飲食店の窮地を救え 弁当がつなぐ支援の輪

飲食店の窮地を救え 弁当がつなぐ支援の輪
新型コロナウイルスの感染拡大で多くの飲食店が休業を余儀なくされています。こうした中、韓国では1つの弁当が多くの人たちをつないで支援の輪が広がっています。

感染拡大でオープン直後に大打撃

「肉は毎回食べてもらいたいのでこだわって入れています。僕自身も肉を食べないと食事した気がしないので」

できあがった弁当を前にこだわりを語るのはキム・ドンジュンさん(29)。韓国の家庭の味を意識した「テジコギテンジャンポックム」(豚肉みそ漬け炒め)は、ごはんが進む一品。この弁当は1人暮らしの高齢者や障害者など支援が必要な人たちへ届けられます。
キムさんはソウル東部のカントン区で牛肉のユッケやとサーモンの刺身を提供する飲食店をことし2月はじめにオープンしました。アパレル関連の仕事を辞めて婚約者と挑戦しようとしたやさきに韓国国内で新型コロナウイルスの感染が拡大。店は開店休業状態に追い込まれました。

「配達もやってはいたのですが、店の知名度がないので利用者も少なかったです。店がうまくいかないのが、ウイルスの影響なのか、自分たちの店の問題なのかすらわからない状況でした」

弁当が飲食店を救う

キムさんに救いの手をさしのべたのはソウル市でした。韓国では外食産業が盛んで、なかでもソウル市は全国の2割近くの飲食店が集中する激戦区です。

しかし、感染拡大で資金力や経験がまだない若い経営者たちの店の閉店や休業が相次いだことから、市は11億ウォン、日本円にしておよそ1億円を投じ、飲食店の弁当を買い取り、高齢者らに届ける事業をことし3月下旬から始めました。
キムさんの店では週3回およそ60個の弁当を作り、1個当たり700円を受け取ります。市はおよそ220の店に弁当を発注して支援しています。

「オープンしてからずっと苦しい状況だが、今は売り上げの半分がこの事業によるもので助けられている。また弁当を通じて助けを必要とする人たちを助けることもできて、やりがいを感じている」

作る・届ける・食べるで広がる支援

キム・ドンジュンさんが作った弁当を届けたのはキム・ヒョヌさん(29)です。実は、弁当で支援を受けているのは飲食店や高齢者たちだけではありません。キムさんは飲食店から弁当を受け取り車や自転車を使って20人ほどに届けています。弁当1つについて350円を受け取ります。

キムさんは著作権取り引きの会社を経営していますが、新型コロナウイルスの影響で仕事が減る中、生活の足しにしようと事業に参加したということです。
これまで生活に困る高齢者と身近に交流する機会があまりなかったというキムさん。しかし、弁当を届ける際にかいま見た生活から彼らが置かれた深刻な状況に気付かされました。

それでも、配達料をもらって弁当を届けるキムさんに高齢者の人たちは何度も頭を下げて感謝するといいます。

「多くの人たちは1人で外出することも困難な高齢者で、感謝されることが申し訳ないくらいです。直接会って弁当を手渡すことで互いに助け合いながら生活することがいかに大切なことなのか学びました」

弁当がつなぐ支援の輪。こうした取り組みは、日本でも始まっています。埼玉県吉川市では飲食店から買い取った弁当をひとり親の家庭に無料で提供しています。

新型コロナウイルスがもたらした飲食店の危機をきっかけに、より多くの人たちを助けようとする動きが今後さらに広がりそうです。