大リーグ 約4か月遅れて無観客で開幕 新型コロナ影響

大リーグ 約4か月遅れて無観客で開幕 新型コロナ影響
新型コロナウイルスの影響で開幕が延期されていた大リーグは23日、ヤンキースとナショナルズの対戦で、当初の予定からおよそ4か月遅れて開幕しました。
大リーグはことし3月26日に開幕する予定でしたが、アメリカで新型コロナウイルスの感染が急速に広がった影響で、4か月近く遅れて23日に開幕しました。

開幕日の最初の試合は昨シーズン、ワールドシリーズを制したナショナルズが、本拠地ワシントンでヤンキースと対戦しました。

試合は無観客で行われ、試合前のセレモニーでは、両チームの選手たちが全員で黒い幕を持ってグラウンドにひざを突き、人種差別を無くす活動への連帯を示しました。

また、始球式は、アメリカのトランプ大統領の下で感染対策を担当しているファウチ博士が務め、レギュラーシーズンの試合数が162から60に削減された前例のないシーズンを象徴するシーンになりました。

その後の試合で、ナショナルズはサイ・ヤング賞を3回獲得しているシャーザー投手が、ヤンキースは昨シーズン所属していたアストロズで20勝を挙げたコール投手がそれぞれ先発しました。

ヤンキースは、4番のスタントン選手がシャーザー投手から1回にホームラン、5回にタイムリーヒットを打つなどして、3点をリードしました。

試合は雨のため6回途中でコールドゲームになり、ヤンキースが4対1で勝ちました。

試合中、ベンチにいる監督やコーチなどは、マスクを着けて一定の距離を取っていたほか、選手もホームランが出たあとにハイタッチをせずに喜びを表すなど、感染防止のために大リーグ機構が定めたルールに従って試合が進められました。

「とうとう戻ってきた」大リーグ開幕に歓迎の声

大リーグが当初の予定よりおよそ4か月遅れて開幕したことについて、アメリカのファンからは歓迎する声が聞かれました。

ナショナルズとヤンキースの開幕戦が行われたワシントンの球場では、ナショナルズのグッズを販売している店に、開幕に合わせて応援用の品を買い求めに来るファンの姿がありました。

男性のファンは「グッズを買って、これから仕事の相手をオフィスに招待し、みんなで試合を見ることにしている。球場には入れないが、楽しみます」と話していました。

女性のファンは「感染予防で家に籠もっていても見たいテレビ番組がなかったので、野球がようやく始まって、本当にうれしい。年間チケットを持ってこれまでは毎日のように試合を見にきていたが、みんなが我慢をしているので、私もテレビで試合を見て楽しみます」と話していました。

さらに「野球がなくてはいられないからうれしい。無観客での試合開催は厳しい対策だとは思うが正しい判断だ」と、感染予防の対策に理解を示す男性ファンもいました。

また、ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズなどのアメリカの主要な新聞や大衆紙などは大リーグ開幕を大きく伝えていて、このうちニューヨーク・ポストは「119日遅れて野球がとうとう戻ってきた」という見出しとともにシーズン開幕を歓迎しました。

開幕日にスター選手がコロナ感染確認

ナショナルズは開幕戦を迎えた23日に、昨シーズン、ワールドシリーズ制覇の原動力となったホアン・ソト選手が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示したことを明らかにしました。

21歳で外野手のソト選手は、大リーグ1年目だったおととしは打率2割9分2厘でホームラン22本、70打点をマークしました。去年は打率こそ2割8分2厘とおととしを下回りましたが、ホームランは34本、打点が110と一気に躍進し、大リーグ全体でもスター選手になりました。

今シーズンも活躍が期待されていましたが、ナショナルズのデイブ・マルティネス監督は23日の開幕戦前の会見で、ソト選手が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示したことを明らかにしたうえで、「感染したと知って衝撃を受けた。タイミングが本当に悪いが、回復して早く戻ってくることを願っている」と話しました。

球団によりますと、ソト選手に症状はなく、キャンプ中を含めた4回の検査では陰性だったということですが、開幕直前の検査で陽性反応が出たということです。

今季限定 特別ルールを紹介

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大リーグはレギュラーシーズンの試合数が162から60に大幅に削減されて行われ、今シーズン限定の特別なルールが設けられています。

▽60試合は同地区対戦のみ
大リーグではこれまで、各チームが、所属する地区をまたいで対戦が行われてきましたが、感染防止の一環として、移動距離を少なくする目的で、西部・中部・東部のそれぞれの地区内だけに限ってレギュラーシーズンの試合が行われます。
各チームは同じリーグどうしで40試合、ほかのリーグのチームとは20試合を行います。

▽プレーオフは16チームに
また、大リーグ機構と選手会は開幕戦が行われた23日、プレーオフの出場枠をこれまでの10チームから16チームに広げることで合意しました。
アメリカンリーグとナショナルリーグとも、それぞれ3つの地区で1位と2位になったチームはプレーオフに進みます。
この12チームに加えて、両リーグの各地区で3位以下のチームのうち勝率で上から2番目までのチーム、合わせて4チームがプレーオフに進む形式になる予定です。
今回の形式では、大リーグ30球団のうち半分以上の16チームがプレーオフに進むことになり、ファンの減少を抑えるともに、球団の収益増加のため、プレーオフ枠の拡大を望む選手や球団の声を反映した形になりました。

▽タイブレーク制の導入
試合では感染防止のために新たなルールも導入されます。
大リーグでは、これまで引き分けはなく、延長に入ると勝敗が決まるまで続けられてきましたが、今シーズンのレギュラーシーズンでは試合時間の短縮のため、延長10回からは二塁にランナーを置いて始めるタイブレーク制が導入されます。

▽ナ・リーグでも指名打者制
また、選手のけがを防ぐ一環として、アメリカンリーグで採用されている指名打者制が大リーグの歴史で初めて、ナショナルリーグでも採用されます。
指名打者制があることで、各チームは主力の選手をバッターとしてのみ起用して休養を与えることができるほか、これまで走塁などでけが人が出ていたピッチャーのけがを防ぐ目的もあります。

▽審判などへの抗議は即退場
感染を防ぐため、監督や選手が自分の定位置から離れて、審判や対戦相手におよそ2メートル以内まで近寄って抗議をした場合や必要のない身体的な接触をした場合は退場になり、罰金や出場停止の処分を受けます。

▽唾吐き禁止
球場内で唾を吐くことが禁止されるのに伴い、ひまわりの種やかみたばこなどを口に入れることも禁止されます。
一方、ガムをかむことは、唾を吐かないかぎり認められています。

▽投手はぬれた布の使用可
ピッチャーがボールを投げる際に、滑りにくくするために指をなめるケースがありますが、感染防止のため代替の手段として、ピッチャーは、ぬれた小さな布をポケットに入れてマウンドに上がることが認められています。

▽ワンポイント起用が不可に
このほか、今シーズンからは、いわゆるワンポイントでの投手起用を禁止するルールが適用されます。
新しいルールでは、先発と中継ぎのピッチャーはけがなどのアクシデントがないかぎり、最低でも3人のバッターと対戦する必要があります。