東京 保健所の残業時間 過労死ライン超え相次ぐ コロナ対応で

東京 保健所の残業時間 過労死ライン超え相次ぐ コロナ対応で
新型コロナウイルスの感染者が全国で最も多い東京都内の各保健所では、先月、担当者の残業時間が大幅に増え、「過労死ライン」と呼ばれる水準を超えるケースも相次いでいたことが分かりました。
新型コロナウイルスの感染が広がる中、保健所は電話による相談の対応をはじめ、検査機関への検体の運搬、それに濃厚接触者や感染経路の調査などの業務にあたってきました。

都内では、新たな感染者が1日に200人を超えるなどピークを迎えた先月、各保健所で担当者の残業が大幅に増えていました。

このうち、板橋区の保健所では、主な担当者13人の平均の残業時間が去年の同じ月のおよそ6倍にあたる86時間余りに上ったということです。

特に、区民からの相談の対応や、統計や報告の取りまとめにあたった担当者の中には、138時間に上った人もいたということです。

これは、労災が認められる可能性が高くなるいわゆる「過労死ライン」の月100時間を上回っています。

また、足立区では、主な担当者11人の平均の残業時間が70時間余りとなり、最も多い人は110時間に上ったということです。

このほか、千代田区や中央区、港区、それに中野区でも、100時間を超えたケースがあったということです。

こうした状況を改善するため、厚生労働省は、関係機関がそれぞれ集計や入力をしていた感染者の情報を、速やかに共有できるシステムを導入するなどの取り組みを進めています。

各自治体は負担軽減に動く

保健所の担当者の負担を少しでも軽減しようと、自治体は独自の対策を進めています。

このうち、先月、担当者12人の平均残業時間が去年の同じ月の6倍の99時間余りに上った江戸川区では、区役所から応援の職員を集めて100人規模に増やし、電話対応などの業務にあたっています。

さらに、運転席と後部座席の間に飛まつを防ぐ仕切りをつけた車両を民間企業から無償で提供してもらいました。

これによって、感染が疑われる人を検査センターに移送したり、軽症者をホテルに送ったりといった保健所が行っていた業務を民間に委託できるようになりました。

江戸川区健康部の天沼浩部長は「電話相談や健康観察で多忙を極めた。一部アプリの導入や職員の応援態勢などで軽減を図ったが、なにより地域の理解でスムーズにいった部分があり、もし、また波が来た場合には今回の経験を生かしたい」と話しています。

このほか、葛飾区は患者の移送や検体の輸送に、板橋区や中野区は電話相談の対応に民間企業のサービスを活用しています。

品川区は人材会社から保健師を、文京区は区内の大学から職員を派遣してもらい、電話相談の対応にあたってもらうなど、各自治体で対策を進めています。