コロナ感染者との濃厚接触を通知 アプリ「COCOA」利用開始

コロナ感染者との濃厚接触を通知 アプリ「COCOA」利用開始
新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した疑いがある場合に通知を受けられるスマートフォン向けのアプリの利用が、19日午後、始まりました。政府は、速やかな検査や感染拡大の防止につながるとして、広く利用を呼びかけています。
このアプリは、「COCOA」という名称です。スマートフォンを持っている人どうしが一定の距離に近づくと、相手のデータを互いに記録し、仮に利用者が新型コロナウイルスに感染した場合は、記録された相手先に濃厚接触の疑いがあると通知する仕組みになっています。

アプリは、19日午後3時すぎから、インターネット上に公開され、スマートフォンの「アプリストア」などから、無料でダウンロードできるようになりました。

このアプリを入れた人どうしが、15分間以上、1メートル以内の距離にいると、接触した相手として記録されます。一方で、電話番号や位置情報など個人の特定につながる情報は記録されないうえ、14日間経過すると接触の情報そのものも削除されるなど、海外で導入されているものに比べて、匿名性が高いということです。

また、感染を通知するかどうかは、感染した人に委ねられ、保健所から知らされた「処理番号」を、本人がアプリに入力してはじめて、接触した人に通知されることになっています。

政府によりますと、この「処理番号」は、メールなどを通じて感染した本人にのみ知らされるため、感染者になりすまして通知するなどの悪用はできない仕組みになっているということです。

政府は、多くの人が利用することで、速やかな検査や感染拡大の防止につながるとして、広く利用を呼びかけています。

有識者検討会合の委員「プライバシー守れるアプリに」

今回、導入された接触確認アプリでは、位置情報や住所、電話番号といった個人情報は集められず、アプリを入れたスマートフォンどうしが15分間以上、おおむね1メートル以内にあるとその記録が暗号化され、お互いのスマートフォンに14日間、保存されます。

感染が確認された人がアプリを操作すると接触が記録された人のスマートフォンに通知が届きますが、だれが接触したかなどの情報は国などに送られない仕組みになっているということです。

ITの専門家でアプリの仕様を決める国の有識者検討会合の委員を務めた楠正憲さんによりますと、感染症対策の観点から位置情報などの詳細なデータを取得するべきではという意見もあったものの、より多くの人に使ってもらうには、プライバシー侵害への不安を最大限、払拭(ふっしょく)する必要があることなどから、最低限のデータしか取らない設計にしたということです。

楠さんは「プライバシーを守れるアプリになったと考えている。ただ、プログラムの動きは直接見えるものではないので、不安に感じる人たちに対しては適切に説明していく必要がある。できるだけ多くの人に使ってもらうことがアプリの効果を高めるのに必要なので、今後さらに課題が見えてくれば、真摯(しんし)に向き合って透明性を確保しながら直していきたい」と話しています。

英 研究者「人口の6割がアプリ使えば感染者の減少に」

イギリスのオックスフォード大学の研究者は、住民100万人の町を想定してシミュレーションを行った結果、人口の6割が接触確認アプリを使えば、感染の拡大は止められ、6割に届かなかったとしても感染者の数の減少につながると推定しています。

人口の6割とはどのくらいの規模なのでしょうか。
総務省が去年行った調査では、国内でスマートフォンを保有する個人の割合は67.6%で、年々増加しているものの、およそ3人に1人はスマホを持っていないことになります。

また、スマートフォンの代表的なアプリ、LINEの利用動向から見てみますと、国内の月間の利用者はおよそ8400万人で、日本の人口の66%に当たります。

人口の6割が接触確認アプリを利用するというのは、スマホ保有者の全員に近い人たちが利用する、あるいは、LINEと同じくらい普及する必要があることになります。

普及率の数値目標は

接触確認アプリは多くの人に利用されなければ効果は限られたものになります。

イギリスの研究者は人口の6割がアプリを使えば、感染の拡大を止めることができるとしたうえで、6割に届かなかったとしてもほかの対策と組み合わせることで感染者を減らすことはできるとしています。

厚生労働省はアプリの普及率について、数値目標を定めていません。アプリの内容が異なり感染防止対策にも違いがあるため、海外の研究を単純には当てはめることはできないと説明しています。

一方、専門家からは、より多くの人が利用したいと思ってくれるようアプリの内容や仕組みを工夫すべきだという声も上がっていて、利用する人がどれくらい増えるかは不透明です。

接触が分かるとアプリではこんな流れに

新型コロナウイルスの感染者との接触が分かるとどうなるのか。

アプリ上では次のような流れになります。
まずは症状の有無についての質問に答えます。
息苦しさや強いだるさ、高い熱といった症状があるかどうか答えを選びます。
症状がある場合、検査を受けることができる最寄りの「帰国者・接触者外来」などの電話番号が表示され、予約のうえ受診するよう求められます。

都道府県によっては「帰国者・接触者相談センター」の電話番号が表示され、いったん電話で相談をしたうえで、必要と判断されれば「帰国者・接触者外来」を案内されます。

一方、症状がない場合は、身近な人の状況について追加の質問に答えます。
家族や友人、職場の同僚など2週間以内に身近に接した人で、感染した人や発熱などの症状のある人がいるかどうか答えを選択します。
当てはまる場合は、感染者の「濃厚接触者」に当たる可能性が高いとされ、この場合も、最寄りの「帰国者・接触者外来」や「帰国者・接触者相談センター」の電話番号が表示されます。

当てはまらない場合、濃厚接触者の可能性は高くないとして受診は求められず、14日間は体調の変化に注意するよう呼びかけられます。
ただし、その後、体調が変化した場合に備えて、症状の有無についての質問画面に戻ることができます。

厚生労働省によりますと、アプリを利用しても、優先的に予約や受診ができたり、PCR検査などを受けられたりするわけではないということです。