ヒドロキシクロロキン コロナ治療に効果なしとする論文を撤回

ヒドロキシクロロキン コロナ治療に効果なしとする論文を撤回
新型コロナウイルスの治療に効果があるかどうか、世界各地で臨床試験が行われているマラリアなどの治療薬、「ヒドロキシクロロキン」について、治療の効果は認められなかったと先月発表した研究グループが、データの真実性を確認できないとして、論文を取り下げたことを明らかにしました。
マラリアなどの治療薬として知られる、「ヒドロキシクロロキン」や「クロロキン」について、アメリカやスイスの研究グループは、およそ9万6000人分の患者のデータを分析した結果、新型コロナウイルスの治療について、「効果は認められなかった」とする論文を先月、イギリスの医学誌、「ランセット」に発表しました。

ところが、研究グループは、分析に使われたデータに問題があるという指摘を受けたため、外部の専門家に検証を依頼していました。

研究グループによりますと、専門家が患者のデータを提供した会社に、データ全体を公開するよう求めたところ、データの提供者との合意に反するとして拒否されたということです。

このため研究グループのうち3人の研究者が、「データの真実性を確認できない」として、この論文を取り下げると発表しました。

「ランセット」の編集部によりますと、今回の研究にデータを提供した会社は、ほかにも複数の研究にも関わっています。

研究の中には2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した、北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した物質をもとに開発された「イベルメクチン」が、新型コロナウイルスの患者の死亡率を下げたと報告したアメリカの大学の研究も含まれていて、「ランセット」は「これらのデータの真実性について国際的な調査が必要だ」としています。

米医学誌に掲載の論文も取り下げ

データの真実性に問題を指摘された会社は、先月発表された心臓の疾患と高血圧の薬などとの関係を分析した論文を発表した研究グループにも、患者のデータを提供していました。

この論文を掲載したアメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は4日、研究グループが「オリジナルのデータを参照することが認められなかった」として、論文を取り下げたことを明らかにしました。

北里研究所「コメントする立場ではない」

今回撤回された論文で、データを提供した会社が関わった研究には、ノーベル医学・生理学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した物質をもとに開発された、寄生虫による感染症の特効薬「イベルメクチン」が、新型コロナウイルスの患者の死亡率を下げたと報告した、アメリカのユタ大学の研究も含まれています。

北里大学は、イベルメクチンが新型コロナウイルスの治療に効果があるかどうか、患者に投与して調べる治験を計画しています。

北里大学の学校法人、北里研究所の広報は「イベルメクチンの有効性を確認するため、本学において医師主導治験を行う予定です。ユタ大学のデータはあくまで観察研究として拝見しています。その科学的詳細はわからないので、われわれはコメントする立場ではありません」としています。