コロナ拡大する中 重病の子どもたちに笑いを 道化師たちの奮闘

コロナ拡大する中 重病の子どもたちに笑いを 道化師たちの奮闘
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、重い病気をかかえ外出を制限されている子どもたちを励まそうと、「ホスピタル・クラウン」と呼ばれる道化師たちがライブ配信で笑いを届けています。
16年前から「ホスピタル・クラウン」として活動している大棟耕介さん(50)は150人の仲間たちと毎月全国100か所近い病院を訪ね、難病や重い障害がある子どもたちに笑いを届けてきました。

しかし新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月下旬以降は訪問を取りやめざるをえない状況が続いています。

大棟さんは「子どもたちは外出したり、人と会ったりすることがふだん以上に制限されるだけでなく、家族の不安や病院の緊張感を敏感に受け取って、気付かないうちにストレスをためこんでいると思います。今だからこそ、パフォーマンスで明るい気持ちにしてあげたいのですが、訪問できないことがものすごく悔しいです」と話しました。

そこで大棟さんたちは子どもたちに笑顔になってもらいたいと、先月から毎日、インターネットの動画投稿サイトで道化師たちのパフォーマンスの動画配信を始めました。そして今回、新たにテレビ会議アプリを使った「無観客ライブ」にも挑戦しました。
闘病中の子どもたちとパソコン画面を通してつながり、一人一人の名前を呼びかけたり手拍子を求めたりしながら、40分間にわたってパフォーマンスを披露しました。

パソコンには、子どもたちの楽しそうなリアクションが映し出され、大棟さんは「不自由だからこそできること、楽しく思えることがあり、可能性を感じることができました。本当は子どもたちのもとを訪ねて、握手をしたり抱き締めたりしたいのですが、それができません。今は我慢をして次に会えたとき、一緒にたくさん遊びたいです」と話していました。

道化師と難病少女の交流

「ホスピタル・クラウン」の大棟耕介さんが長年交流を続けてきたのが、横浜市に住む中学2年生の木島緒萌さん(13)です。「スミス・マギニス症候群」という先天性の難病を抱えています。

緒萌さんは生まれてからおよそ1年間意識がないまま病院で治療を続けました。その緒萌さんの元にホスピタル・クラウンとしてやってきたのが大棟さんでした。

大棟さんは意識がない緒萌さんのベッドの脇で、バルーンアートの熊をつくったり、付き添っていた母親の里絵さんをパフォーマンスで笑わせたりしたといいます。

大棟さんは意識が戻ってからもたびたび緒萌さんの元を訪ね、里絵さんは「娘の病気が重くて毎日泣いていたばかりのときに、すごく救われたのを覚えています」と振り返りました。

緒萌さんはその後、特別支援学校に通うようになり、毎日学校を楽しみにしていましたが、新型コロナウイルスの影響で先月初めからは休校で通えなくなりました。もし感染すれば重症化するおそれがあることから、1日のほとんどを自宅の中で過ごしているということです。

緒萌さんはストレスを感じると自分の体をかきむしって傷つけてしまうときがあり、里絵さんは時々緒萌さんをドライブに連れ出し、車の中から外の景色を見せることで少しでもストレスを和らげようとしているということです。
それでも最近は、以前に比べ自分を傷つけてしまうことが増えているということで、里絵さんは「血を流すまで顔をかいたり、髪をむしったり、日に日に悪化しています。笑顔も少なくなりました」と話しました。

里絵さんは10年以上にわたってみずから描いた緒萌さんのイラストとともに、ブログで成長の記録をつづってきましたが、最近ではストレスを抱えた緒萌さんの様子を描くことが多くなったといいます。
緒萌さんに少しでも元気を出してほしいと、里絵さんは先週大棟さんが初めて挑戦した「無観客ライブ」のライブ配信を見せました。

緒萌さんはリラックスした様子でライブを楽しんでいたということで、母親の里絵さんは「娘は大棟さんのことを、いつも化粧をして鼻の赤い、変なおじさんだと思っているはずですが、いつもだっこをしてくれて大好きだと思います。画面越しで会うのは初めてで、びっくりした様子でしたが、とても楽しそうでした。ライブを配信してくれてすごくよかったです」と話していました。