中村哲さん銃撃事件から半年 捜査難航か 新たな目撃証言も

中村哲さん銃撃事件から半年 捜査難航か 新たな目撃証言も
アフガニスタンで医師の中村哲さんが銃撃され、死亡した事件から、4日で半年です。

現地の捜査当局が、これまでに男4人を拘束して事情を聴くなどしたものの、事件への関与を裏付ける証拠が得られなかったとして、全員を解放していたことがわかり、捜査は難航が予想されます。
この事件は去年12月4日、アフガニスタン東部のナンガルハル州で、福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表の医師、中村哲さん(当時73)が、車で移動中に何者かに銃撃され、死亡したものです。

事件について、政府の情報機関「国家保安局」の複数の関係者はNHKの取材に対し、捜査当局がこれまでに男4人を拘束して事情を聴いたほか、家宅捜索を行ったものの、事件への関与を裏付ける証拠が得られなかったとして、全員を解放したことを明らかにしました。

そのうえで、この関係者らは「中村さんの事件は、解決するには困難なテロ事案の1つだ」として、事件解決の見通しが立っていないことを認め、捜査は難航が予想されます。

発砲を目撃 男性の証言

中村さんを直接銃撃した男の容姿についての新たな目撃証言も寄せられています。

証言したのは、現場のすぐ近くでパンなどの販売店を営むアシクラさん(42)です。

アシクラさんはNHKの取材に対し、事件当日の午前8時ごろ、店の前に停車した不審な2台の車から数人の男が降りてきて、現場を通りかかった中村さんらの車に突然、発砲するのを目撃したといいます。

当時、自動小銃を持った男らと拳銃を持った男らが二手に分かれたうえで、中村さんの車と警備員などを乗せた後続の車をそれぞれ銃撃したということで、「男らは私の店の前で待ち伏せていた。中村さんがここを通りかかったときに、店側とその隣のホテル側から発砲した」と、当時の状況について証言しました。

さらに、中村さんを銃撃した男は、アシクラさんの前に立ち、白い服の上に腰までの長さの黒のコートを着て、白いショールを身に着けていたということです。

捜査当局もこうした情報を把握しており、犯人の特定につながる重要な手がかりとみて調べています。

中村さんの活動描いた絵本完成 コロナ影響で配布が延期

中村哲さんのアフガニスタンでの功績を伝えていこうと、中村さんの活動を描いた絵本が、このほど完成しました。

「カカ・ムラド」、アフガニスタンの公用語の1つ、ダリ語で「中村のおじさん」を意味する題がつけられた、この絵本は、現地のNGOがJICA=国際協力機構などの協力を得て、銃撃事件後の去年12月から制作を進めてきました。

絵本は、アフガニスタン東部の診療所で働く中村さんが、住民たちと苦楽をともにしながら用水路を建設し、干上がった大地を、緑豊かな土地へと変貌させ、人々に希望を与える物語です。

この中では、中村さんが「100年前は日本も貧しかった。貧しすぎて、自分の子どもを売ることも珍しくなかった。子どもたちに食事を与えることができないこともあった」と住民たちを励ましながら、飢えや病気に苦しむ人々の気持ちに寄り添ったというエピソードも描かれています。

絵本は1200部余りを出版し、現地の幼稚園や小学校などに無料で配布する計画です。

しかし、NGOによりますと、新型コロナウイルスによる外出制限の影響で、印刷所がある西部へラートから、首都カブールまで絵本を輸送することができない状態が続いていて、幼稚園や小学校などへの配布も延期を余儀なくされているということです。

NGOの代表で絵本の作者のザビ・マハディさんは「アフガニスタンで中村さんが力を尽くしてくれたことに、とても感謝しています。子どもたちが将来、中村さんのような人に育つことを、心から期待しています」と話し、絵本についても、外出制限の解除を待って、子どもたちに届けたいとしています。