採用面接スタート 新型コロナ影響 企業にも 学生にも

採用面接スタート 新型コロナ影響 企業にも 学生にも
来年春に卒業する大学生などを対象にした採用面接が1日から本格的に始まりました。新型コロナウイルスの感染拡大は企業側にも、学生側にも、大きな影響を及ぼしています。

パナソニック 最終面接まですべてオンライン

パナソニックは1日から採用面接を本格的にスタートしました。大阪 中央区のオフィスで担当者は、画面越しの学生に自己PRを求めたり、家電や自動車などの希望分野を聞き取ったりしたうえで、パソコンに直接入力していました。

採用の担当者は大阪と東京の会社内に加え、自宅でも面接を行っているということです。

会社は1次から最終までのおおむね3回の面接を予定していますが、最後までオンラインで行い、内定を出すことにしています。新型コロナウイルスの感染防止を徹底し学生に安心感を持って臨んでもらおうとの配慮からだと説明しています。

会社はことしも去年と同じ900人を採用する計画ですが、感染拡大の影響で就職活動が遅れ気味な学生がいる可能性も踏まえて、例年だと7月までの選考期間を秋まで延ばすことも検討しているということです。

パナソニック採用部の秋本和秀総括は「学生に会社を選んでもらえるかなど、オンラインの面接が機能するかどうか悩みながら進めている」と話していました。

大阪の商社 最終面接だけ対面 面接官には注意点も

大阪 中央区に本社がある鉄鋼や石油などを扱う商社、阪和興業ではまず、人事部の担当者が面接官にオンライン面接の進め方について説明を行いました。

視点がずれると話を聞いていないような印象を与えるのでカメラを見ることや通信状況が悪い場合、音声に遅れが出るため、ゆっくり話すことなど、オンラインならではの注意点があるということです。

そしてオンライン面接では、学生から「これまでの仕事で大変だったことは何ですか」などの質問が出て、面接官は海外の担当者との連絡の難しさなど実際の仕事の様子が分かるように答えていました。

この会社では、学生の表情や雰囲気などをつかんだうえで内定を出したいとして最終面接だけは対面で行うことにしています。

面接会場となる役員会議室には、感染を防ぐため高さ60センチほどのアクリル板を設置して準備を進めています。

「阪和興業」人材開発課の山田祐也さんは「学生には、社員と実際に会ったうえで入社を決めてほしいため、来年以降も対面面接は行うつもりだ」と話していました。

神戸の食品会社は“オフライン面接”

神戸市の食品会社「ケンミン食品」は、新型コロナウイルスの影響でこれまで採用活動が全くできていませんでしたが、緊急事態宣言の解除を受けて1日、会社説明会と一次面接を行いました。

大手企業を中心にオンライン面接の動きが広がっていますが、この会社では社員と直接会って社風を感じてほしいと、志望する学生に来てもらうことにしました。

説明会や面接は全員がマスクを着用して行い、感染防止のためドアノブやエレベーターのボタンといった手を触れる場所は定期的に消毒していました。

面接に臨んだ大学院生の出海綾菜さんは「ウェブだけの就職活動は不安だったので実際に訪れることができ、企業の理解が深まりました。ただ、マスクをつけていると表情が伝わらないので面接は難しいと思いました」と話していました。

ケンミン食品の高村祐輝社長は「新型コロナウイルスで社会の環境は大きく変わっているが、変化に対応して人のために何ができるかを考えられるような人材を採用したい」と話していました。

学生へのアピール減少 採用人数確保を懸念する企業も

北海道函館市などを営業基盤にしている「道南うみ街信用金庫」は、ことしは新型コロナウイルスの影響で毎年参加している学生向けの合同説明会が中止になったほか単独の説明会も実施できていないということです。

国の緊急事態宣言が解除されたことを受け、ようやく今月中旬から企業説明会を始めることにしましたが、合同説明会が中止になり、学生にアピールする機会を得られなかったことから就職支援サイトを通じて採用に関する案内を希望する人は昨年度の半分近くに減少しているということです。

この信用金庫では例年、解禁に合わせて6月に実施している面接がことしは来月以降にずれ込む見込みだということで、採用人数を確保できるか懸念しているということです。

道南うみ街信用金庫の久保田力人事部長は「学生に積極的にPRを行わなければ希望する人数や人材が採用できないが、新型コロナウイルスの影響で学生と接触する機会が少なく心配だ」と話しています。

大学や学生の対応は

新型コロナウイルスの感染拡大により、採用面接をオンラインで行う企業が増えたことに伴って、大学側も対応を迫られています。

仙台市にある東北学院大学は、オンライン面接に慣れてもらおうと、希望する学生を対象に外部から招いた講師による模擬面接を行っています。

模擬面接では講師が面接官役となって、学生に志望動機などを聞いていたほか、顔の向きや目線、それに話し方の速さなどを細かくアドバイスしていました。

東北学院大学就職キャリア支援課の田口修課長は「ウェブでの採用面接は避けられない流れになると思うので、学生にとって何がよいかを考えながら支援していきたい」と話していました。

模擬面接を受けた4年生の高橋優香さんは、観光や金融などの大手企業を志望しています。オンライン面接を行う企業が増えたことで、首都圏などへの移動にかかる費用や時間が節約できるようになったとメリットを指摘します。

その一方で企業に実際に行くことができないため、社内の雰囲気がわからず、情報も集めにくいと戸惑いを感じています。

高橋さんは「実際に会社に行くことができない状態なので、会社の雰囲気が間近で感じられない。全国の学生が同じ環境だと思うので、与えられた環境でしっかりと頑張りたいです」と話していました。

上京して就活「例年どおりの採用か不安」

新型コロナウイルスの影響で企業の採用活動のスケジュールが遅れ、北海道から上京して就職活動を行っている大学生は不安を抱えています。

函館市の大学に通う大学4年生の菅原慶之さんは、首都圏の企業への就職を希望していて、ことし2月中旬に上京し、姉や友人の家に滞在しながら東京で就職活動を行っています。

しかし、ことしは新型コロナウイルスの影響で採用活動のスケジュールを遅らせた企業が多く、3月から4月にかけて予定されていた企業説明会などが軒並みキャンセルとなったということです。

このため菅原さんは函館に戻ることも検討しましたが、政府の緊急事態宣言で都道府県をまたいだ移動の自粛が求められたことから、東京にとどまらざるを得ず、生活費もかさんでいるということです。

菅原さんは「上京してきたものの、採用スケジュールは進まないうえ、外出もできないため、することがありませんでした。就職活動のスタートが切れず不安が続いていました」と話していました。

先月25日に政府の緊急事態宣言が解除されたあとは、企業から採用活動のスケジュールについて連絡が入るようになり、ようやく就職活動を再開できるようになったということです。

菅原さんは「緊急事態宣言は解除されましたが新型コロナウイルスの影響で企業側が例年どおり採用活動を行うのか不安です。内定を得られるまで頑張っていきたいと思います」と話しています。

経団連会長「企業も学生も初めてのケース 工夫を」

来年春に卒業する大学生などを対象にした大手企業の採用面接が本格的に始まったことについて、経団連の中西会長は記者団の取材に対し「こういう環境なので、学生との間のコミュニケーションが従来と全く変わったということにどう対処するか。企業側も学生側も初めてのケースなのでいろいろ工夫してやっていかないとと思う。よく全体をウォッチして進めていくということだと思う」と述べました。