“複合現実”の最新技術 新型コロナの医療現場で活用の動き

“複合現実”の最新技術 新型コロナの医療現場で活用の動き
新型コロナウイルスに対応する医療現場では、立体画像を現実の世界に投影して操作できるMR=複合現実と呼ばれる最新技術を活用して負担の軽減につなげる試みが始まっています。
MR=ミックスト・リアリティは日本語で「複合現実」と呼ばれる最新技術です。

専用のゴーグルを使ってセンサーなどで周囲の状況を把握しながら、半透明のレンズを通じて現実の世界に立体画像を浮かび上がらせ操作することができます。

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの大学病院では、この技術を新型コロナウイルスに感染した患者への対応に活用しています。

患者に対応する医療チームのうちMRのゴーグルを着用した代表者1人が直接、患者と接触し、ほかの医療スタッフは別の部屋で待機するという試みです。待機する医療スタッフには代表者のゴーグルに搭載されたカメラを通じて患者の様子がリアルタイムで共有されます。同時に、代表者のゴーグルには患者のCTスキャンのデータを送るなどしてチームが離れていても合同で診察にあたることが可能になりました。

大学病院によりますとこうした取り組みの結果、患者に直接接触する医療従事者の数を大幅に減らし感染リスクが高いエリアに滞在する時間も8割短縮したほか必要な医療物資の量も削減できたということです。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのジェームズ・キンロス上級講師は「この技術を活用したことで、医師による回診をより効率的に行えるようになった。今回の試みは単純なもので、まだ洗練されていないので、こうした技術を使えばもっといろんなことができると思う」と話していました。

MRを医療現場で活用しようという試みは日本でも進められています。

都内にある帝京大学の研究所ではMRのゴーグルを通じて、離れた場所にいる患者に立体化した患者の肺のCT画像を送り、病状の説明にいかすことなどを目指し、実証実験が行われています。

5月27日に行われた実験では、医師と患者が壁を挟んだ状態で、炎症が起きている場所を確認しあうことに成功しました。

この技術が普及すれば、患者が専門医がいない地方にいる場合でも、互いの姿をゴーグルに投影することで実際に医師と患者が向き合っているような、より現実に近い形で診察を受けられるようになると期待されています。

帝京大学冲永総合研究所の杉本真樹特任教授は、「医師どうしや、医師と患者が必ずしも接する必要がなくなってきている。こうした技術が使えることを証明する事例ができれば、医療の底あげにつながると思います」と話しています。