感染拡大防ぎながら旅行楽しむには…筑波大がシミュレーション

感染拡大防ぎながら旅行楽しむには…筑波大がシミュレーション
22日から「Go Toトラベル」が東京発着以外の旅行を対象に始まります。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら旅行を楽しむにはどうすればいいのか、筑波大学のグループがAI=人工知能を使ってシミュレーションを行ったところ、カギとなるのは濃厚接触者の追跡だという結果になりました。
このシミュレーションは筑波大学の倉橋節也教授らのグループが行ったものです。シミュレーションでは実際の観光地をモデルにした架空の街という想定で、現在の全国的な感染状況も考慮して、この街には、もともと1人だけ感染者がいると仮定しました。

そのうえで観光客を一切受け入れなかった場合と、観光客を受け入れ訪れる人たちの中に毎週1人感染者がいた場合で、この街の病院に入院する重症患者の数に変化があるかを試算しました。

その結果、観光客を受け入れた場合は、マスクの着用やホテルや観光施設に透明なカーテンを設置するなど接触を減らす対策を徹底しても重症患者の数は1.67倍に増えました。

ただ、こうした対策に加えて、接触確認アプリなどを活用して感染した人と濃厚接触した人を80%の確率で見つけ出し、検査などができれば、重症患者の数は1.27倍の増加にとどまるという結果になったということです。

濃厚接触者の追跡をより徹底できれば、重症患者の数はさらに減るとみられるということで、倉橋教授は「濃厚接触者の追跡がリスクを下げるカギとなることが分かった。アプリなど有効な対策を組み合わせて徹底することが大切だ」と話しています。

シミュレーションの詳細

シミュレーションは、実際の観光地をモデルに、ホテルや観光施設、それに商業施設などがある架空の街を想定して行われました。

シミュレーションでは、一般的な新型コロナウイルス対策としていわゆる「3密」を避ける、マスクの着用、それにホテルや商業施設に透明なカーテンを設置するなどの対策を徹底することで人と人との接触を最大で75%減らすことができると想定しています。

また、この街には、全国の感染状況などを考慮して、もともと感染者が1人いることとしました。

新型ウイルスがどの程度、感染を広げるかや重症化する人の割合などはこれまでの研究で分かってきたデータを参考にし、この街の病院に入院する重症患者の数の違いで影響を評価しました。

シミュレーションでは、訪れる観光客の中に毎週1人の割合で感染者が含まれていた場合と、観光客を一切受け入れなかった場合の違いを比べました。

その結果、観光客に対する対策を全くとらない場合、重症患者の数は、観光客を受け入れない場合に比べて2.12倍に増えました。

一般的な対策で人と人との接触を75%削減しても1.67倍までしか下がりませんでした。

一方、こうした対策に加えて、感染した人と濃厚接触した人を50%の確率で見つけ出し、検査を受けてもらうなどの対策がとれれば、重症患者の数は1.33倍まで下がりました。

さらに濃厚接触者を80%の確率で追跡できれば、1.27倍まで下がるという結果になりました。

グループによりますと、濃厚接触者の追跡には接触確認アプリなどの活用が有効だと考えられるということです。

接触確認アプリの活用が進めば、濃厚接触者の中から感染者を見つけ出し、さらにその濃厚接触者も追跡して検査などの対応ができるようになることから、その場合は旅行者を受け入れなかった場合とほとんど変わらない1.06倍まで下がるという結果になったということです。

専門家「シミュレーションで効果確認を」

シミュレーションを行った筑波大学の倉橋節也教授は「シミュレーションの結果、現在、保健所や自治体が行っている濃厚接触者を捜し出す対策の効果が大きいことが分かった。対策には一日でも早く濃厚接触者を探すことが重要で接触確認アプリなどを活用して瞬時に把握できれば大きなアドバンテージになる。観光地ですべての人にPCR検査を行うのは人員的にも難しいが、濃厚接触者を早く見つけてPCR検査を行うことで、同様の効果があると考えられる。今後、経済と感染予防を両立させるためにも、こうしたシミュレーションで効果を確認していくことが重要になる」と話しています。