の生産台数は全社が「ゼロ」となる異例の事態になりました。

その後、外出制限の緩和などを受けてメーカー各社は生産を再開しましたが、5月の生産台数も去年の同じ月と比べて83%の減少になりました。

6月は19%の減少と回復傾向にありますが、新型コロナウイルスの感染者が再び拡大していることもあって生産や販売がどこまで回復するかはなお不透明な状況です。

日産自動車の内田誠社長は、28日の決算会見で「この2か月間、アメリカは非常に厳しくなっている」と述べました。

そのうえで、世界全体について、「いわゆる第2波によって市場環境がさらに悪化する可能性もあるが、影響を見通すことは現時点では難しい」として、市場の動向を注視する考えを示しました。

ジェトロ「米への輸出を懸念」

新型コロナウイルスの影響で記録的な悪化が見込まれているアメリカの4月から6月までのGDP=国内総生産について、ジェトロ=日本貿易振興機構の佐々木伸彦理事長は30日の記者会見で「日本からアメリカへの輸出がどうなるか、懸念される状況が続くのではないか。今後の情勢を注視していきたい」と述べました。