最低賃金引き上げ 議論を再開 労使に依然隔たり

最低賃金引き上げ 議論を再開 労使に依然隔たり
今年度の最低賃金の引き上げについて議論する厚生労働省の審議会は、20日深夜に中断した話し合いを午後6時から再開しました。ことしは新型コロナウイルスの影響をどのように評価するのかなどをめぐって労使の主張の隔たりが大きく、賃上げの流れを継続できるのかが焦点となっています。
最低賃金は企業が従業員に最低限支払わなければならない賃金で、毎年、労使が参加する厚生労働省の審議会が引き上げ額の目安を示し、それをもとに都道府県ごとに決められます。

20日は4回目の審議会が開かれ、とりまとめを目指して詰めの議論が行われましたが、感染の不安を抱えながら働く労働者に報いるためにも賃上げの継続を求める労働組合側と、引き上げは中小企業を追い込むとして凍結を求める経営者側との主張の隔たりは大きく、開始からおよそ7時間半後の深夜に議論は中断されました。

厚生労働省によりますと、4回でまとめることができなかったのは平成26年以来、6年ぶりだということです。

審議会は午後6時から議論を再開し、とりまとめを目指しています。

最低賃金をめぐっては政府が全国平均で時給1000円を早期に達成するという目標を掲げ、昨年度まで4年連続で3%程度の大幅な引き上げが行われてきましたが、ことしは新型コロナウイルスの影響が幅広い産業に広がる中、賃上げの流れを継続できるのかが焦点となっています。

労組側 時給800円以下の県なくし 都市部は1000円以上に

最低賃金の引き上げをめぐる労使の主張は、新型コロナウイルスの影響をどのように評価し、反映させていくのかという点で大きな隔たりがあります。

労働組合側は、感染の不安を抱えながら働く労働者に報いるためにも賃上げの流れを継続する必要があると訴えています。具体的には、最低賃金が時給800円以下の県をなくすこと、水準が高い地域の府県で1000円以上とすることを求めています。

最低賃金が時給800円以下の県は合わせて17県で、最も低いのは青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄で790円、また、徳島で793円、福島で798円となっています。

水準が高い都市部では、東京と神奈川が去年1000円を超えましたが、埼玉は926円、千葉は923円、愛知は926円、大阪は964円となっていて、1000円を下回っています。

一方、経営者側は、ことしは新型コロナウイルスの第2波、第3波がいつ来るのか、また、どのような影響があるのか見通しがたたない緊急事態だとしたうえで、最低賃金を引き上げると中小企業を追い込むことになるとして、雇用を維持するためにも引き上げを凍結すべきだと訴えています。

最低賃金で働く警備員は

新型コロナウイルスの感染リスクにさらされながら最低賃金と同じ時給で働く58歳の男性は、ことしも引き上げてほしいと訴えています。

男性は都内の企業で契約社員の警備員として働き、今の時給は都の最低賃金と同じ1013円。

この10年、同じ職場で働き、最低賃金の引き上げに合わせて時給が上がったことで何とか生活を維持してきましたが、ウイルスの影響で時給が上がらなくなれば、その分、生活が苦しくなると感じています。

男性は「最低賃金が引き上げられなかったら、食べるものを切り詰めるとか着る物をギリギリまで使うとか、生活を切り詰める必要があると思います。少しでも上がってくれればおいしいものを食べるとかゆとりが出るので、それすらなくなると悲しくなります」と話しています。

さらに、ウイルスの感染が拡大した3月下旬ごろからは、企業を訪れた人に熱がないか確認する業務が増えました。
相手に直接触れることはありませんが、感染のリスクを感じているということです。

男性は「できるだけ手を伸ばして離れてやっていますが、相手の額に体温計を当てるというのはストレスがあります。ウイルスの影響で仕事が大変になっているのに、賃金が変わらないというのはおかしいと思います。また緊急事態宣言が出たら、今度こそ仕事がなくなる不安があるので、最低賃金の引き上げは必要だと思う」と話しています。