会場に来ないよう呼びかけ コロナ対策の株主総会

会場に来ないよう呼びかけ コロナ対策の株主総会
25日と26日は1000を超える上場企業が、各地で株主総会を開きます。新型コロナウイルス対策で、ほとんどの企業が会場に来ないよう呼びかけ、手土産などを配ることもやめ、例年とは大きく様変わりしています。
東京証券取引所のまとめでは、3月期決算の上場企業のおよそ半分の1250社が、25日と26日に株主総会を開きます。

しかし、ことしは新型コロナウイルス対策のため、ほとんどの企業が株主に会場には来ずに、議案の賛否は、郵送やインターネットで対応してほしいと呼びかけています。

東京都内のホテルで総会を開いた食品メーカー「ブルドックソース」も、座席数を例年の3分の1ほどに減らしました。

また、大勢の株主に会場に来てもらうために、例年、ソースの詰め合わせの手土産を用意していましたが、ことしは配るのを取りやめました。

その結果、出席した株主は13人で、質問もなく10分ほどで終了しました。

総会に出席した78歳の株主の男性は「新型コロナウイルスの影響に加えて天気も悪かったので、消極的になった人が多かったのでしょう」と話していました。

この男性の妻は「いつも手土産を楽しみにしていたので残念です」と話していました。

ほかの大手企業の多くの株主総会も、出席者が大きく減り、総会の時間も短くなっています。

株主の間には、やむをえない対応だと受け止めつつも、年に1度の経営陣との対話の機会が制限されるという声もあります。

「議案への賛否は事前に郵送などで」

株主総会の事務をサポートする三菱UFJ信託銀行によりますと、ことしは新型コロナウイルス対策として、3月期決算の企業のほとんどが株主に対して総会の会場に来るのは控え、議案への賛否は郵送などで事前に示してほしいと呼びかけています。

また今月総会を開く企業で、株主への案内文が確認できた2344社のうち、総会への出席を促すため、例年、会場で配っていた手土産をことしは取りやめるという企業は59%に当たる1394社に上っています。

一方、会場に来なかった株主向けの対応として、
▽総会の様子をインターネットで動画配信するのは、4%余りの113社、
▽ホームページなどで事前に株主からの質問を受け付けた企業は、2%余りの63社、
さらに、
▽インターネットを使って議案への賛否を示したり、経営陣に質問したりする仕組みをつくった会社は、9社と、少数にとどまっています。

新しい生活様式が広がる中、企業にとっては、株主総会にオンラインをどのように取り入れていくかが課題になりそうです。

「株主との対話を確保」バーチャル株主総会

感染防止の対策を取りながらも、株主との対話の機会は確保しようと、新しい仕組みを導入した企業もあります。

インターネットの広告ビジネスを手がける「アドウェイズ」は、新型コロナウイルスの対策として、株主総会の会場をこれまでより小さくして、株主には会場に来ないよう呼びかけました。

一方、会場に来ない株主からも、さまざまな意見を聞きたいとして「バーチャル株主総会」と呼ばれる新しい仕組みを取り入れました。

株主総会の会場と、自宅などにいる株主をオンラインで結び、議案への賛否を示す議決権を行使したり、経営陣に質問したりできます。

この仕組みならば、自宅にいる株主も株主総会に正式に出席したことになるということです。

23日に開かれた株主総会の会場で、壇上にいたのは社長ひとりで、株主は9人。

ほかの役員は全員がビデオ会議システムで参加、33人の株主が自宅などからオンラインで出席しました。

株主はオンラインを通じて、経営陣に今後の事業方針を質問し、議案についての賛否を示していました。

会社によりますと、不測の事態に備えてオンラインの仕組みには、途切れるおそれもある無線通信ではなく有線を使い、何度も事前のテストを繰り返したということです。

準備の時間や費用がかかりましたが、会社では新型コロナウイルスで事業の環境が大きく変化しているときこそ、株主との対話が重要になるとして、今後もこの仕組みは続ける考えです。

アドウェイズの岡村陽久社長は「年1回の株主とのコミュニケーションの場として株主総会は非常に大切だ。『総会はリアルでやるもの』という固定観念があったが、感染対策をきっかけにバーチャル株主総会に挑戦することができた。来年以降も、より多くの株主に総会に参加してもらえるよう環境づくりをしたい」と話していました。