感染拡大で経営破たんのタクシー会社 社長が語った理由とは…

感染拡大で経営破たんのタクシー会社 社長が語った理由とは…
新型コロナウイルスによるあおりを受け、経営破たんに追い込まれた大阪のタクシー会社。感染拡大がどれほど経営に打撃を及ぼしたのか。長年経営に携わった道野隆前社長がNHKの単独インタビューに応じました。
大阪 平野区のタクシー会社「ふれ愛交通」。
およそ100台のタクシーを保有し、去年の年間の売り上げはおよそ5億5000万円に上りました。

地域密着をかかげ、特に力を入れてきたのが病院や介護施設の送迎です。車両全体をピンク色でコーティングした女性乗務員専用の「ピンクタクシー」を走らせ、妊娠中の利用客などからも評判でした。

しかし今月13日、裁判所に破産を申し立て、ドライバーや事務を取り扱う社員81人を解雇しました。
道野前社長は18日、管財人の弁護士のもとを訪れ、今後会社の資産を売却するのに必要な情報を説明していました。

国の支援策は「時間がかかる」

インタビューで道野前社長は、破産に至った経緯について「経営能力のなさにつきる」と謝罪し、次のように話しました。

「もともとタクシー事業者は経営基盤が強くない。人手不足によって、よくて70%の稼働率で、経営的に厳しかった。そこに新型コロナによる外出自粛が加わった。転がる坂道のように急テンポで気がついたら大変なことになっていた」

道野前社長は国の支援策である雇用調整助成金を使ってドライバーたちを休業させて、なんとかこの危機を乗り越えようと検討しました。
しかし、申請を断念しました。

「申請には時間がかかる。OKとなっても休業手当を立て替えて支払わなければならない。2か月3か月と立て替え払いできるのかというのが正直なところだ」

そして涙ながらに「いまだに他に方法がなかったのか、そんな思いでいっぱいだ。私も加害者だ。新型コロナウイルスの感染拡大のなか、たくさんの従業員を放り出してしまった。この責任は重い」と語りました。

取材の最後、私たちは「感染拡大がなかったら」と尋ねました。

(道野前社長)
「なんとかなったと思いますね。事業を続けられたと思います」

4月の売り上げは80%減

「ふれ愛交通」は、一般タクシー100台を保有する大阪では中堅規模のタクシー会社でした。もともと病院や介護施設の送迎を請け負う介護タクシー事業からスタートし、その後、2006年からは、一般タクシー事業にも参入しました。

妊娠中の女性の利用客などから、女性乗務員のニーズが高まると見て、車両全体をピンク色でコーティングした女性乗務員専用の「ピンクタクシー」を走らせるなど地域密着をかかげてきました。

2008年のリーマンショックも乗り切って事業を成長させ、去年の年間の売り上げは、およそ5億5000万円に上りました。

しかし、最近は深刻な人手不足からタクシーの稼働率が落ちて収益が低迷。さらに十分な手元資金を確保する余裕がないところにコロナショックが到来。外出自粛の影響を受けて、3月の売り上げは前年と比べておよそ40%減少、4月は80%以上減ってしまいました。

会社では国の雇用調整助成金を活用して従業員を休業させなんとか危機を乗り切ることも検討しましたが、書類手続きが煩雑であることや資金の受け取りまで1か月以上かかる状況だったことから申請を断念しました。

道野隆前社長は、大きな営業エリアである繁華街の北新地やミナミで利用客がすぐに増えるとは思えないこと、債権者からこれ以上借り入れを増やして迷惑をかけられないと判断し、倒産の道を選択しました。

会社代理人の弁護士などによりますと、負債総額は1億3000万円に上るということです。