文芸誌が相次ぎ特集 文学作品にも新型コロナの影響

文芸誌が相次ぎ特集 文学作品にも新型コロナの影響
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、文芸誌は相次いで最新号で特集を組み、感染が広がる社会を舞台にした小説などを掲載しています。編集者は「新しい文学として今後さらに作品が増える可能性がある」と指摘しています。
今月発売された『新潮』の6月号には「コロナ禍の時代の表現」という特集が組まれ、芥川賞作家の金原ひとみさんや、鴻池留衣さんなどが新作を発表しています。

金原さんの「アンソーシャルディスタンス」は、恋人どうしの若い男女が新型コロナウイルスの感染拡大による生活の変化や制約に直面し、やるせなさに苦しむ様子が描かれています。

また、河出書房新社が先月発売した『文藝』の夏季号では「アジアの作家は新型コロナ禍にどう向き合うのか」と題して6人の作家がエッセーを寄せ、このうち中国を代表する社会派の作家、閻連科さんは、世界中で不安が広がる中で文学が果たす役割をめぐって葛藤する思いなどをつづっています。

『文藝』の坂上陽子編集長は「東日本大震災のあとに『震災後文学』が現れたように、その時代時代で新しい文学が生まれている。今後さらに作品が増えてくるという印象を持っています」と話しています。

このほか講談社の『群像』6月号でも、ドイツ在住の作家、多和田葉子さんが電話インタビューの中でヨーロッパの状況を紹介したり、経済思想の研究者、斎藤幸平さんが感染拡大がもたらした危機的な状況を現代社会の構造的な問題として捉える必要性を説いた文章を寄稿したりしています。