東京島しょ部 観光再開と感染対策の両立に苦慮 新型コロナ

東京島しょ部 観光再開と感染対策の両立に苦慮 新型コロナ
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移動の自粛が全国的に緩和されていますが、東京の島しょ部では医療体制がぜい弱な中で観光業をどう再開していくか苦慮しています。
伊豆諸島と小笠原諸島は、島によっては診療所が1つしかないなど、医療体制がぜい弱で、新型コロナウイルスの感染者が出た場合には対応が難しくなることから、不要不急の来島を自粛するよう要請してきました。

一方で、来島者が減ることで基幹産業とも言える観光業に大きな打撃となり、島民の生活にも影響が出ていました。

こうした中で先週、移動の自粛が全国的に解除され、島しょ部の自治体の中には来島の自粛を一部緩和させる動きも出ていますが、「観光業の再開」と「感染対策」の両立をいかに進めるか苦慮しています。

このうち三宅島観光協会では感染防止策として、来島するにあたって観光客向けのガイドラインを作ったほか、非接触型の体温計を大量導入し、観光客が立ち寄る飲食店や民宿、商店などに設置するなどしています。

一方、小笠原村では観光で来島する場合には2週間以上滞在できる人のみを受け入れていて、初めの2週間は観光などせず宿泊先に滞在して健康の状態を観察するよう呼びかけています。

三宅島は全面解除で8つのお願い ガイドラインを作成

伊豆諸島の三宅島では、およそ2か月の間、来島の自粛を呼びかけていましたが、全国的に移動自粛が緩和された今月19日から全面的に解除しました。

三宅島観光協会では感染防止策として来島するにあたって観光客向けのガイドラインを作り「8つ」のお願いと協力をホームページに掲載しています。

具体的には、体調不良の人は来島を見合わせること、宿泊を予約する際に直近の行動や体調について聞くことがあること、こまめに体温のチェックや、消毒・手洗いを実施することなど、来島者への協力を呼びかけています。

また、島内の民宿を再開するにあたって、経営者を集めて感染の予防対策を徹底するように講習会を行ったということです。

さらに、非接触型の体温計を大量導入し、観光客が立ち寄る飲食店や民宿、商店などに設置するなどの対策をしました。

三宅島観光協会の谷井重夫事務局長は、「観光客に対してもそうだが、事業者も身を守っていかなければならない。夏のシーズンに早く観光客に戻ってきてほしいという思いはあるが、まだまだ先が見えないので、慎重にやっていきたい」と話していました。

小笠原村は来月2日まで来島自粛 2週間以上滞在のみ受け入れ

新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、小笠原村では少なくとも来月2日まで来島の自粛を求めています。

そのうえで、6月中は観光で来島する場合には2週間以上滞在できる人のみを受け入れていて、初めの2週間は観光などせず宿泊先に滞在して健康の状態を観察するよう呼びかけています。

ただ、小笠原村にはPCR検査ができる医療機関はないなど医療体制がぜい弱なほか、感染の疑いがある人や濃厚接触者に一時的に滞在してもらうための施設もないのが現状です。

このため感染の疑いがある人が出た場合には、自衛隊に協力を求めてヘリコプターや飛行機を乗り継ぎ、およそ8時間かけて本土へ搬送してもらう必要があります。

一方で、村の宿泊施設や飲食店などでは収入がほとんどない状態が続き、事業者は自粛を解除して観光客が戻ることを待ち望む一方で、感染対策をどのように進めていくのか、課題に感じているといいます。

小笠原村で民宿を経営する金子隆さんは、「感染疑いの方が出た場合には自衛隊に搬送してもらうなど一大事になってしまいます。経済活動が再開される期待もありますが、これまで来島する人も、感染する人もいなかった中で、多くの人が訪れるようになることの不安も感じています」と話していました。

御蔵島村 今月末まで来島自粛呼びかけ

観光目的の来島の自粛を緩和し始めている島がある一方で東京の島しょ部で唯一の感染者が確認された御蔵島村では、引き続き今月30日まで来島の自粛を呼びかけています。

御蔵島村によりますと、来島の自粛をうけ、現在、村内に12ある宿泊施設などはすべて休業しているということです。

こうした中、経済的な打撃を少しでも減らそうと、観光客がよく訪れていた飲食店などは島内の人に向け野菜の宅配をするなどして、工夫し始めているということです。

また、御蔵島村は客の減少など自粛の影響を受けた村内の事業者に向けて、最大50万円の給付を行うことにしています。

給付金は東京都の交付金のほか、台風などに備えて村で用意していた災害対策基金の一部を使ってまかなわれるということです。

御蔵島村役場の総務課の中村真也さんは、「御蔵島村は感染者がでたところですので、しっかり準備していきたい。観光をしたいと思われている方には、もうしばらくお待ちしてもらえればと思う。村内の人たちには給付金を使ってもらうことで村全体で一致団結して乗り越えていきたい」と話していました。

ほかの自治体の対応は

島しょ部のほかの自治体では、今月19日に都道府県をまたぐ移動の自粛が緩和されたことをめぐって対応が分かれています。

大島町、利島村、新島村、神津島村、八丈町は22日までに来島の自粛要請を解除しました。

このうち、都心に最も近い大島町では、すでに観光客が増え始めているということです。東京だけでなく静岡から訪れる人もいて、体調を申告してもらうなど水際対策に取り組むことにしています。

利島村では、島内に診療所が1か所しかないことから、慎重に対応する予定です。積極的に観光客へ来島を呼びかけることは考えていないということです。

新島村では、感染への警戒から、いまの段階で開業している宿泊施設は1割にとどまるということです。そのほかの宿泊施設は、今後の状況をみながら来月以降の開業を目指すとしています。

神津島村でも、感染への警戒が強く、年内の休業を決めた宿泊施設も多いということです。また、ことしは海水浴場を開かないことも決めました。

これに対して八丈町では、来月から海水浴場を開く予定です。ただ、感染症に対応した病床が2床に限られることから、飛行機で訪れる観光客の検温などに取り組むことにしています。

青ヶ島村は今月一杯、自粛要請を続けることにしています。青ヶ島村は人口が200人足らずと最も規模が小さく、診療所も1つしかないため、慎重な意見が根強いということです。当面、島内のキャンプ場を閉鎖しほかの島の状況を見ることにしています。