ASEAN首脳会議始まる 中国への強い姿勢打ち出すか注目

ASEAN首脳会議始まる 中国への強い姿勢打ち出すか注目
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2か月余り延期されていたASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議が26日、テレビ会議形式で始まりました。各国が感染対策に追われる中でも、南シナ海での活動を活発化させる中国に対し、ASEANとしてどのような姿勢を打ち出すか注目されます。
ASEAN首脳会議は、当初、ことし4月にベトナム中部のダナンで開かれる予定でしたが、感染拡大の影響で加盟各国が往来を制限する中、26日、テレビ会議形式で開催されることになりました。

会議では、感染拡大で大きな打撃を受ける域内の経済への対応や、一部の加盟国が中国と領有権を争う南シナ海の問題などについて議論される見通しです。

このうち、南シナ海をめぐっては、各国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中、中国は軍事拠点化を進める島々に新たな行政区を設置したり、マレーシア沖に海洋調査船を派遣したりするなど活動を活発化させています。

中国との対立が続く議長国ベトナムとしては、首脳会議を通じてこうした中国の動きをけん制したい考えですが、カンボジアなど中国との関係を重視する一部の加盟国もある中で、ASEANとしてどのような姿勢を打ち出すか注目されます。

南シナ海をめぐる動き

各国が新型コロナウイルスの感染拡大への対応に追われる中、中国は依然として南シナ海で海洋進出の動きを活発化させています。

中国政府は4月18日、各国と領有権をめぐる争いのある西沙諸島、英語名・パラセル諸島などと、南沙諸島、英語名・スプラトリー諸島をそれぞれ管轄する新たな行政区を設置すると発表しました。

また、ベトナム政府によりますと4月から今月にかけて、南シナ海でベトナムの漁船が中国海警局の船に沈没させられたり、中国の船に襲撃されて漁獲物や機材を奪われたりする被害が相次いで発生したということです。

さらにアメリカのシンクタンクCSIS=戦略国際問題研究所によりますと、4月下旬から中国の海洋調査船がマレーシアのEEZ=排他的経済水域内で調査活動を行っていたということです。

こうした情勢を受けて、中国との対立を先鋭化させてきたベトナムだけでなく、これまで経済面での関係を重視して直接的な対立を避けてきたASEANの国々の中でも、中国への不信感から外交姿勢を転換する動きが顕著になっています。

フィリピン政府は、フィリピンに派遣されるアメリカ軍の法的な地位を定めた協定を破棄すると一方的に通告した決定について、今月2日、事実上、見直し、これまでぎくしゃくしていたアメリカとの関係を重視する姿勢を示しました。

さらに今月9日には、南沙諸島の島の1つで建設を進めてきた軍の船着き場が完成したと発表し、国防省や軍のトップが参加した式典の様子を地元メディアに公開。今後、軍用機が離着陸できる滑走路を整備する計画も大々的に表明しました。

また、インドネシアの外相は先月6日の会見で「新型コロナウイルスとの戦いで各国の協力が極めて重要な時に緊張を高めかねない」として懸念を表明。その後、中国が南シナ海で主張する領有権は到底認められないとする文書を国連に対して送付したことを明らかにしています。

ベトナムの専門家は強い警戒感

南シナ海で、中国が活動を活発化させていることについて、ベトナム外交学院南シナ海研究所のグエン・フン・ソン所長は「行政区の指定などこの数年の間には見られなかった新たな動きも出ていて、南シナ海での存在感の拡大をねらう中国が新型コロナウイルスの感染拡大を利用して、戦略的に優位な立場を築こうとしている可能性がある」と述べ、中国に対して強い警戒感を示しました。

そのうえで「ベトナムは議長国として、南シナ海の平和と安定こそ、ASEAN共通の利益であることを掲げ、加盟国の協力が不可欠だという認識を醸成していかなければならない」と指摘し、中国寄りの外交姿勢を示す加盟国とも連携していく必要性を強調しました。