“宣言解除” 当面は在宅勤務続ける企業も 新型コロナ

“宣言解除” 当面は在宅勤務続ける企業も 新型コロナ
日本有数のオフィス街、東京 丸の内では緊急事態宣言が解除された26日朝も、以前のように大勢の人たちが一斉に会社に向かう通勤風景は見られませんでした。
大手企業の本社などが並ぶ日本有数のオフィス街、東京 丸の内は、緊急事態宣言が出されたあと、多くの会社が在宅勤務などを取り入れたため、出勤する人の数が大幅に減っていました。

宣言が解除された26日朝は、これまでよりも出勤する人の数がいくぶん増えたように見え、マスクをつけた人の姿が目立ちました。

ただ、宣言が解除されても当面、在宅勤務を続けるという会社も多く、近くの東京駅の周辺は以前のように大勢の人たちが一斉に会社に向かう通勤風景は見られませんでした。

また、オフィスや飲食店などが入ったビルでも、まだ営業を再開しないという店も多く、人通りは少ないままです。

機械メーカーに勤める58歳の男性は「きょうは印鑑を押すための出勤です。今月いっぱいは原則テレワークが続いて、来月以降どうするかはまだ決まっていません。テレワークに慣れてしまったので、都心に通勤するのは大変だと感じます」と話していました。

また、公務員の42歳の男性は「宣言が解除されても人は前より減った印象で、1か月ぶりの東京は空気がきれいに感じます。心機一転、仕事を頑張ろうと思います」と話していました。

生命保険会社では…

東京 丸の内にある明治安田生命の本社では、緊急事態宣言が出されたあと、出社する社員を3割程度におさえていましたが、26日以降、在宅勤務を組み入れたシフトは続けながら出社する人の数をおよそ7割まで戻すことにしています。

26日は午前9時になると、ところどころ空席はみられたものの、多くの社員が自分の席について仕事を始めていました。

このうち保険の販売担当者の研修や営業戦略を立てる部署では、今後の方針を話し合うため早速ミーティングを開き、顧客のもとを訪れる訪問営業を順次再開することを確認しました。新型コロナウイルスの感染対策として、このオフィスではこれまで締め切っていた扉を開けて換気を強化したり、同じ業務を担当する社員どうしができるだけ集まらないように席替えをしたりするということです。

28歳の女性社員は「職場に活気が戻ってきたのはうれしいですが、まだ感染の不安もあります。自分の働き方に合わせて今後もテレワークを活用したいです」と話していました。

明治安田生命営業人事部の小針宏之グループマネージャーは「これまで対面中心の営業スタイルでやってきたが、感染拡大をきっかけに顧客のニーズも変わってきたと感じる。さまざまな要望に答えられるように柔軟に対応していきたい」と話しています。

テレワークを継続

テレワークを続ける企業もあります。

NTTはことし2月から、通信インフラの保守点検などの業務を除いてグループすべての従業員が原則、テレワークで働いてきました。

政府の緊急事態宣言が全国で解除されたあとも、今月中はテレワークを継続する方針で、このうち東京 大手町のNTTコミュニケーションズのオフィスでは、26日も出社している従業員はほとんどいませんでした。

この会社では、全国7400人の従業員のうち8割以上がテレワークを行っているということです。

来月以降もテレワークを活用して出社する従業員を減らし、出社した場合も席を1つずつ空けて座ったり会議室に入る人数を定員の半数にとどめたりして、「3密」を避ける対策をとるとしています。

NTTコミュニケーションズの山本恭子ヒューマンリソース部長は「リモートの働き方にだいぶ習熟し、このまま続けられると感じている。6月以降も以前のような状況に戻るとは考えておらず、『3密』を避ける工夫をしていきたい」と話していました。

大手デパートも全面再開へ

緊急事態宣言の解除を受けて、三越伊勢丹ホールディングスが北海道や首都圏の店舗の営業を今月中に全面的に再開することを決めるなど、大手デパートで全面再開の動きが広がっています。

<三越伊勢丹ホールディングス>
三越伊勢丹ホールディングスは、緊急事態宣言が解除されたことなどを受けて、食品フロアのみで営業を続けていた札幌市の2店舗の営業を今月28日から、全館で休業していた東京・埼玉の6店舗は今月30日から全館で再開することを決めました。
これにより、国内のすべての店舗でおよそ1か月半ぶりに全面的に営業が再開することになります。

<高島屋>
高島屋は、食品フロア以外では生活必需品を扱う売り場のみの再開にとどまっている店もありましたが、27日からは宝飾品の売り場なども含め、国内すべての店舗で全面的に営業を再開することを決めました。

<J.フロント リテイリング>
大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ.フロント リテイリングも食品売り場のみで営業を続けていた札幌市の1店舗について、27日から全館で再開することを決めました。
これで国内すべての店舗で全館での営業が再開しますが、現時点では平日のみの営業としている店舗が多くなっています。

<そごう・西武>
そごう・西武では、食品や雑貨を扱う売り場のみの再開にとどまっている店もありますが、来月1日の全面的な再開を目指すことにしています。

都内のアパレルショップ「再開するも不安」

都内のアパレルショップでは、通常営業を再開するところも出ていますが、客足が戻るのか不安を抱えています。

渋谷区神南にあるアパレルショップは、緊急事態宣言を受けて今月14日まで店を閉め、15日以降は予約の人だけを店に入れる対応を取ってきました。

大型連休に店を閉めたため、すでに仕入れていたロングコートやニットなどの春物商品が多く売れ残っていて、売り上げは去年の同じ時期と比べて3割ほどに落ち込んでいるということです。

宣言の解除を受けて、26日から自主的に通常営業に戻しましたが、以前と同じように店に客が来てくれるかわからず、不安を感じているといいます。

店を運営するファッションコアミッドウエストの大澤武徳副社長は「緊急事態宣言が解除されて、ようやくかという思いがある。服は季節商品なので時期が過ぎると売れず、売り上げの減少は避けられない状況だ。直接店に来ない客にも服を紹介できるオンラインの新しいサービスを提供するなどして対応していきたい」と話していました。

78歳の店主が店を再開 東京 新橋

緊急事態宣言の解除を受けて、東京 新橋で料理店を経営する78歳の男性が1か月半ぶりに店を再開し、常連客との交流を楽しみました。

JR新橋駅前で20年間営業している懐石料理店「花懐道」の店主、芳賀啓さん(78)は、東京でも緊急事態宣言が解除されたことを受け、26日、1か月半ぶりに営業を再開しました。

芳賀さんたちは午前中、「お客さんと再会」と書かれた営業の再開を知らせる貼り紙を掲げ、感染防止策として店内の座席数を半分近くに減らしたりカウンターを消毒したりして開店の準備を進めました。

そしてお昼どきになると近くの会社から常連客が相次いで訪れ、山菜やえびが入った天ぷら定食などをおいしそうに食べていました。

訪れた会社員の男性は「再開を心待ちにしていました。おいしくて、安く、居心地がいいお店です。仲間と食事ができて楽しい」と話していました。

芳賀さんも、こうした常連客からの再開を求める声が休業中の励みになったということで、マスク姿で、カウンター越しに久しぶりの交流を楽しんでいる様子でした。

ただ、新橋駅周辺の飲食店からは会社の飲み会や接待が減り、街のにぎわいが戻るか分からないという不安の声も多く聞かれます。

芳賀さんは「お客さんがすぐに来てくれるとは思えず、まだ厳しい状況です。店を100歳まで続けたいのであせらず毎日一生懸命頑張るしかない」と話していました。

首都圏からのビジネス客に期待 仙台

仙台名物の「ずんだ餅」などを販売する店は今後、首都圏からのビジネス客などが戻れば、土産物需要の回復につながると期待しています。

仙台市にある「お茶の井ヶ田」では、仙台名物の「ずんだ餅」や抹茶を使ったスイーツなどの土産物を販売しています。

新型コロナウイルスの影響で先月の売り上げは、感染拡大前の半分以下に落ち込み、今月14日に宮城県内で緊急事態宣言が解除されたあとも、県外からのビジネス客や観光客が戻らず、厳しい状況が続いています。

このため店では、首都圏などの緊急事態宣言が解除され、仙台を訪れる人の数が徐々に増えれば、土産物需要の回復につながると期待しています。

「お茶の井ヶ田一番町本店」の野本遙店長は「首都圏が徐々に通常どおりに戻ろうとする状況を歓迎しています。ことしは、東北の夏祭りも軒並み中止になるなど、今後は見通せませんが、いずれ需要が戻る時期に商品の魅力を発信できるよう準備を進めていきます」と話していました。

居酒屋 営業時間延長も期待と不安

緊急事態宣言の解除を受けて、大手居酒屋チェーンでも営業の再開や営業時間を延長する動きが広がっています。売り上げの回復を期待する声がある一方で、客数が従来のようには戻らないのではないかと不安の声も上がっています。

居酒屋チェーンの「はなの舞」などを運営するチムニーは、先月、最大でおよそ300店舗の直営店が臨時休業しました。

東京 池袋の店舗では、先月21日から開店時間を午後8時までとして営業を再開しましたが、1日当たりの売り上げは感染拡大前の20%程度まで減少し、40人のアルバイト従業員のほとんどを休ませてきました。

緊急事態宣言の解除で、東京都の要請が緩和されたことを受けて、26日から営業時間を2時間延長し、午後10時までにしました。

一方で、感染を防止するため座席の消毒の徹底や仕切りの設置に加えて、客どうしの座席の間隔を広くとる対策をとり、座席数は従来の220席から4割少ない130席ほどで運用することにしました。

営業時間も従来よりも3時間ほど短いため、店では売り上げは感染拡大前の40%ほどまでしか戻らないのではないかとみています。

店長の五十嵐徹さんは、「いちばん売り上げがある時間帯の営業ができるようになりありがたい。ただ、宴会の需要もしばらくは見込めず、どうすれば売り上げを戻していけるか考えていく必要がある」と話しています。

店では、来店した客がほかの客と隣り合った席にならないように案内していました。

50代の会社員の男性は「解除になったとはいえ、まだ新型コロナウイルスの感染が終わったわけではないので、客どうしの距離をあけてくれるのは客としてはありがたいので続けてほしいです。とはいえ、店からすると大変だと思うので早く元に戻ってほしいです」と話していました。