マスクの原材料価格高騰 日本のメーカーは苦しい立場に コロナ

マスクの原材料価格高騰 日本のメーカーは苦しい立場に コロナ
世界的なマスク争奪戦の影響で不織布などの原材料価格が高騰していて、供給量を増やそうとしている日本のマスクメーカーは苦しい立場に置かれています。
名古屋市に本社がある大手マスクメーカーの白鳩は、今月20日から、市内の工場を2交代制にし、生産量をおよそ2倍に増やしています。

国内ではこれ以上の増産は難しいため、生産を委託している中国の工場から、輸入を増やそうとしています。しかし、現地からの輸入を思うように増やせない状況になっています。

中国では、欧米の政府やメーカーがマスクを大量に確保しようと高値で買い付けを進めた影響で、マスクそのものだけでなく、不織布やゴムのひもなど原材料の価格がおよそ10倍に値上がりしています。

採算をとるためには、国内での販売価格を大幅に引き上げる必要がありますが、納入先のスーパーなどは消費者からの反発を受けかねないとして小売価格の値上げには慎重な立場です。

このメーカーでは、マスク不足の解消に向けては中国からの輸入を増やすしかなく、そのためには国内の小売価格にコスト上昇分を適正に反映させる必要があると考えています。

白鳩の津田武常務は「短期間で抜本的な解決を図るならば、他国と同じように政府がお金を持って中国の工場をおさえ、マスクを引っ張ってくるくらいしかない。一方、今の相場のもとでの適正な価格について、消費者に理解してもらえる仕組みがあれば、恐れることなく中国から買うことができる」と述べ、マスクの値上げには消費者の理解が得られるかが重要だと指摘しました。

マスク不足 解消の見通し立たず

国内メーカーの増産や中国からの輸入再開にもかかわらず、マスク不足が解消する見通しは立っていません。

新型コロナウイルスの感染拡大で爆発的に需要が増えていますが、実際にどれだけ需要があるのか政府も把握できていません。

仮に国民全員が1日に1枚使うと想定すると、ひと月でおよそ30億枚以上が必要になる計算です。

これに対して、国内メーカーの増産などにより2月の時点で月に4億枚だった供給量を今月は7億枚を超える程度まで増やしましたが、需要には追いついていない状況です。

より供給量を増やすため鍵となるのが、以前、国内で流通するマスクの7割程度を占めていた中国製の輸入拡大です。しかし、現在の中国からの輸入量は月に1億2000万枚程度にとどまっています。

この背景には、不織布やゴムのひもなど原材料価格の高騰があります。政府の調べによりますと、5円から7円だった使い捨てマスク1枚当たりの仕入れ価格が、現在は高い場合で50円程度とおよそ10倍になっています。

しかし、国内の大手スーパーやドラッグストアなどは、マスク不足の中で小売価格を値上げすることに慎重な立場で、高値での買い付けには応じていません。

一方で、新たにマスクの輸入や販売に乗り出した業者などが50枚入り4000円程度と、以前と比べると割高な価格で販売しているケースもあります。

中国からの輸入を大幅に増やせば、小売価格が値上がりすることも予想され、「供給の増加」と「価格の安定」をいかに両立するか難しい状況となっています。

医療機関向けマスクは

政府は、医療機関で不可欠なマスクは月に1億枚程度だとして、一括して購入したものや各省庁で備蓄していたものを配布しています。

先月以降、これまでに感染症の指定医療機関を中心におよそ5700万枚を配布したほか、今月中には、N95と呼ばれる高性能のマスクなども77万枚配布することにしています。

しかし、日本医師会は先月上旬の時点で各都道府県の医師会を通して緊急に調査した結果、月に4億枚から5億枚が必要だとしています。

政府は今後もマスクの調達を進め、医療機関に対して随時、配布することにしていますが、一定の品質を満たしていることを確認する必要もあることなどから短期間に不足を解消できる量を買い付けることは難しいとしています。