ウィーン少年合唱団が存続の危機 新型コロナで財政難

ウィーン少年合唱団が存続の危機 新型コロナで財政難
「天使の歌声」として知られるオーストリアのウィーン少年合唱団は、新型コロナウイルスの影響で、ことし3月以降の公演がすべて中止となったことから財政難に陥り、存続の危機に立たされています。
ウィーン少年合唱団は、オーストリアはもとより、アメリカや日本など20の国と地域から集まった声変わり前の9歳から14歳までの少年100人で構成される合唱団で、澄み渡る歌声はユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

合唱団は4つのグループに分かれ、国内外で年間300の公演を行い、運営費の7割以上を賄ってきましたが、新型コロナウイルスの影響でことし3月以降のすべての公演が中止となり、100万ユーロ、日本円でおよそ1億2000万円の収入を失ったということです。

この状況が続けば、ことし10月には運営費が底をついて経営が破綻するおそれもあることから、合唱団ではウェブサイトや新聞の広告などで募金を呼びかけるほか、政府やウィーン市に財政支援を求めています。

合唱団を率いるゲラルト・ウィルト芸術監督は、NHKのインタビューに対し「政府から支援が得られなければ、ことし10月以降は、従業員の給与も払えない。500年以上の歴史を誇る、この合唱団を何としてでも守らねばならない」と危機感を募らせています。
一方、メンバーの少年たちは、ことし5月から学校で歌の練習を再開しましたが、感染対策として密集を避けるため、プールで発声練習やオンラインでレッスンを行っています。

合唱団は、活動再開後の最初の海外公演として、ことし9月に日本を訪れる予定で、この公演が解散の危機を乗り越える起爆剤となるか、期待が集まっています。

500年以上の歴史 ユネスコの無形文化遺産

ウィーン少年合唱団は15世紀、ハプスブルク家出身の神聖ローマ帝国の皇帝が宮廷の聖歌隊として設立した合唱団です。

500年以上の歴史を誇り、2017年には、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。合唱団のメンバー、100人の少年はウィーン市内のアウガルテン宮殿にある全寮制の学校に通いながら歌の練習をしています。

合唱団は日本でも人気で、毎年来日して公演が開かれているほか、東日本大震災の復興支援コンサートでは「花は咲く」を歌い、日本とオーストリアが外交関係を樹立して150年を迎えた去年は、天皇皇后両陛下の前でも歌を披露しました。

合唱団は、政府からの支援は受けず、非営利団体として運営され、運営費の7割は、公演の収入によって支えられているということです。