レムデシビル 各国に十分に供給できるか課題 新型コロナ

レムデシビル 各国に十分に供給できるか課題 新型コロナ
アメリカで新型コロナウイルスの重症の患者に対してレムデシビルという薬の緊急使用が認められたことについて、WHO=世界保健機関の科学者は、今後、各国に十分に供給できるかが課題になってくるという見方を示しました。
レムデシビルは、エボラ出血熱の治療を目的に研究が進められてきた開発中の薬で、アメリカのFDA=食品医薬品局は、今月1日、新型コロナウイルスの重症患者に対する緊急使用を認めました。

この決定について、WHOのチーフサイエンティストのソミヤ・スワミナサン氏はNHKのインタビューで、「各国は薬の使用許可を緊急に出せるかどうか、手続きを始めることになるだろう。問題は、どれだけ在庫があるのか、そして、薬が必要になる可能性のある国々に供給できるかどうかだ」と述べ、今後、薬を十分に供給できるかが課題になってくるという見方を示しました。

そのうえでスワミナサン氏は「パンデミックの状況下で、治療薬やワクチンを1つの国、もしくはいくつかの国が独占するのはむだなことだ。なぜならば新型コロナウイルスの感染に世界で立ち向かわなければ、誰も安全だとは言えないからだ」と述べ、治療薬やワクチンの開発が進んだ場合、必要な国に供給するなど、国際的な調整が必要になるという考えを示しました。

一方、日本の製薬会社が開発したインフルエンザの薬「アビガン」については、「現段階で新型コロナウイルスの患者に効果があるのか、病気のどの段階で効果をもたらすのか、判断するだけの情報が得られていない。日本の国内外で行われている臨床試験の結果を楽しみにしている」と述べました。

“12月には100万人分を目標に生産”

「レムデシビル」を開発しているアメリカの大手製薬会社、「ギリアド・サイエンシズ」によりますと、今月1日の時点で、患者に10日間投与する想定で、14万人分にあたる量のレムデシビルがあり、順次、重症の患者の治療にあたっている医療機関などに寄付するとしています。
そして、必要であれば、ことし10月に50万人分、12月には100万人分を目標に生産するとしています。

“劇的効果は期待していないが、一助になるか”

「レムデシビル」の臨床試験を行っているInserm=フランス国立保健医学研究機構のドミニク・コスタリオーラチーフディレクターは、NHKのインタビューで「新型コロナウイルスの患者に一定の治療効果があると言えそうだが、そもそもレムデシビルは別の病気の治療のために作られた薬だ。劇的な効果は期待していないが、一助にはなるのだろう」と述べました。

Insermでは、
▼「レムデシビル」のほか、
▼エイズの発症を抑える「ロピナビル」と「リトナビル」を組み合わせた薬や
▼マラリアの治療に使われる「クロロキン」の一種、「ヒドロキシクロロキン」などの臨床試験も行っていて、
コスタリオーラ氏は「今の段階で、どの薬がより優れているのか言えるだけの理由はない。結論を出す前に多くの人で臨床試験を続けなければならない」と述べ、安全性や有効性を慎重に見極める必要があるという考えを示しました。