新宿 劇場の集団感染 抗体検査で「陰性証明」できない 専門家

新宿 劇場の集団感染 抗体検査で「陰性証明」できない 専門家
東京 新宿区の劇場で行われた舞台公演で発生した新型コロナウイルスの集団感染について、主催者は、観客や出演者など合わせて37人が13日までに新型コロナウイルスに感染していることを確認したと明らかにしました。出演者の1人が抗体検査で陰性だったことから出演したと説明していることについて、専門家は陰性になっても、現時点でウイルスに感染していないことを示す、いわば「陰性証明」のように使うことはできないと強調します。
主催者は、体調不良を訴えた出演者の1人について、業界団体のガイドラインで自宅待機の目安としている37度5分を下回っていたほか、抗体検査では陰性だったことから出演したと説明しています。

これについて、日本医師会の有識者会議のメンバーで、抗体検査に詳しい横浜市立大学の石川義弘副学長は、抗体検査は過去に感染したことがあるかどうか調べるもので、陰性になっても、現時点でウイルスに感染していないことを示す、いわば「陰性証明」のように使うことはできないと強調します。

石川副学長は「ウイルスに感染してから体内に抗体ができるまでには時間がかかる。抗体検査で陰性でも、検査の時点で抗体がないことを示すだけで、ウイルスに感染していないと証明することはできない。感染していない『お墨付き』のように、誤ってとらえてしまうと対策をなにも取らなくなって、かえって多くの人に感染させてしまう結果になりかねない」と注意を促しました。

抗体検査を行っている民間の医療機関は多いものの、現時点で国が承認している抗体検査キットはありません。

石川副学長は「抗体検査を行う医療機関は、検査の精度や本来の目的などについて、検査を受ける人に正しい知識をしっかり伝える必要がある」と指摘しています。

抗体検査キット 出荷量はピーク時の半分以下

海外製の抗体検査キットを日本に輸入し、販売している医薬品の商社など複数の企業に取材したところ、いずれの企業もこれまでに民間のクリニックや企業など向けに数万キットの規模で出荷してきたということです。

出荷量については、販売を始めたことし4月ごろから5月までがピークで、その後、少しずつ減り、現在はピーク時の半分以下程度になっているということです。