中国 民主化運動 劉暁波氏 “思想の原点” 講演テープ見つかる

中国 民主化運動 劉暁波氏 “思想の原点” 講演テープ見つかる
中国の民主化運動の象徴的な存在で、服役中にノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏が、1989年の天安門事件の前に北京の大学で講演した時のものとみられる録音テープが見つかりました。専門家は、民主化を訴え続けた劉氏の思想の原点が記録された貴重な資料だとしています。
見つかった2本のテープには、劉暁波氏の肉声がおよそ2時間にわたって収められ、劉氏の知人の話などから、天安門事件が起きる3年前の1986年に、北京の清華大学で行った講演の様子を録音したものとみられています。

この中で劉氏は「中国の封建文化は人間性を最も破壊してきた。人々は『人民』という抽象的なことばで神聖化されているが、実際にはすべての権利は奪われている」と述べて、封建的な中国社会の在り方を痛烈に批判しています。

そのうえで「個人の権利は『民主』と『法治』によってこそ保障される。人々が為政者の人格とモラルにすがり、権力が『法治』と『民主』を無視すれば、必ず専制に走る。一人一人が自分に忠実に生きれば、中国は天地がひっくり返るような変化が起きるだろう」と述べて、中国の民主化に向けては個人の自由を追求することが大切だと訴えています。

劉氏は1989年、天安門広場に集まった学生たちの民主化運動に参加し、最後まで広場にとどまって非暴力での抵抗を呼びかけ、逮捕されました。

天安門事件のあとも一貫して中国の民主化を訴え続けた劉氏は、服役中の2010年にノーベル平和賞を受賞し、3年前、61歳で亡くなりました。

テープの中で劉氏は「私が死んで肉体が滅んでも、私の思想と魂が人々の心の中に生き続けることを願う」と述べていて、自由の身を奪われながらも、生涯、信念を貫いた姿勢がうかがえます。

「自由は自分たちで勝ち取るもの」現代に伝える

生前の劉暁波氏と親交があり、劉氏に関する数多くの著作がある、神戸大学非常勤講師で作家の劉燕子さんは「1980年代は劉氏の思想の出発点であり、当時の録音テープが見つかったことはとても意義深い」と話しています。

テープの内容については「80年代後半は、短期間ではあるが中国で最も思想が解放された時代だった。若き教師としての劉氏は学生たちを実の弟のように見なして、昼夜問わず議論し合ってきた。当時のテープを聞くと、今の言論空間がどれほど狭まっているかを実感する。中国では、長く国の指導者への個人崇拝や国家への絶対的な服従が強調されてきたが、劉氏は人間の絶対的な自由と独立を至上の価値として、学生たちに伝えようとしていたことが分かる。同時に、個人の自由だけではなく、他者の自由を理解し尊重することの大切さも問題提起している」と話しています。

そのうえで「これは現代に生きる私たちへの大きなメッセージだ。日本で生活すると自由は空気のような存在だが、なくなってしまうと人間は窒息させられる。自由は上から押しつけられるものではなく、自分たちの手で勝ち取るものだということを伝えているのではないか」と話しています。

保管していたのは北京に留学した都内の男性

見つかったテープは、都内で飲食店を経営する男性がおよそ30年にわたって保管していました。

男性によりますと、1980年代後半に北京に留学していた際、友人の中国人の学生からプレゼントとして手渡されたということです。

男性は「表向きには、共産党への批判や民主化を口にするのはタブーな時代だったので、気心の合う学生の間で回しながら聞いていたようだ。日本に持ち帰って世に出してほしいと考えたのか、あるいは中国語の勉強の良い材料にと考えて私に託したのかはわからない」と話しています。