中国全人代開幕 経済成長率の数値目標発表せず コロナ影響

中国全人代開幕 経済成長率の数値目標発表せず コロナ影響
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中国で重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が始まり、李克強首相は、新型コロナウイルスの感染拡大で経済に大きな影響が出ていることを受けて、例年打ち出している年間の経済成長率の数値目標を、ことしは発表しないことを明らかにしました。中国政府が全人代で経済成長率の数値目標を示さないのは異例です。
全人代は、3000人近い代表らが出席して、日本時間の午前10時から北京の人民大会堂で始まり、李克強首相が政府活動報告を行いました。

この中で李首相は、新型コロナウイルスの感染拡大について「習近平国家主席を核心とする指導部の力強い指導のもと、対策は大きな戦略的成果を収めている」と成果を強調しました。

その一方で「感染症対策の中で多くのぜい弱な部分が表面化し、国民の一部の意見と提案を重視すべきである」と述べ、政府の対応に不十分な点があったことを認めました。

また例年、全人代で打ち出している年間の経済成長率の数値目標について「予測困難な影響の要因に直面している。経済成長率については具体的な年間目標を提示しない」と述べました。

中国政府が、全人代で経済成長率の数値目標を示さないのは異例のことです。

そのうえで新型コロナウイルス対策を実施するための特別国債を1兆人民元、日本円でおよそ15兆円規模で発行するなど、積極的な財政政策で落ち込んだ景気を下支えしていく方針を打ち出しました。

一方、李首相は抗議活動が続く香港について「国家の安全を守るための法制度と執行メカニズムを確立しなければならない」と述べ、治安維持のための法整備を急ぐ方針を示しました。

今回の全人代で法整備の審議を進めるとみられ、香港市民の間では、中国政府が直接法律を制定すれば、一国二制度が形がい化するとして警戒感が強まっています。

中国市場 自動車の販売 回復へ

新型コロナウイルスの感染拡大で世界最大の自動車市場である中国では販売が一時、大きく落ち込みましたが、経済活動の再開に伴って先月には販売台数が前年を上回り、回復に転じています。

中国の2月の販売台数は、トヨタ自動車や日産自動車、それにホンダで、去年の同じ月に比べて70%から85%の大幅な減少となりました。

また生産面でも感染が最も深刻だった武漢にあるホンダの工場は、3月中旬までおよそ1か月半にわたり生産がストップしました。

その後、経済活動が再開されると、地方政府の販売促進策などもあって先月は新車の販売台数が中国市場全体で前の年よりも4%余り増え、回復に転じました。

日系メーカーでも日産が前の年を1.1%上回ったほか、マツダも1%、トヨタも0.2%の増加とそれぞれプラスに転じていて、日本や欧米で依然として生産調整が続く中、中国市場は回復基調が鮮明になっています。

ホンダの倉石誠司副社長は今月12日に開かれたオンラインでの決算会見で「直近では政府の消費刺激策の影響もあり市場は活発化している。

中国は新型コロナウイルスの感染拡大の第2波、第3波も懸念されるが、お客様にはできるだけ早く車を届けられるように力を尽くしたい」と述べました。

一方、中国の自動車の業界団体は、海外での感染拡大が今後、中国の景気回復にも影響を与えるおそれがあることから、ことしの年間の販売台数が去年より15%から25%程度減少するという、慎重な見通しを崩していません。

経団連会長「今後の動向を注視」

中国で重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が始まったことに関連して、経団連の中西会長は記者団の取材に対し、今後の中国経済や日中間の貿易の動向を注意深く見ていく必要があると言う認識を示しました。

この中で、中西会長は「中国は、もともと自国のマーケットが非常に大きいので移動制限などの措置が解除されれば、それなりの経済活動は再開するだろう。現に私の会社、日立製作所の中国での操業も、ほぼ復旧している」と述べました。

そのうえで「日本との間の物の交流は徐々に戻ってくるのではないかと思うが、これからどういう形で進展していくのか、よくウォッチしなければならない」と述べ、中国経済や日中間の貿易の動向を注意深く見ていく必要があるという認識を示しました。