「置き配」窃盗相次ぐ 階段付近に被害集中 東京 北区

「置き配」窃盗相次ぐ 階段付近に被害集中 東京 北区
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新型コロナウイルスの影響で玄関前に配達の荷物を置く「置き配」の利用が増える中、それを狙った盗難事件が相次いでいます。「置き配」の荷物が盗まれた東京 北区の団地や周辺ではほかにも被害が16件確認され、その多くが階段近くの逃げやすい場所で相次いでいたことが警視庁への取材で分かりました。
先月、東京 北区王子の団地で、玄関前に置かれていた衣類など114点が入った段ボール箱を盗んだとして、今月14日、住所不定で無職の高橋哲也容疑者(46)が警視庁に逮捕されました。

調べに対し「この時期に行けば金めのものがあると思った」と供述していて、警視庁は玄関前に配達の荷物を置く「置き配」を狙ったとみて調べています。

その後の調べで、盗まれた段ボール箱が空の状態で敷地内の目立たない場所に捨てられていたことが分かりました。

警視庁は荷物を移し替えて持ち去ったとみて調べています。

逃げやすい場所 狙われたか

警視庁によりますと、この団地や周辺では「置き配」の荷物などが盗まれる被害がほかにも16件確認されているということです。

警視庁が被害の状況を詳しく調べたところ、その多くが階段近くの場所で相次いでいたことが分かりました。

配達されてから、早いものでは30分から1時間の間に盗まれていたということで、警視庁は逃げやすい階段近くが狙われたとみて関連についても捜査しています。

被害者女性「丸ごと盗まれ怖い」

東京 北区王子の団地に住む30代の女性は、ことし3月中旬ごろ、配達業者に玄関先に置いておくよう依頼した「置き配」の荷物が盗まれ、警視庁に被害届を出しました。

女性は「冷凍食品やパン、イチゴなど、入っているものをまるごと持って行かれた状態です。当時は外出していて、帰ってきて『あれ、ない』って気付きました。届いているはずなのにどこにもないとなり、発覚した感じですね。そういうことが起きることが怖いです」と話していました。

団地の住民からは、ことし3月以降、「置き配」の荷物がなくなったという被害の相談が警視庁に寄せられ、団地の自治会では、全世帯にチラシを配って注意を呼びかけています。

王子五丁目団地自治会の角和子副会長は「まだ相談に来ないだけでかなり数の被害があると思います。氷山の一角じゃないですが、1人が2回、3回と何度もとられていることもありますから。住民の皆さんに不安を与えているので困ったと感じています」と話しています。

そのうえで、「箱ごと持っていって、階段から逃げていくみたいな形が多いようです。荷物を持って階段に逃げると、姿が隠せるからなのか、ほとんどの方が階段の近くで被害に遭っているようです」と被害の詳しい状況について説明していました。

「置き配」の現状と対策

「置き配」は、玄関先など利用者があらかじめ指定した場所に宅配業者が荷物を置いて配達するサービスです。

利用者が直接荷物を受け取らなくて済むことから、時間指定をしたものの外出する用事ができた時や、仕事で荷物を受け取れない時などに活用されています。

また、インターネットの通販サイトで買い物をする機会が増える中、宅配業者側にとっても、再配達を減らすことができます。

さらに、国土交通省によりますと、新型コロナウイルスの感染が広がる中、「置き配」は感染リスクを抑えることができるとして、利用が高まっているということです。

一方で、課題となっているのが盗難のリスクです。

国土交通省がおととし、900人余りを対象にインターネット上で行ったアンケート調査では、「置き配」を利用したことがある、利用してみたいと回答したのは、合わせて37%だった一方で、「置き配」を利用したことがない、利用したくないと答えたのは合わせて63%でした。

利用したくないなどと回答した人のうち、40%がその理由について、盗難されないか心配だからと答えています。

国民生活センターによりますと、近畿地方で30代の男性がネット通販で頼んだ「置き配」の商品が盗まれるなど、被害の相談が相次いでいるということです。

感染リスクを抑えられる新たな生活様式の1つとして定着しつつある、「置き配」の防犯対策をどう進めていくのか、検討が求められています。

進む盗難対策

新型コロナウイルスの影響で利用が広がっている、「置き配」のサービス。今、盗難対策として防犯グッズも開発されています。

東京 渋谷区にあるベンチャー企業は、「置き配」の荷物を入れる専用のバッグを開発しました。

このバッグは、玄関のドアノブなどにぶら下げてロックで固定することができます。

ワイヤーは一般的なハサミでは切断することが難しい素材になっているということです。

宅配業者は運んできた荷物を玄関先でこのバッグに入れて、鍵をかけることで持ち出せないようにできます。

利用者は事前に渡されている鍵で開けて、荷物を取り出すことができます。

このバッグは13センチほどにコンパクトに折り畳んでドアノブなどにぶら下げておくことができますが、広げると縦70センチ、横66センチになり、大きな荷物も入れることができます。

ポリエステル製ではっ水加工もされているため、雨から荷物を守ることもできるということです。

ベンチャー企業の内山智晴社長は「新型コロナウイルスの影響で、非対面での接触が増えて、需要が高まっています。今まで“置き配”は、不在の時に利用するものでしたが、今後は在宅していても手が離せない時など、使い方が広がると思います。簡易的なものですが抑止力はあると思うので、盗難防止のセキュリティーとして使ってもらえたらと思います」と話していました。

専門家「定着に向け対策議論を」

物流問題に詳しい流通経済大学の矢野裕児教授は、「再配達をなくそうという動きと、今回の新型コロナウイルスで直接接触することを避けようという中で“置き配”が注目されている。選択肢としていいよねと、こういう状況でどんどん発展しているのが今の状況だ」としています。

そのうえで、新型コロナウイルスの影響が長期に及ぶことを見据えて、感染リスクを抑えられる新たな生活様式の1つとして「置き配」が定着しつつあるとして、今のうちに防犯対策を議論することが重要だと指摘します。

矢野教授は「もう一度、“置き配”として置く場所を見直してほしい。できれば鍵がかかるとか、そういう条件にしてほしい。マンションを作る場合にはきちんと宅配ボックスを設置する、あるいは今まで以上に個数を増やすなど、宅配の受け取る仕組みをみんなで作っていくことが重要だ」と指摘しています。