大阪取引所 国内初の総合取引所として始動 さまざまな先物扱う

大阪取引所 国内初の総合取引所として始動 さまざまな先物扱う
日経平均株価の先物などの金融商品を扱ってきた大阪取引所は、27日から金やとうもろこしなどの先物が東京から移され、さまざまな先物を扱う「総合取引所」として動きだしました。
日本取引所グループ傘下にある大阪取引所は、東京商品取引所から金や銀などの貴金属や、とうもろこしやゴムなどの先物の大半を移し、27日、「総合取引所」としての初日の取り引きが行われました。

取引所のボードには新たに金の先物価格が表示され、取り引きの中心となっている来年6月ものの終値は最高値を更新しました。

新型コロナウイルスの感染が再び拡大していることで、安全な資産とされる金を買う動きが強まったためです。

先物の大半が大阪取引所に移されたことで、投資家にとっては1つの口座でさまざまな先物を手軽に売買できるようになります。

こうした「総合取引所」は欧米ではすでに主流で、巨額の投資資金を呼び込む原動力になっています。

取り引き終了後、大阪取引所の山道裕己社長は記者会見で「誰もが安心かつ容易に取り引きできる取引所の実現に向けて、全力で取り組んでいきたい」と述べました。

国内初の「総合取引所」が誕生したことで、取り引き規模の拡大がどこまで図られるか、注目されます。

出遅れ日本の巻き返しなるか

日本の株式市場や外国為替市場は世界の主要市場に位置づけられていますが、商品の先物市場は規模が小さく、拡大を続ける海外市場から遅れをとっています。

日本取引所グループによりますと、金属や農産物などの先物取引の出来高を、取り引き単位の「枚数」で比較すると、去年はアメリカのニューヨークやシカゴの取引所を束ねる「CMEグループ」が11億3200万、アメリカやイギリス・ロンドンの取引所を傘下にもつ「インターコンチネンタル取引所グループ」が7億7500万、香港取引所が1億7600万だったのに対して、日本取引所グループは1900万にとどまっています。

欧米や香港の取引所が世界の投資家から多くの投資マネーを集め、日本は大きく出遅れています。

また、世界全体でみても去年の出来高は72億2100万で、2005年の10倍近くに増えました。

国際情勢や異常気象によって原油や穀物などの価格が高騰するリスクに備え、先物での取り引きが活発になっているのです。

しかし、日本の去年の出来高は逆に2005年の1億1300万からおよそ6分の1に縮小しています。

日本取引所グループとしては、株式の先物などと一緒に売買できる総合取引所を作ることで利便性を高め、投資マネーを呼び込んで巻き返しを図りたい考えです。

一方、取り引き量が多い「原油」や去年取り引きが始まった「電力」の先物は、日頃取り引きをしているのが石油会社や新電力などエネルギー関連の事業者が多いため、今回、統合は見送られました。

海外では、こうした先物も1つの取引所に統合されているため、その対応が今後の焦点になります。

1つの口座でさまざまな取り引き

総合取引所ができることで、投資家にはどんなメリットがあるのでしょうか。

これまでの先物の取り引きでは、日経平均株価や東証株価指数に関連した先物を売買する場合と、金や銀といった貴金属や、とうもろこしや小豆など農産物の先物を売買する場合とでは、取引所が異なっていたため、投資家は別々の口座を用意する必要がありました。

今回、総合取引所になるのに伴い、投資家は1つの口座でさまざまな先物を取り引きできるようになります。

東証株価指数に関連する先物も金やとうもろこしの先物も、1つの口座の中で損益を合算できるため、資産の管理がしやすくなるというメリットがあるということです。

このところ、金の価格が最高値の更新を続けていますが、個人の顧客を多くもつ、インターネット専業の証券会社が株式などとともに、こうした金の先物などの取り扱いを始めれば、取り引きに参加する個人が増え、市場全体が活性化する可能性もあります。

先物取引は価格が大きく変動するリスクもありますが、市場関係者の間では、売り手と買い手が増えれば価格の安定にもつながり、取り引きにより参加しやすくなるのではないかという期待も広がっています。

先物取引のすそ野拡大に期待

総合取引所のスタートで、農産物の先物取引のすそ野が広がることを期待する人たちもいます。

東京 日本橋にある先物取引の仲介業者「北辰物産」は、個人の投資家や専門商社など5000を超える顧客の先物取引を仲介しています。

大阪取引所が「総合取引所」としてスタートした27日は、顧客からの問い合わせがふだんの3倍以上に増え、従業員が対応に追われていました。

この会社では「原油」や「金」のほか、「とうもろこし」の先物取引も仲介しています。

とうもろこしの先物価格は、主な産地となっているアメリカの生産状況に左右されるほか、国内市場で取り引きが少なく価格の変動が大きくなりがちでした。

会社は、総合取引所のスタートで大口の機関投資家が、とうもろこしなどの農産物の先物を活発に売り買いするようになれば、不安定な値動きが減り、個人の投資家も取り引きに参加しやすくなるのではないかと期待しています。

「北辰物産」の甲地芳章取締役は「1つのグループの中であらゆる金融商品を取り扱う分かりやすい市場になる。今まで『先物取引は分かりにくい』と思っていた人が分かりやすく感じ、参入しやすくなると思う」と話していました。

専門家「やっと追いついた」

大阪で総合取引所の取り引きがスタートしたことについて、日本総合研究所の石川智久上席主任研究員は「世界中で証券取引所と先物を扱う取引所の統合が進むなか、日本はその流れにやっと追いついた形だ。東京が総合的な金融都市、大阪は先物に特化した都市として打ち出し、東京はアメリカのニューヨークのような拠点、大阪はシカゴのような拠点だと世界にPRする戦略も重要になるのではないか」と話していました。

また「個人投資家にとって先物の取り引きはこれまで敷居が高かったが、市場規模の拡大によって使いやすくなる面もある。機関投資家や個人投資家の双方に目配りした商品や、取引所の設計が求められる」と指摘しています。