テレワークの場所、提供します… 新型コロナで新サービス

テレワークの場所、提供します… 新型コロナで新サービス
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレワークの導入が進む中、利用者が落ち込んでいる商業施設などが、自宅で働くことが難しい人のためにテレワークの場所を提供する新たなサービスが広がっています。

旅館では風呂もOK

新型コロナウイルスへの感染リスクを減らすため、社員が在宅で働くテレワークを導入する企業が増えている一方、環境面や家族の事情などから自宅で働くことが難しいという人もいます。

こうした人たちのために、東京 台東区の旅館「澤の屋」では先月から客室をテレワークの場所として提供するサービスを始めました。

客室ではインターネットが自由に使えるうえ、お茶とコーヒーが飲み放題、さらに風呂にも45分間貸し切りで入ることができ、料金は午前9時から午後7時までの日帰りで3300円となっています。

初めて利用した都内の女性は「きょうは夫も在宅勤務をしているので、仕事に集中するために来ました。遠出もできないので、気分をリフレッシュして仕事ができます」と満足した様子でした。

新型コロナウイルスの影響で先月、日本を訪れた外国人旅行者は去年に比べて99.9%減り、この旅館でも3月下旬以降、予約のキャンセルが相次いだことから、空室を少しでも活用しようとテレワークのサービスを始め、利用者は1か月半でおよそ50人に上るということです。

旅館では、テレワークの場所を確保したい企業と宿泊施設のマッチングを行う東京都の支援事業にも参加し、利用者をさらに増やしたい考えです。

旅館の3代目、澤新さんは「いろいろな形で宣伝することでお客様が来てくれれば助かります。宿泊客が戻ってくるまでは、何とかつぶれないよう頑張っていきたい」と話していました。

カラオケボックスでは…

テレワークの場として、カラオケボックスを提供する動きも見られます。

首都圏を中心に56店を展開するカラオケチェーン「カラオケの鉄人」では、先月の緊急事態宣言の発表を受けて、全店で休業していましたが、今月7日から一部の店を除き時間を短縮して営業を再開し、合わせてテレワーク向けのプランも導入しました。

最も安い「平日プラン」は、30日間使い放題で税抜き2480円となっていて、川崎市の店では、毎日10人余りが利用しているということです。

店を訪れた、近くに住むコンサルティング会社役員の男性は、自宅では大学生の2人の子どもがオンライン講義を受けるなど仕事に集中できないため、毎日のように利用しているということで「食べ物が持ち込めてドリンクも飲み放題と快適だし、自宅より集中しやすくて仕事がはかどります。会社からは、6月以降も以前の働き方には戻らないと言われているので、今後も利用したい」と話していました。

運営会社の村山玲マネージャーは「この状況の中で私たちが運営する空間やサービスが社会にどう貢献できるのか検討して、テレワークの支援に乗り出しました。利用された方から『ありがとう』という声もいただき、自宅で仕事が十分できない人がこんなにいるのだと感じました。少しずつ形を変えながら、今後もテレワークの支援は続けていきたい」と話しています。

テレワークの相談セミナー 参加者急増

テレワークに関する相談を受け付ける企業担当者向けのセミナーでは、参加者が急増しています。

東京都や国が設置した「東京テレワーク推進センター」は、テレワークの活用を目指す企業担当者の相談を受け付けたり、在宅で使えるシステムの紹介をしたりしています。

月に数回開いているセミナーの参加者は、2月はおよそ250人、3月と4月はそれぞれおよそ1000人、5月はおよそ1500人と増え続けています。

今月22日にオンラインで行われたセミナーでは、社員全員がテレワークを行っている企業の役員が講師を務め、テレワークを導入する上での課題や解決方法などを紹介しました。

具体的には「お互いの状況が分からず、コミュニケーションが取りづらい」とか、「一体感が生まれにくい」といった課題に対しては、社員が在席しているかどうか確認できるシステムやチャット機能を使って、積極的に雑談するなどの工夫を勧めていたほか、「子どもがいて仕事がしづらい」とか「近所の目が気になる」といった課題に対しては、小規模なオフィスを借りるなどの方法も紹介していました。

東京テレワーク推進センターの湯田健一郎事業責任者は「テレワークへの関心が非常に高まっていて、働き方やコミュニケーションの在り方をどう変えるのか、多くの企業が取り組んでいる。セミナーの数を増やすなどして、企業への発信に取り組んでいきたい」と話しています。

専門家「働く概念が変わる」

テレワークについて、不動産ポータルサイトのSUUMOが先月中旬、関東甲信地方に住む1300人余りを対象に行った調査では「今後もテレワークを継続したい」と答えた人は、全体の84%に上りました。

一方で、「オンオフの切り替えがしづらい」と答えた人が35%、「仕事専用スペースがない」と答えた人が33%と、自宅でのテレワークに課題を感じている人も多いことが分かりました。

専門家は今後、オフィスでも自宅でもない、新たな「働く場所」へのニーズが高まると指摘しています。

リクルートマネジメントソリューションズの武藤久美子シニアコンサルタントは「テレワークをめぐっては、仕事の生産性が上がったり、家族との生活が充実したりするなど、肯定的な評価が多く、オフィスに出社しない働き方でも貢献できることを多くの人が実感した。テレワークをきっかけに働くことの概念が変わりつつあり、今後は『どこで働くか』より『どんな価値を生み出すことができるか』が注目され、働き方がより個人に任されるようになってくる。ビジネスに使える環境が整っていれば、全国どんな場所であっても、『第3のオフィス』として使われる可能性が出てきている」と話しています。