中国 全人代 香港の治安維持「中国政府主導で法整備と取締り」

中国 全人代 香港の治安維持「中国政府主導で法整備と取締り」
中国の全人代=全国人民代表大会は、抗議活動が続く香港をめぐり、治安を維持するための法律を中国政府主導で制定するとともに、中国の関係機関による取り締まりを認める方針を打ち出し、国際社会や香港市民の間で、市民の自由が制限されるとして反発が強まっています。
22日に開幕した全人代で、王晨副委員長は、香港での国家の安全を守る法制度の整備に関する草案を読み上げ、今回の全人代で採決する方針を示しました。

草案では、香港での治安維持のための法律を制定するとともに、必要に応じて中国の治安維持部門が香港に出先機関を設けて活動を行うなどとしています。

王副委員長は、香港での一連の抗議活動について「反中勢力が公然と香港独立を叫び、社会秩序を破壊しており、外国勢力が干渉して国家の安全に危害を与えている」と非難しました。

そして「香港政府が国家安全条例を制定するのは、もはや困難だ」としたうえで「一国二制度の許容範囲を超える行為や、国家を分裂しようとする行為は絶対に容認できず、国家レベルで法制度の整備を進めることが不可欠だ」と述べ、治安維持のための法整備と取り締まりを中国政府主導で進める方針を示しました。

今回の方針が議題になることは、21日夜になって突然発表され、香港の民主派団体などは「市民の自由を制限するものだ」と激しく非難しているほか、アメリカのトランプ大統領も「非常に強い対応に出る」と述べるなど、国際社会や香港市民の間で今後、反発が強まることは避けられない見通しです。

香港行政長官 「全人代の方針支持」

香港政府トップの林鄭月娥行政長官は「当面の間、香港が国家安全に関わる法律を独自に定めるのは難しく、全人代が法律の審議に入ることを支持する」とする声明を発表しました。

そのうえで、声明では「法律の制定は、香港市民の権利や自由、それに香港の司法機関が独立した司法権を行使することに影響を与えるものではない」として、自由が制限されるという市民の反発に反論しました。

香港 民主派「多くの市民の自由が制限される」

香港の民主派の議員や団体などは記者会見をし、市民の自由が脅かされるなどと批判しました。

このうち民主派団体の代表で、立法会の元議員の李卓人さんは「われわれは常に権利と自由を行使して中国を批判し、民主化を呼びかけてきたが、今後は、そのことが罪に問われることになる」と述べて、多くの市民の自由が制限されると批判しました。

また、去年6月、容疑者の身柄を中国本土に引き渡せるようにする条例の改正に反対し、大規模な抗議活動を呼びかけた団体の代表、岑子杰さんは「この法律を執行するのは、いったい誰なのか。共産党は去年の条例改正を諦めておらず、新たな法律を導入して香港で市民を拘束できるようにしようとしている」と警戒感を示しました。

会見の後、一部の参加者は香港にある中国の出先機関の前に集まり、「『国家安全法』は受け入れられない」などと声を上げていました。

台湾「香港の自由と民主主義への脅威」

台湾の総統府の報道官は「香港の自由と民主主義へのさらなる脅威となりうるもので、高い関心を寄せている」というコメントを発表しました。

そのうえで、総統府の報道官は「香港問題の解決の鍵は、北京と香港の政府が香港市民の求めに誠実に応じ、自由と民主主義に関する約束を果たすことであり、これを制限することではない。今回の一件は『一国二制度』は民主主義と相いれないことを証明しており、台湾の自由と民主主義、そして主権を守るという、われわれの決心をさらに強くさせた」としています。

香港の株式市場 5%超下落

22日の香港の株式市場は、中国の全人代=全国人民代表大会で、抗議活動が続く香港をめぐり、治安を維持するための法律を中国政府主導で制定する方針を打ち出したことなどを受けて全面安の展開となり、代表的な株価指数が21日に比べて5%以上、大幅に下落しました。

香港の株式市場は22日、全面的に売られる展開となり、代表的な株価指数「ハンセン指数」の終値は21日に比べて、およそ5.5%下落しました。

また、上海の株式市場でも売り注文が広がり、代表的な株価指数の終値は21日に比べて、およそ1.8%下落しました。

市場関係者は「中国の全人代で、香港をめぐり治安維持のための法律を整備する方針などが打ち出され、反対する市民と当局が今後、再び激しく衝突し、混乱するのではないかという懸念が広がった。また、香港をめぐり、アメリカと中国の対立がさらに深まり、経済にも影響が出るという見方も出ている」と話しています。

中国「いかなる国も干渉する権利なし」

中国政府主導による香港の治安維持のための法律制定に向けた動きについて、アメリカのトランプ大統領が「もしそうなれば非常に強い対応に出る」とけん制したことについて、中国外務省の趙立堅報道官は22日の記者会見で、香港は中国の一部だとしたうえで「国家の安全を守るための立法は中国の内政問題であり、いかなる国も干渉する権利はない」と反発しました。

そのうえで、「中国政府が国家の主権と安全を守る決心は揺らぐことはなく、外国勢力による香港への干渉に反対するという決心も揺らぐことはない」と強調しました。