10万円一律給付 給付率35.9% 人口の多い都市部などで遅れ

10万円一律給付 給付率35.9% 人口の多い都市部などで遅れ
一連の経済対策に盛り込まれた現金10万円の一律給付。政府は、郵送に加えてマイナンバーカードを利用したオンラインによる申請も受け付けて、迅速な給付を目指すとしていましたが、4月末の第1次補正予算の成立から1か月以上たった今も、給付率は総世帯数の35.9%にとどまっています。
中でも人口の多い都市部などでは給付が遅れています。

およそ40万世帯が給付の対象となる東京 大田区では、5月1日からマイナンバーカードを利用したオンラインによる申請を始めた一方、郵送による申請は、申請書類の印刷などに時間がかかったことから6月に入ってから書類を発送し、受け付けを始めました。

業者に審査の業務を委託するとともに、庁内に30人ほどの職員からなる専門のチームを作り、申請書類の確認を進めています。

届いた申請書の内容を職員がパソコンに入力したうえで、記載漏れがあるものは除外し、データ入力が完了したものを2人1組で読み合わせを行って確認します。

本人の署名や振り込み先の口座番号が記載されていないケースや、銀行のキャッシュカードのコピーが添付されていないなどの不備が相次いでいて、書類の確認に時間がかかっているということです。

また、オンラインで申請した人が、誤って郵送でも申請してしまう「二重申請」がシステムで防げないことも確認作業の妨げになり、全体の給付率は全国に比べて大幅に低い6%程度にとどまっています。

大田区の阿部大輔副参事は「全体の2、3割の申請に何らかの誤りがあり、二重申請できる仕組みになっていることが、全体の給付の遅れにつながってしまっている。郵送での給付は、これから本格化するので、役所をあげて態勢を組んで1日も早くお届けできるように取り組みたい」と話しています。

専門家「すぐに給付を受けられる仕組みの見直しも」

10万円の一律給付に遅れが出ている原因について、大和総研の是枝俊悟主任研究員は「一律の給付金といっても、住所や氏名のリストを持つ市区町村にお願いして配る必要があり、事務処理能力によって支給の時期がまちまちになっている。申請書に書き損じがあれば、それだけで給付が滞り、口座がこの人のものだと確認する作業に時間がかかってしまっている」と指摘しました。

さらにアメリカやイギリスなどでは、税や社会保障の制度に基づいて登録された口座に振り込む仕組みが整備されていることから、日本より迅速に給付が行われたと述べたうえで、日本の場合は「今回の給付のための口座が事前に登録されていなかったことも、作業の遅れの原因になった」としています。

そのうえで是枝氏は「今回に限らず、税金の還付や児童手当の受給、公共料金の支払いなど、行政と住民の間でさまざまな入出金があるので、そのための口座を1つ登録しておけば、他の制度で申請するときも、すぐに給付を受けられる仕組みも考えられる。住民も、何度も口座番号を書く必要はないし、行政も本人確認のために時間をとられることもないので、両者にとって利便性の高いものになるのではないか」と話しています。