品薄のマスク 日本で暮らす外国人の人たちは…

品薄のマスク 日本で暮らす外国人の人たちは…
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本で暮らす外国人の中にはマスクが手に入らず不安を抱えている人もいます。

パレスチナの大学院生 大事なマスク 今も使えない

1か月余りにわたってマスクが手に入らず感染への不安を抱えていた中東パレスチナからの留学生は、友人や東京のパレスチナ代表部からマスクを受け取りましたが、今も使えずにいます。

都内の大学に留学しているパレスチナ人大学院生、サマー・アブマグリさん(34)は、ことし1月中旬ごろ、マスクを手に入れようと自宅近くの千葉県市川市の薬局やスーパーなどに行きましたが、売り切れていて1枚も買うことができませんでした。

日本語がほとんど理解できないアブマグリさんはマスクの入手方法が分からず、感染を恐れて1か月余りほぼ外出しなかったということです。買い物は週2回に限って出かけましたが、マスクがないので、感染しないかとビクビクしながらスーパーを訪れたということです。

ことし3月ごろ、都内に住むパレスチナ人の友人から数枚のマスクを分けてもらい、4月中旬には駐日パレスチナ代表部からマスク2枚が届きましたが、マスクが手元にない恐ろしさを再び味わいたくないと、今も使えずにいます。

アブマグリさんは「日本人はふだんからマスクをつけているし、どこでも売っているので、マスクが買えなくなるなんて思ってもいませんでした。外国人は、日本人よりも情報が限られるので、マスクを入手するのが大変で、手元のマスクは緊急用に保管しています」と話していました。

バングラデシュの男性 無料で配る

日本で暮らすバングラデシュ人の男性は、みずからの店舗が客の減少で閉店に追い込まれながらも、1人でも多くの人の助けになればと、外国人、日本人を問わずマスクを無料で配っています。

バングラデシュ人のモハンマド・ラフサンザニさん(35)は、16年前に留学生として来日し、その後、東京 新宿区でイスラム教の戒律に沿って作られた食品、ハラルフードの食料品店と中古の携帯電話の販売店2店を経営していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で客が減少し、携帯電話の販売店の1店舗を閉店し、もう1店舗は休業せざるをえませんでした。

そうした中、日本国内でマスク不足が深刻化していたことを目の当たりにしたラフサンザニさんは携帯電話の取引先の紹介でマスクを3000枚仕入れ、ことし3月中旬から食料品店を訪れた人に無料で配り始めました。

多くの人にマスクが行き渡るよう1人、1日1枚に限って配ると、話を聞いた人たちが訪れ、3週間かけて配り終えました。

その後、都内ではマスクの流通が始まりましたが、割高なことから、今も手が届かない人がいると考え、ラフサンザニさんは今月さらに1万枚のマスクを仕入れ、再び無料で配り始めました。

受け取ったネパール人の男性は「うれしいです。こんな時期にもらえて本当にありがとうございます」と話していました。

店には近くに住む日本人も訪れ、ラフサンザニさんはマスクを渡していました。

ラフサンザニさんは「自分も、周りの人も、マスクがなくて困っていたのでみんなのためになんとかしてあげたいと思いました。自分にできる分だけでもマスクを渡したいと思います。みんなのために何かできて、うれしいです」と話していました。

震災の経験からマスク発送 ジョージア大使館

黒海沿岸に位置する旧ソビエトのジョージア大使館は、ある大使館職員の体験から日本に住むジョージア出身の人たち全員にマスクや消毒液などを送る支援を4月下旬に行いました。

東京にあるジョージア大使館では日本に住むジョージア出身の人たち全員、およそ40人に家族構成に応じて5枚から10枚のマスクと消毒液やゴム手袋をセットにした「予防対策キット」を発送しました。

大使館職員、ダビド・ゴギナシュビリさんは慶應義塾大学に留学中、東日本大震災を経験し、故郷から遠く離れた日本でモノ不足や情報不足の中、不安な思いをしたことから今回、大使館がみずから動いてマスクを送ることにしたということです。

予防対策キットには「お互いに助け合い、つらい時期を乗り越えよう」という内容の手紙を添えて、発送しました。

ゴギナシュビリさんは「もちろんマスクで身を守ることは大事ですが、つらい時期だからこそ落ち込まないよう励まし合うことも大事です。決して1人ではないということを伝えたいと思いました。日本ではジョージアのコミュニティーは小さいのでできるかぎりお互いの悩みとニーズを聞きながら、支え合いを続けたいです」と話していました。